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2010年10月24日(前編)・31日(後編)放送

つっかい棒で戸締まりする家

この物件が抱える問題

  • ■伝統的な景観が保存される情緒あふれる街並の中で、建築当時そのままに古さが際立った築200年の元民宿の古民家
  • ■建物の外観は、趣深さを通り越し、老朽化による損傷が激しい。石置きの屋根も板が朽ちてきているため、石が落ちて通行人に怪我をさせてしまうことを危惧している
  • ■玄関の立て付けが悪くて鍵がかからず、内側からつっかい棒をして戸締りをしている
  • ■民宿時代に2階の重みに耐えるように通した鉄骨の梁が剥き出しで、元々低い1階の天井を更に低くしている
  • ■冬は氷点下になる雪深い土地柄のため、屋内でも寒さは洗濯機の排水が凍るほど。ガラスサッシが古いタイプで隙間風が酷く、保温対策に窓ガラスにビニールシートを貼っているが効果は感じられない
  • ■浴室のサワラの風呂桶は腐っていて、夏には羽アリが発生する
  • ■2階の物干し台は、骨組みの鉄骨も錆びて腐り、いつ崩れ落ちてもおかしくないほど
  • 写真:サムネイル
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この問題を抱えた物件に、立ち上がった「匠」とその技

写真:「匠」の顔写真

住環境の時代考証人 倉橋英太郎

昔の状態のままで住んでいること、使われていることが素晴らしい。家族の家への愛情が伝わってくる。そんな家が持つ200年の歴史の中で、リフォームすることが私の使命であり、非常に誇りに思っている。そして、また200年経っても壊されないように仕上げる責任も感じている。

全ての問題を解決したそのビフォーアフターをご覧ください!!

赤いカメラをクリックするとビフォーアフターの変化をご覧いただけます

家族の幸せを願った「匠」からのアイデア

伝統美溢れる外観
多くの観光客が訪れる、伝統的な景観が保存された美しい町並みの中で、更に趣深さを醸しだすよう「匠」は外観を仕上げました。

白く塗られた「袖うだつ」という火事の延焼を防ぐ壁が、格式を感じさせ、目を惹きます。

その下には、かつて民宿として営んでいた頃に看板として置かれていた行灯が。「匠」は、この行灯をどうしても昔のままの形で残したく、自ら修復しました。そして、町のお寺のお坊さんに家主の名を書いてもらい、新たに表札としての役割を与えてもらったのでした。

老朽化が激しかったサワラの横壁は、全面に杉板が張り替えられ、重厚な趣に。つっかい棒で戸締まりしていた格子戸もきれいに修復されました。

観光客には見えない裏庭にも「匠」はこだわりを見せました。手入れもされず殺風景だった裏庭を、石を再利用した階段の設置や、草木や苔を手入れすることで、心休まる和みの場所となるよう、美しい庭として再生したのでした。
画像: 匠のアイデア
再利用で生まれ変わる
古い家屋から出てきた趣ある家財などを再利用し、味わい深さを出す「匠」。
特に、裏庭に放置されていた石の中で、重さ200kgもある大きな手水鉢に「匠」は目をつけていました。

巨大な回転ノコギリで、その手水鉢を切断した「匠」。更に加工して、2つに分かれたそれぞれの石に役割を与えました。

1つは、玄関に入ってすぐ目に飛び込む中庭の中央に置かれた花器。元の手水鉢に施されていた職人技の表面処理を活かしつつ、花を引き立てています。夜にはライトアップされ、まるで光の上に浮いているかのよう。

そして、もう1つは本来の役割である手水鉢として。裏庭に面したウッドデッキを新たな居場所に設置されました。

石だけではありません。
使われることもなくなった囲炉裏も、その枠を再利用され、テーブルとして中庭に面したリビングを飾ります。形は変わっても、今度もまた、家族の団らんを温めてくれることでしょう。

古い建具も、夫婦の寝室へ続く廊下に再利用するなど、「匠」は歴史あるその趣を屋内の色々な場所で感じさせてくれるのです。
画像: 匠のアイデア
家族それぞれの夢
ご主人には、以前泊った山小屋での薪ストーブに喜ぶ子ども達の笑顔が忘れられず、絶対に薪ストーブを入れたいという夢が。その夢を叶えるため、置き場所となるリビングの床と壁には、耐熱や蓄熱性に優れた大谷石を並べ、専用スペースを確保。待望の薪ストーブが置かれたのでした。

お母さんが望んだのは、壁一面の大きなシステムキッチン。お母さんの好きな色で仕上げられたキッチンは、念願の広いスペースやたっぷりの収納など、主婦にとっての理想の設備で整えられました。

お兄ちゃんにとって嬉しいのは、3人の子ども達それぞれに用意された個室。誰かがトイレに行く度に部屋を横切って勉強の邪魔をされることも、もうありません。

そして、姉妹が望んでいた、清潔なお風呂場。裏庭の四季の移ろいも楽しめる大きな窓からは明るい光が注ぎ、床には御影石、壁には檜がふんだんに使われて、まるで旅館の浴場のよう。床暖房も完備しているので、冬の寒さに凍えながら体を洗う必要もありません。
画像: 匠のアイデア
美しさだけでない「匠」の技
部屋ごとの間仕切りも多く、奥行きもある作りのため、以前は暗い部屋が多かった家に、明るさを取り込むため、「匠」は家の中央に、昔の梁を生かした屋根まで続く大きな吹き抜けを作りました。丁度吹抜けの真下に位置するリビングは、14個の窓から注ぐ優しい光に満たされています。

吹抜けを上から臨める2階の廊下には、温かみを感じさせる柔らかい曲線の木の手すりと、以前使われていた建具などの古材をバランスよく組み合わせて作られた、時代物の古道具や調度品を飾るギャラリースペースが設けられました。

大黒柱を囲む形で備え付けられた、家族5人で囲むことができる大きなダイニングテーブルは、分割して使える利便性の高い「匠」オリジナル。柱の分だけ欠けている天板ですが、下に収納してある板をはめ込むことで、1枚の天板として機能します。

そのダイニングテーブルの傍のキッチンからすぐに出入りできる勝手口の配置や、普段は扉を閉めて隠しておける洗濯機と乾燥機の専用の置き場など、主婦目線での工夫も。

他にも、長女が趣味にしているギターが、ぴったり収まるオリジナルの収納を用意するなど、「匠」の配慮が随所に見られるリフォームです。
画像: 匠のアイデア
今回お手伝いいただいた工務店の皆さん
写真:工務店の皆さん
長野県松本市 (株)滝澤工務店
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