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エッセイにならないエッセイIV こんな本を読みました(4) |
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やはり、みんなの関心事は「これから日本経済はどうなるか」。
今回は「2009年はどうなるか」に関する雑誌の紹介。
「エコノミスト」(12/23新春特大号)日本経済総予測
「日経ビジネス」(12/22臨時増刊)徹底予測2009
「厳しい」と言うわりに、足下がいいかげんなところが多い
前号以降も、おかげさまでいくつもの企業や業界団体、また地方自治体などに講演に出かけ、忙しくさせてもらいました。そこで感じたのは、企業活動、とりわけ生産活動に明らかに「急ブレーキ」がかかったということです。秋の段階では、まだ「これからぼちぼち厳しくなるのでしょうか」くらいの感じでしたが、アメリカのビッグ3の経営危機が伝えられ、その深刻さが明確になってからは、いっきに暗転しました。
どこへ行っても、「これからどうなるのでしょうね」と問いかけられ、「今日はひとつこんな雰囲気を吹き飛ばす元気のいいヤマケン節を聞かせてください」という注文がつけられるようになりました。とは言っても、可能性もないのにいいかげんな話はできませんので、「みなさんの予想以上に厳しい。いまは世界恐慌」という私なりの予測を話しています。
しかし、口では「厳しい。たいへんだ」と言うわりに、いいかげんな商工団体、業界団体、地方自治体が多いのが実態です。たとえば、先日、別件の取材で訪れたある町と商工会の場合、「地場産業が急激な円高や景気の下降の中でたいへんです」と言いながら、「それでは売り上げ高や輸出額、シェアがどう落ちているか、具体的なデーターをくれませんか」というと、「ありません。平成12年以後調査していません」という答えでした。「それならそもそもどう悪くなっているかなんて何にも数字的にはとらえていないということでしょう。それでなんで悪くなっていると言えるんですか」と問い詰めると、「いやその、そのとおりです」という答えでした。
これではこんな厳しい状況にまともに対応できるわけがありません。それでいて、予定されている新年の講演会のタイトルは「2009年、新たな年の政治はどうなる」で、マスメディアにもよく登場する著名な大学教授が講師でした。自分の足下の活動をしっかりやらずに、いくら政治動向の予測を聞いたところで、地場産業が活性化する糸口をつかめるわけでも、ヒントを得ることができるわけもありません。お笑いです。こんなことをしているから、地場産業は元気が出ないし、生き延びることができないということになるのです。
とはいえ、やはり「新しい年はどうなるのか」は誰もが知りたいことです。書店には、たくさんの予測本が並んでいますが、率直に言って単行本のどれもがピンぼけで、おすすめするようなものはありません。というのは、単行本の場合、書かれた時期が急ブレーキがかかるまえだったことが原因して、ぴんとこないのです。そこで、今回は経済雑誌を紹介することにします。
デフレ、円高、雇用不安。打ちのめされる日本
毎日新聞社が発行している週刊経済誌「エコノミスト」の新春特大号が、いろいろな経済雑誌の中でいちばん厳しい見方を特集しています。「最悪のシナリオは、マイナス2%成長、四半世紀ぶりに貿易赤字、1ドル80円台が常態化」と見出しを打っています。日本経済にしみついた円安・輸出依存経済から脱却しないかぎり、未来への展望は切り開けないとしています。
トヨタがもともとは1ドル105円くらいで想定していたのが、87〜90円になったことで、為替変動による営業利益の減益影響が6900億円にも及び、ホンダでも2890億円生じていることが、こうした状況を端的に示しています。これはトヨタやホンダにかぎらず、輸出が大きな比重を占めるところはどこも同じ状況になります。
輸出(外需)中心から内需(国内消費)中心に経済を変えないといけないということについては、すでに80年代の半ば頃から叫ばれていたことですが、いっこうに改められなかった結果、ここへきて日本経済、日本企業の弱点がいっきに表面化し、にっちもさっちもいかなくなってきたのです。
同誌の中で、三井住友銀行チーフストラテジストの宇野大介さんは「2009年は1ドル80円台が当たり前になり、さらにすすむと2011年には50円台もありうる」という見通しをされています。
もちろんこの円高の結果、日本はこれまで貿易摩擦を引き起こすほど、貿易黒字が当たり前だったのが、赤字に転落するというのです。すでに昨年の9月をピークに貿易黒字は急速に縮小し、2008年8月には赤字に転落しているのです。これは日本経済と企業にとって、根本的な転換点を迎えたということになります。貿易で食っていけたのが、そうではなくなってきたのです。そういう厳しい認識を持つべきだと警告しています。
平成バブルの破綻を誰よりも早く指摘され、当時の日本経済の問題点について的確かつ厳しい指摘をされた京都大学名誉教授伊東光晴先生は、「80年代から進行したネオリベラリズムの経済政策の帰結である」「広がりが大きく、不況は簡単には終わらない。われわれは長期不況を覚悟しなければならない」と記されています。不況から脱却するために「いかに生産の水準を増大させるか」だけに関心を払っているが、そうではなくほんとうに大事な問題である地球環境問題の解決の糸口をつかむときだも指摘されています。
日高義樹さんは、アメリカのオバマ新大統領がこの危機を乗り切る有効な多恵を打てるか、疑問符をつけておられ、うまくいかなかった場合、大きな期待が大きな失望に変わり、たいへんなことになるだろうと予測、この場合、「対日関係はその他大勢扱いされる」と警告されています。
このエコノミスト新春特大号には、このほか、ソニーの16000人リストラの背景、イオンをめぐっての三菱商事と双日との駆け引きについてのおもしろい記事も載っています。
世界大不況でパラダイム転換、新時代生き残りの5条件
次に紹介するのは「日経ビジネス」臨時増刊号です。タイトルは「No.1経済誌が大胆予測」ですから、すごいものです。昨年秋頃から、サブプライムローン問題はアメリカ経済を危機に陥れ、世界経済にも大きな影響を及ぼすと一部の専門家は指摘していました。わたしもそうした論文や情報を見て、厳しい見方をしてきていましたが、当時、「日経ビジネス」は楽観的なことを書いていました。
奈良県のある商工会で、わたしが「今回のアメリカのサブプライム問題は決して簡単な問題ではありません。世界恐慌になる可能性がある」と講演したところ、終了後、1人の年配の経営者が「日経ビジネスにはそんな厳しくはないと書いてあった。某有力證券会社も楽観的に見ていると言っている」と食ってかかってこられたことがあったように、「日経ビジネス」はいまでこそ「世界大不況でパラダイム大転換」などとタイトルした特集を出すようになっていますが、問題が表面化した最初の頃には脳天気な雰囲気があったのです。たぶんあの経営者はわたしのいうことより、「日経ビジネス」や某有力證券のいうことを信じて、いろいろ運用していたのを続けておられたことでしょうから、今頃えらいめにあっておられると思います。
それはともかく、こちらの臨時増刊号は「世界同時危機 世界大不況でパラダイム大転換」をメインのテーマにした編集です。「パラダイム大転換」というのですから、現在までの世界経済の根本の枠組みがひっくりかえったという前提で、まず生き残りの5条件を書き、それに続けて、国内景気、株式市場、資源価格、為替相場、金融再編、米国経済、欧州経済、中国・インド経済と8つの柱を立て、そのうえで国内の主要業種の先行きを概観し、業界地図の変化を見ようとしています。
編集長が気合いを入れて説く、日本企業が生き残るための5条件は「人間尊重」「世界尊重」「革新尊重」「環境尊重」「公益尊重」です。まあ、いままで言われてきたことの羅列で、読者の多くは「そらそやろけど、この危機に何を寝言を」という感じでしょう。
さて総論は、やはり楽観論です。輸出先多様化で悪影響は減殺、中国リスク残るも大失速は疑問として、エコノミストのような厳しい見方はしていません。株価については6000円台に落ちることはあっても、オバマ新政権で上振れする可能性もあるとしています。為替相場も、主要3通貨(ドル、円、ユーロ)が3すくみとなるとみて、夏前にはリーマンショック前の落ち着きをとりもどすというような楽観的な見方をしています。
ところが、主要業種の先行きとなると、悲観的な見方をしています。が、記述としては両論併記というかたちをとっています。要は、どちらにころんでも当たっていたということにしたいという編集部の思惑が見えているということですが、各業界の個別動向を分析してみると厳しいと見ていると読んだ方がいいと思います。
この臨時増刊号がありがたいのは戦後から今日までの年表と経済データがついていることと、業界地図の現状がわかることです。正月休みにちょっと目を通してみてください。全体の問題状況がつかめるように編集されています。
今回は、ほんとうは政治に関する本を紹介したかったのですが、どれもこれもおすすめできるようなものではありませんでした。幻冬舎新書の「平成政治20年史」、タイトルはよかったのですが、政治家あるいは元政治家が書くものは、結局は自慢話でした。
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