診察室
診察日:2008年12月16日
テーマ: 『年末全身総チェック!日本の名医が診断!家庭でできる人間ドック早期発見スペシャル』
「整形外科」
「物忘れ外来」

『整形外科』

Y・Sさん(女性)/51歳 主婦
主婦のY・Sさんの悩みの種は、肩こり。いつも、ずしんと重いものが乗っているような鈍痛に悩まされていましたが、ある日、食器棚に手を伸ばした時、肩から二の腕にかけて刺すような痛みが走りました。その夜、床についても肩に痛みを感じ、なかなか寝付けません。その後、日常のちょっとした動作をするだけで痛みを感じるようになり、ますます悪化していきます。
(1)肩から二の腕にかけて、刺すような痛み
(2)夜、肩が痛む
(3)少し肩を動かすだけで痛い
(4)大きく動かすと肩に激痛
(5)肩が全く動かない
肩関節周囲炎(五十肩)による凍結肩
<なぜ、首こりから肩関節周囲炎(五十肩)による凍結肩に?>
 「肩関節周囲炎」とは、肩関節やその周辺に炎症が起き、動きの制限や激しい痛みが起こる病。「五十肩」とも言いますが、年齢層は40代から60代までと幅広く、現在およそ600万人の患者がいると言われています。
 その主な原因は加齢。肩関節は他の関節に比べ可動域が広いため、普段から大きな負担がかかっています。長年の動作により、肩の関節を支える上腕二頭筋や、棘上筋(きょくじょうきん)などの組織が老化。すると、ちょっとした動作で、炎症が起きやすくなってしまい肩から腕にかけて痛みなどが起きるのです。
 しかし、五十肩のほとんどが半年から1年ほどで自然に治るため、病気だと考えられていないのが現実です。では、なぜ彼女の肩は動かなくなってしまったのでしょうか?それは「肩関節周囲炎による凍結肩」、つまり五十肩の炎症が進行し、関節が凍ったように硬くなり、動かせなくなってしまう状態になったからです。
 そもそも五十肩は、急性期、慢性期、回復期の3つの期間に分けられます。日常のちょっとした動きでも痛みを感じる急性期。その期間は、2週間程度から長い人で4ヵ月ほど続く場合があります。この段階では、安静にすることがベスト。急性期が過ぎると、やがて日常生活ではさほど痛みを感じない慢性期に移行。実はこの慢性期に、大事なポイントがあったのです。
 慢性期には、炎症がさらに周囲に波及。関節を滑りやすくしている組織が徐々に固まり、骨との癒着が始まります。通常は、痛みも落ち着いてくるため、肩を動かす機会が増え、自然に癒着がはがれ元の状態に戻っていくのです。しかし、Y・Sさんは「安静しておいた方がいい」と、とにかく使わないようにしていました。実はこれが大間違い。動かさずにいたため骨との癒着が一段と進行し、凍ったように堅くなり動かせなくなってしまったのです。
 その後、彼女は治療により日常生活に支障がないまでに回復しましたが、運動制限が残り、一定以上動かすことができなくなってしまいました。肩は加齢と共に、どんどん老化が進んでいくだけに、自分の肩の状態をきちんと把握することが大切なのです。

肩関節周囲炎(五十肩)による凍結肩のチェックテストはこちら⇒
『物忘れ外来』
I・Yさん(女性)/52歳(発症当時) 自営業
経営コンサルタント業を営む夫をサポートし、公私ともに最良のパートナーだったI・Yさん。ある日、家の鍵をどこに置いたかわからなくなりました。それは誰にでもあるくらいの物忘れだったため、夫が病を疑うことはありませんでした。しかし、彼女の物忘れは頻度を増し、ある時は財布を、またある時は携帯電話と、症状はどんどん進行していきます。
(1)物忘れが増える
(2)意欲がなくなる
(3)料理の品数が減る
(4)冷蔵庫の中に携帯電話を置き忘れる
アルツハイマー病(認知症)
<なぜ、物忘れからアルツハイマー病に?>
 「アルツハイマー病」とは、何らかの原因によって大脳皮質の神経細胞が少しずつ死滅し、脳が萎縮、記憶や意欲など生きるために必要な能力が徐々に失われていく病。一般には65歳以上の高齢者に多い病気ですが、40歳から50歳という働き盛りで発症してしまうこともあります。これは「若年性アルツハイマー病」と呼ばれ、通常より進行が早いのが特徴です。
 しかもアルツハイマー病は、患者本人が気付くのは極めて困難な病。だからこそ、周囲の人々が異変を察してあげることが大切なのですが、そこにアルツハイマー病最大の落とし穴があるのです。
 I・Yさんは料理の数に不満を言われると、もっともらしく多忙を理由にし、テレビの主電源を切ったことを問い詰められると、一見、理路整然とした言い訳を返しました。実はこれこそ、アルツハイマー病に特有の「取りつくろい」
 そもそも私たちの脳には、衰えた部分を他の部分が補うという働きがあります。アルツハイマー病で機能が低下した場合でも同じことが起き、本能的に自尊心を守ろうとする防衛能力が働くことから、もっともらしい口実を考えるのだと言われています。しかも、いつになく大人しい妻の様子に、いったんは違和感を覚えたとしても、声をかけるとすぐいつも通りに戻ってしまいます。このように、一瞬しか症状が現れないため、周囲は「誰にでもあること」と受け取り、病気ではないと判断してしまうのです。
 現在、投薬治療を続けながら、静かな日々を過ごしているI・Yさん夫妻。夫のZさんは「今だからわかることが、たくさんあるのだ」と語ってくれました。

アルツハイマー病(認知症)のチェックテストはこちら⇒
家庭でできる人間ドック2008