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みんなの家庭の医学 <番外編> 今週の名医!ここだけのハナシ

番組に登場した名医・専門家が、放送では伝えきれなかった病の治療法や解消法をコミコミクリニック限定で詳しくお話しします。

つまずきを起こしうる「首の骨のズレ」について 東北中央病院 病院長 田中靖久 先生

つまずきを起こしうる「首の骨のズレ」について

1.頚部脊髄症(けいぶせきずいしょう)について

まずはじめに、頚部とは首のことです。この病気は首の部分で、背骨の中を通っている脊髄(脳の神経と同じ中枢神経で、手の運動や感覚を司り、手足で感じた感覚を脳に伝えたり、脳から手足へ運動の指令を伝達する役割をはたしている)が、加齢によって変性(老化)する過程で圧迫され、特徴的な症状をきたすものを言います。脊髄が圧迫される原因として最も多いのが、骨が後ろへずれてしまう「後方すべり症」です。高齢なほど発生頻度が高まります。

2.骨のズレの原因は?

首には7つの骨があり、骨と骨との間に椎間板と言う軟骨が挟まっています。椎間板は、首に衝撃が加わるとそのエネルギーを吸収してショックを和らげたり、首を前後左右に傾ける時に自身を変形させてしなやかな運動を司ります。椎間板は、本来、水分を多量に含み弾力性に富んだ柔らかい組織ですが、20代後半から水分量が減り、硬くなっていきます。その結果、姿勢に応じて自由に変形出来なくなってしまうのです。そのため首を後ろにそらす時、椎間板は変形しないので、骨自体が後ろにずれる(すべる)ことによって首をそらすようになってしまうのです。レントゲン写真で調べた結果、この後ろへの2mm以上のズレが日本人の一般成人男女の44%以上にみられることが分かっています。

3.その症状は?

初発の症状として最も多いのが、両手のしびれや、箸や書字、ボタン付け動作などにおける手の使いづらさです。つまずき易さ、歩行時のもつれ、あるいは足のしびれといった下肢の症状で始まる方も2~3割います。一般にはこれらの手足の症状は徐々に悪くなっていきます。最悪の場合は、両手が使えず、歩けない、そして排尿が上手く出来ないといった状態に陥ることもあります。

4.その診断は?

常に両手にしびれがある、首を後ろにそらすと両手にしびれが生じる、あるいはつまずきの回数が増えたり程度が悪化している、といった症状があり、高齢であればあるほど頚部脊髄症である可能性が高いと言えます。従って、これらの症状がみられたときは、速やかに整形外科医あるいは脊椎の専門医を受診する必要があります。

5.その治療は?

頚部脊髄症であると分かれば、一般に手術が必要になります。脊髄の圧迫を解消させる方法がとられます。現在、手術は標準化され、安全かつ確実に効果が見込めるものへと進歩しています。症状が始まってから手術までの期間が早ければ早いほど、改善が良好であることが分かっているので、早期発見早期治療がとても大事なのです。

(2012年5月)

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