診察室
診察日:2004年5月4日
テーマ:『本当は怖い腰痛〜その先入観が命取り〜』
『本当は怖い肌荒れ〜昼夜逆転に潜む影〜』
『本当は怖い腰痛〜その先入観が命取り〜』
N・Tさん(男性)/ 38歳(当時) サラリーマン(営業) 
最近、腰に鈍い痛みを感じるようになった、無類の酒好き、N・Tさん。
人間ドックを受けたところ、肝臓が少し弱っていることがわかった。
医師の勧めで禁酒を始め、酒の代わりにコーヒーを飲むようになるが・・・
そんなN・Tさんに気になる症状が現れてきた。
(1)腰の鈍痛
(2)食後に腰が痛む
(3)胃の痛み
(4)腹部の激痛
急性膵炎
<なぜ、腰痛から急性膵炎に?>
「膵炎」とは、長年のアルコールの摂りすぎなどにより膵臓の組織が破壊、細胞内で膵液の元となる膵酵素が異常に活性化し、自らを溶かし始めてしまう病気。膵臓の位置は背骨と胃の間に挟まれています。N・Tさんの腰痛は、腰の筋肉ではなく、そのすぐそばにある膵臓が痛んでいたもの。胃の激しい痛みも、実はその裏にある膵臓が腫れ、崩壊寸前の状態になっていたためだった。しかし、禁酒をしていたはずなのに何故?実はN・Tさんは大きな過ちを犯していた。それはお酒代わりに飲んでいたあのコーヒー。コーヒーに含まれるカフェインもまたアルコールと同じように膵液の分泌を促す。N・Tさんは一日に大量のコーヒーを飲む事で弱っていた膵臓をさらに痛めていたのだ。ところで、N・Tさんの膵炎はなぜ人間ドッグで発見できなかったのか?実はそこにも落とし穴が…。お酒の飲み過ぎで悪くなるのは肝臓という先入観がありませんか?N・Tさんも肝臓の検査をしたものの、実際に痛んでいたのは膵臓。通常の人間ドッグでは特に依頼されない限り、膵臓まで細かく調べないことが多い。そのため、よほどひどくならない限り、異常が発見できない膵臓は、かつて「暗黒の臓器」とまで呼ばれていた。まさか膵臓の病だとは知らないN・Tさんは禁酒を続けてきたことで、肝臓が良くなってきているはずと、気が緩み、バーベキューで再び飲酒してしまいました。そのとき起こった、腹部の激痛は自らの膵臓を溶かす、その痛みだったのです。
『本当は怖い肌荒れ〜昼夜逆転に潜む影〜』
F・Yさん(女性)/18歳(当時) フリーター
深夜のコンビニで働くF・Yさんは、朝早く帰宅してはそのまま夜まで眠るという毎日。
ほとんど太陽の光に当たることはありませんでした。さらに、好き嫌いの激しい彼女の食事はもっぱらお菓子。そんなF・Yさんに様々な症状が現れてきた。
(1)肌荒れ
(2)肌の乾燥
(3)足がつる
(4)まぶたの痙攣
(5)疲れやすい
(6)歯茎から出血
(7)脊椎圧迫骨折
骨粗しょう症
<なぜ、肌荒れから骨粗しょう症に?>
F・Yさんの脊椎圧迫骨折(体を支える脊椎の一部がつぶれてしまう)の原因となった「骨粗しょう症」は骨の密度が極端に低くなり、もろくなる病だ。そもそも骨粗しょう症は高齢者の女性に多いのが特徴。骨を保護する役目を持つ女性ホルモンが、閉経後、急激に減少。骨からカルシウムが溶け出し、スカスカの状態になってしまう。しかし二十歳前のF・Yさんが何故?原因は昼夜逆転の生活。日頃ほとんど太陽の光を浴びない生活を送っていたF・Yさんには、人間にとって重要なビタミンDが欠乏していたのだ。ビタミンDは、皮膚に紫外線を浴びることで作られ、腸でカルシウムの吸収を助けるという重要な役目を担っている。F・Yさんの場合、このビタミンDが欠乏したためカルシウムが吸収されなくなり、極度のカルシウム不足に陥っていた。さらに彼女の偏食もカルシウム不足に拍車をかけた。肌荒れも皮膚の保湿因子がカルシウム不足によって一定の水分を保てなくなったことが原因。まぶたの痙攣、足がつる、疲れやすいなどの症状もすべてカルシウム不足で筋肉が正常に動かなくなったため。歯茎からの出血もカルシウムを含む様々な栄養不足から歯肉に炎症を起こしてしまったのが原因だった。この時点でF・Yさんの体はもはや危険な状態。実はカルシウム不足に陥った人間の体は、それを補うため、自分の骨から補給してしまう。こうしてF・Yさんの骨もまだ二十歳前だというのにスカスカに。そして最後には、わずかな衝撃にも耐えることができずに脊椎がつぶれてしまったのだ。