診察室
診察日:2004年11月23日
テーマ: 『本当は怖いイライラ〜痛みなき進行〜』
『本当は怖い目の充血〜いくつもの過ち〜』

『本当は怖いイライラ〜痛みなき進行〜』

N・Rさん(男性)/43歳(当時) サラリーマン(大手商社)
温厚で真面目、上司からの信頼も厚く、部下からも慕われていたN・Rさん。
社運をかけた一大プロジェクトのリーダーに抜擢されました。 ところが、1週間後、なぜかちょっとしたことでイライラするようになってきました。 さらに様々な症状が出始めます。
(1)イライラする
(2)突然怒り出す
(3)不眠
(4)すぐにお腹が空く
(5)幻覚を見る
インスリノーマ
<なぜ、イライラからインスリノーマに?>
インスリノーマとは、膵臓(すいぞう)にできる腫瘍(しゅよう)のこと。なぜ腫瘍ができるのかは分っていませんが、様々な症状を引き起こし、最悪の場合、死に至ることもある病です。そもそも私たちの体内では血液の中をブドウ糖という栄養分が血流に乗り、循環。ブドウ糖は膵臓で作られるインスリンというホルモンによって、身体の様々な部分でエネルギーとして利用されたり、肝臓に蓄えられたりしています。しかしインスリノーマが出来てしまったN・Rさんの膵臓では、なんとインスリンが止めどなく出続けるようになってしまいました。その結果、インスリンがブドウ糖の多くを肝臓に蓄えてしまい、全身にブドウ糖が行き渡らない、いわゆる低血糖の状態になっていたのです。N・Rさんを最初に襲ったあのイライラは、低血糖によって引き起こされた症状。イライラした時、ブドウ糖が不足したN・Rさんの脳は、体にアドレナリンという物質を放出するよう命じました。アドレナリンは、一度インスリンによって取り込まれたブドウ糖を肝臓から取り出し、再び脳に送る役割を果たします。こうしてN・Rさんの脳は何とかブドウ糖不足を補っていたのです。しかし「アドレナリン」は、体内で別の働きもしています。アドレナリンの別名は攻撃ホルモン。N・Rさんがちょっとしたことでイライラしたり、夜眠れなかったのは、アドレナリンによって脳が異常な興奮状態になっていたためだったのです。さらにN・Rさんに起こった異様な食欲こそインスリノーマの特徴的な症状。慢性的なブドウ糖不足に陥っていた脳は、常に食べ続けて血糖値を上げるよう命令を出し続けていたのです。慢性的な低血糖が続いたN・Rさんは、ついに幻覚まで見てしまい、病院で「欝(うつ)の傾向が見られる」と診断されますが、症状が進むと、そう診断されることが少なからずあるのです。そしてとどめを刺したのは、飲酒。アルコールには肝臓に蓄えられたブドウ糖の放出を抑制する働きがあります。そのため、アドレナリンがブドウ糖を取り出すことも出来なくなり、脳は致命的なブドウ糖不足に。そのまま眠り続けたN・Rさんは、ブドウ糖をまったく補うことのできないまま、ついには昏睡状態に。2度と目覚めることがなかったのです。現在、この病の年間患者数は、40〜50名。その多くは早期発見され、大事にはいたっていません。しかし心の病と見誤り、発見が遅れてしまうと、命に関わることもあるのです。
『本当は怖い目の充血〜いくつもの過ち〜』
T・Mさん(女性)/19歳(当時) キャバクラ嬢
東京に出て来たのを機に、メガネをやめ、使い捨てコンタクトレンズにしたT・Mさん。
それから1年、キャバクラ嬢となった彼女は酔って帰宅。コンタクトレンズをはずさずに寝てしまい、翌日、目が真っ赤に充血していました。 さらに、使用期限の切れたレンズをそのまま付けたり、レンズケースの手入れを怠ったことから、様々な症状が・・・
(1)目の充血
(2)目の激痛
(3)黒目が白く濁る
角膜潰瘍(かくまくかいよう)
<なぜ、目の充血から角膜潰瘍に?>
角膜とは、目の表面で眼球を保護する薄い透明な膜のこと。その角膜に潰瘍ができ、最悪の場合、失明に至るのが角膜潰瘍です。T・Mさんが角膜潰瘍になってしまった原因は、コンタクトレンズの間違った使い方にありました。酔って帰宅後、そのまま寝てしまい、翌日に起こった充血。通常、角膜は涙を通して酸素を取り込んでいますが、コンタクトレンズをすると角膜にフタをした状態になるので、酸素の供給量は減ります。T・Mさんの場合、そのまま寝てしまったことで、角膜はより酸素不足に陥り、角膜上皮の細胞が窒息死。その結果、目が真っ赤に充血したのです。しかし通常、角膜上皮は一週間ほどで自然に再生するもの。ところがT・Mさんは、立て続けに過ちを犯してしまいました。それはレンズのこすり洗いをしないばかりか、なんと使用期限の切れたレンズをそのまま使うようになったこと。レンズについた汚れが角膜を刺激し続け、上皮の細胞が傷つけられてしまったのです。さらにT・Mさんは、レンズケースの手入れを怠ってしまいました。そのため、ケースの中である菌が増殖を始めてしまいました。「緑膿菌」です。緑膿菌とは、健康な人には悪影響を及ぼさない弱い細菌で、水まわりなど湿った場所によく生息しています。T・Mさんの場合、バスルームにレンズケースを置いていたために、そこで菌が繁殖。コンタクトレンズに付着し、そのまま目に侵入してしまったのです。そしてあろうことか、緑膿菌が繁殖しているコンタクトレンズを丸2日間、付けっぱなしにしてしまったT・Mさん。その2日間で、緑膿菌は爆発的に増殖。傷ついた角膜の奥深くまで侵入し、ついには角膜に潰瘍を作ったのです。左目は大事には至らなかったものの、T・Mさんの右目はもう2度と見えるようにはなりません。コンタクトレンズの使い方をきちんと守っていれば、こんなことにはならなかったかも知れないのに…。