診察室
診察日2005年:9月13日
テーマ: 『本当は怖い膀胱炎〜氾濫〜』
『本当は怖い腰痛〜張りつめた糸〜』

『本当は怖い膀胱炎〜氾濫〜』

I・Mさん(女性)/27歳(当時) 出版関係(人気女性ファッション雑誌編集部勤務)
自分が出した大型企画が採用され、忙しい毎日を送っていたI・Mさん。数日前からやけにトイレが近く我慢が出来ない上、排尿の際、ピリピリとした痛みを感じたため、病院を訪ねたところ、膀胱炎と診断されました。膀胱炎は女性にとって2人に1人は経験する身近な病のため、深刻には受け止めていませんでしたが、その後も、さらなる異変が彼女を襲います。
(1)頻尿
(2)排尿痛
(3)高熱
(4)高熱がぶり返す
(5)夕方になると高熱が出る
急性腎盂腎炎(きゅうせい じんうじんえん)
<なぜ、膀胱炎から急性腎盂腎炎に?>
「腎盂(じんう)」とは、腎臓から尿管につながる部分。「急性腎盂腎炎」とは、尿管からこの腎盂に細菌が侵入し、炎症を起こす病です。I・Mさんがこの病に冒された原因こそ、あの膀胱炎でした。彼女は病院で貰った薬を飲んで、いったん症状がなくなると、「薬なんてあんまり飲まない方がいい」と、薬を捨ててしまいました。これがI・Mさんの犯した最大の過ち。実はこの時、彼女の膀胱の中には、まだ細菌が残っており、薬を止めたことで、再び増え始めてしまったのです。しかも彼女は、連日の睡眠不足や疲労によって免疫力が極度に低下していました。その結果、細菌が一気に増殖し、膀胱に充満。そして増えた細菌は、尿管を遡り、腎盂へと侵入。そこで炎症を起こし、腎盂腎炎を発症したのです。最初のサインは、あの高熱。しかし、翌日の朝には、熱は下がっていました。これこそが、この病の特徴。細菌の活動周期に合わせ、朝には熱が下がり、夕方にぶり返してくるのです。熱が下がったことで、風邪が治ったと思い込んでしまったI・Mさん。病からの最終警告を無視し続けた彼女の体内では、炎症を起こしていた腎臓から、細菌が血液中へと流れ込み、一気に全身へ。敗血症を引き起こしてしまいました。そして細菌が充満した彼女の体は、ついにその機能を停止させてしまったのです。年間、少なくとも数万人もの女性が、膀胱炎から腎盂腎炎を発症しています。だからこそ、膀胱炎になっても軽く考えず、医師の指示を守ってちゃんと薬を飲むことが大切なのです。
「角急性腎盂腎炎にならないためには?」
(1)まず膀胱炎を予防することが大切です。
(2)そのためには、「トイレを我慢しない」、「水分を十分にとる」、「身体を冷やさない」ことが重要。
もし体にちょっとでも違和感を覚えたら、迷わず病院で検診されることをおすすめします。
『本当は怖い腰痛〜張りつめた糸〜』
M・Nさん(女性)/ 38歳(当時) 会社員(ホームセンター勤務)
半年前に夫と離婚、育ち盛りの子どもたちを養っていくため、地元のホームセンターに再就職したM・Nさん。慣れない仕事で戸惑うことばかりでしたが、最近、腰痛を感じるようになりました。疲れが腰にきたに違いないと、軽く考えていた彼女ですが、それからも異変は続きました。
(1)腰痛
(2)足の痛み
(3)腰や足の痛みが悪化
(4)頻尿
(5)足の力が抜ける
脊髄終糸症候群(せきずいしゅうし しょうこうぐん)
<なぜ、腰痛から脊髄終糸症候群に?>
「脊髄終糸(せきずいしゅうし)」とは、脊髄の末端から伸びる、長さ15センチほどの部分。身体の姿勢に合わせて、ゴムのように伸び縮みしています。しかし中には、脊髄終糸が生まれつき硬い人がいて、姿勢を変えるたびに脊髄終糸が伸びない分、脊髄全体が引っ張られてしまいます。「脊髄終糸症候群」とは、無理に引っ張られ続けた脊髄に障害が起き、そこから伸びる神経の行き先で症状が出る病なのです。では脊髄終糸が硬い人とはどんな人なのか?そう、幼い頃から体が硬い人にその危険性が高いのです。M・Nさんの場合も、もともと脊髄終糸が硬かったと考えられます。そんな彼女が病を引き起こすきっかけとなったのは、仕事中に何度もお辞儀を続けたこと。脊髄が無理に引っ張られることが急激に増えてしまったのです。また、重い荷物を持って腰に負担をかけることも、この病を悪化させる原因と言われています。彼女を悩ませていた腰痛、足の痛み、そして頻尿。これらはすべて、脊髄が無理に引っ張られ続けたことで、腰や足、膀胱へと伸びる神経が刺激されたため、起きていたのです。しかし、レントゲンやMRIでは、脊髄終糸の硬さはわからないため、病が発見されにくく、医師も診断をつけにくいと言われています。これこそが、この病の最大の特徴。M・Nさんのように、この病に気づかない患者は、数多くいると考えられているのです。そして、M・Nさんがお辞儀をしたその瞬間、脊髄から足首へと伸びる神経に麻痺が起きて、足首が動かなくなってしまったのです。現在、彼女は筋力低下を回復するための手術に備えています。この脊髄終糸症候群は、力仕事やお辞儀など体を前に曲げるような動作がきっかけになることが多いと言われています。そして何よりも気をつけなければならないのは、子どもの頃から体が硬い人なのです。
「脊髄終糸症候群にならないためには?」
(1) 「力仕事」、「立ったままの姿勢」、「中腰」などの腰に負担をかける姿勢を長く続けないことが大切です。
(2) 子供の頃から身体が硬く、前屈をしても指先が床につかない、トイレが近かったなどの方は特に注意が
必要です。もしちょっとでも体に違和感を覚えたら、迷わず病院で検診されることをおすすめします。