診察室
診察日:2006年5月2日
テーマ: 『本当は怖いいびき〜招かざる夜の悪魔〜』
『本当は怖い便秘〜恥ずかしさが招いた悲劇〜』

『本当は怖いいびき〜招かざる夜の悪魔〜』

H・Kさん(女性)/33歳(発症当時) 主婦(パート勤務)
大恋愛の末、結婚した夫との間に一人娘をもうけ、幸せのまっただ中にいたH・Kさん。 かつてはスリムだった体も、今では幸せ太りにまっしぐら。そんな中、待望の2人目の子供を妊娠していることを知った彼女。「あと7カ月もすれば、新しい家族に会える」と、喜びに溢れた日々を過ごしていました。ところが、ある朝夫から、いびきがうるさくて眠れなかったという指摘を受けます。お腹の赤ちゃんのためにも頑張ろうとしていたH・Kさんですが、さらなる異変に襲われます。
(1)いびき
(2)居眠り
(3)流産
睡眠時無呼吸症候群
<いびきから、なぜ流産(睡眠時無呼吸症候群)に?>
「睡眠時無呼吸症候群」とは、眠っている間に何度も呼吸が止まることで、酸欠状態に陥る病。実は今、この病があることの原因の一つとなっていることが、指摘されているのです。それこそが…流産。欧米では早くから問題視され、日本でも最近になってようやく、その因果関係が認められるようになりました。実はH・Kさんの場合、寝ている時、1時間に50回以上息が止まっていました。この時、彼女の肺は十分に酸素を取り込むことができず、4000メートル級の山の頂上にいるのと同じ酸欠状態、いわゆる「低酸素血症」に陥っていたのです。その結果、思いもよらぬところに大きなダメージが!それは…胎盤。なんと酸素不足が原因で、胎盤の機能不全をもたらし、ついには流産に至ったと考えられるのです。ではなぜH・Kさんは、睡眠時無呼吸症候群になってしまったのでしょうか?最大の原因は、「肥満」でした。H・Kさんの首に付いた脂肪が、空気の通り道である気道を圧迫。呼吸が止まり睡眠時無呼吸症候群を発症させていました。あのいびきこそ、狭くなってしまった気道が発していた重要なサイン。妊娠中の女性にとって、H・Kさんのような太り過ぎは、大きな危険因子となるのです。そう、H・Kさん夫婦が、まずやらなければならなかったのは、病の存在を知り、医師の指導のもとダイエットなどの治療を行うことでした。太り過ぎに注意し、いびきや居眠りといった症状に十分気をつけていれば、流産のリスクを減らすことができるのです。現在、H・Kさんは、無理のないダイエットを続け、順調に回復。第二子の誕生に向け、正しい体調管理を行っています。
「睡眠時無呼吸症候群が原因の流産に注意するためには?」
(1)妊娠する前には、まず肥満に気をつけ、いびきをかいていないかどうか一度チェックしましょう。
(2)もし昼間に強い眠気を感じたら、病院で検診されることをおすすめします。
『本当は怖い便秘〜恥ずかしさが招いた悲劇〜』
K・Tさん(女性)/60歳(発症当時) 無職
3人の子供を育て上げ、現在は長男夫婦と同居、友人たちとの食べ歩きを楽しみにしていたK・Tさん。そんな彼女の唯一の悩みは、トイレが長いこと。若い頃から便秘症だった彼女。特に最近では一週間以上も続くしつこい便秘に悩まされていたのです。「これ位いつものことだから」と軽く考えていたK・Tさんですが、その後も奇妙な異変が続きました。
(1)便秘
(2)頻尿
(3)尿漏れ
(4)股間に違和感
(5)お腹が下に引っ張られるような感覚
(6)陰部からピンポン玉大の物が出る
(7)尿が出ない
(8)激しい腹痛
性器脱(せいきだつ)
<なぜ、便秘から性器脱に?>
「性器脱」とは、子宮や膀胱などの臓器が下がり、子宮が膣を通り外に出てしまう女性特有の病。欧米では、50歳以上の女性の半数が、この性器脱になっているといわれ、日本でも、潜在的に多くの患者がいるといわれています。女性の骨盤の中の臓器は、骨盤底筋(こつばんていきん)というハンモックのような組織に支えられています。しかし、何度も出産を経験したことのある女性が更年期を迎えると、骨盤底筋にゆるみが生じ、子宮や膀胱が膣の中に下がってくることがあるのです。K・Tさんも、まさにそんな1人でした。しかし、性器脱は、何度も出産した女性全員が発症するわけではありません。実は彼女には、あるきっかけがありました。それが、あの便秘症。長年、便秘症に悩まされていたK・Tさんは、いきむことが多く、その度に子宮を下に押し出す力が働き、性器脱が始まってしまったのです。そして子宮が膣の中に降りてくると、膀胱を圧迫。何度も尿意をもよおす頻尿になり、やがて尿漏れなどの症状を起こすようになりました。そしてついに、お風呂に入って体の緊張がほぐれた時、下がってきた子宮が、外に出てしまいました。しかし、子宮は自分で押し込めば、一時的に戻るため、K・Tさんのように病院に行かない人が多いのです。さらに下がり続けた子宮は、膀胱を変形させ、K・Tさんは、尿が全く出なくなる「尿閉」を起こしてしまったのです。この病の一番の問題点は、発症しても恥ずかしさのあまり、誰にも相談できず、症状が進行してしまうこと。勇気を出して専門医の診察を受ければ、悩みは解消できるのです。現在、K・Tさんは、外科手術によって性器脱を完治し、元通りの活発な生活を取り戻しています。
「性器脱を防ぐ!骨盤底筋をきたえる体操」
(1)イスに浅く腰掛け、足を肩幅に開く。
(2)おならを我慢するように肛門を締める。
(3)この時腹筋に力を入れないことが大切。
(4)おしっこを我慢するように膣を締める。
(5)肛門と膣を持ち上げる感じで締めたまま5つ数える。
(6)力を抜いてリラックスする。
(7)この動作を、一日30回を目標になるべく毎日続けることが重要です。
(8)もし尿漏れなどの症状が現れたら、勇気を出して病院で検診されることをおすすめします。