診察室
診察日:2007年5月1日
テーマ: 『ガマンしている身体の不調を一挙解決!専門外来スペシャル』
「頭痛外来〜F・Sさんの場合〜」
「睡眠外来〜Y・Kさんの場合〜」
「女性外来〜S・Tさんの場合〜」

『頭痛外来〜F・Sさんの場合〜』

F・Sさん(女性)/45歳(発症当時) 主婦
子供を出産して1年後、子供を抱き上げようとして蛍光灯の光が目に入ったとき、側頭部がズキズキと脈打つような激しい頭痛に襲われたF・Sさん。以来、決まって生理の前後には頭痛がし、しかも子供の泣き声など大きい音を聞くと痛みはひどくなりました。頭痛とともに吐き気も起こり、薬も満足に飲めなくなったF・Sさん。脳外科を受診し、MRIやCTなどの画像診断をしても、脳には何の異常も見当たりませんでしたが・・・。
(1)光を見ると激しい頭痛がする
(2)生理の前後に頭痛が起こる
(3)大きい音を聞くと痛みが悪化
(4)吐き気
(5)マッサージ後に頭痛が悪化
片頭痛
<頭痛外来での診察と治療とは?>
「頭痛外来」で最初に行うのは、患者さんの頭痛を一次性頭痛と二次性頭痛の2つのタイプに判別すること。「一次性頭痛」とは片頭痛などの一般的な頭痛。一方、「二次性頭痛」とは脳腫瘍など命に関わる脳の病気が原因の頭痛。まずはこの二次性頭痛かどうかを見極め、その場合はただちに早急な治療に入るのです。精密検査の結果、F・Sさんの脳には異常がなく、一次性頭痛であることが判明。続いて行うのは、頭痛のタイプ分け。実は一次性頭痛は、大きく3つのタイプに分けられます。頭の片側だけが痛む「片頭痛」。日本人に最も多く肩こり等が原因で起こる「緊張型頭痛」。激しい頭痛が数週間から1〜2ヵ月続く「群発頭痛」。頭痛といえども、それぞれ効く薬も治療法も違うのです。そこで頭痛外来で行われるのが「30分問診」。問診表をもとに、これまでに経験した頭痛、その頻度、痛みが起こる場所など、30分かけて頭痛に関するあらゆる症状や状態について丁寧に聞いていきます。そして、彼女の頭痛の特徴が浮かび上がってきたのです。それは…片側に起こる頭痛、ズキンズキンと脈打つような痛み、光や音への過敏な反応、そして吐き気や嘔吐の4つ。これらの特徴から分かった病名は、やはり片頭痛。「片頭痛」とは、血管が拡張することで分泌される神経伝達物質が、三叉神経を刺激するために起こると言われる頭痛のこと。そう、片頭痛の場合、マッサージは血管を刺激して拡張させるため、逆に痛みを悪化させてしまうのです。さらにF・Sさんの問診表に記された「頭痛は生理前後に発作的に起きる」という結果から、獨協医科大学 神経内科教授 平田幸一先生は彼女の片頭痛を最終的にこう診断しました。 病名「前兆のない片頭痛」。それも月経に関連したもの。実は頭痛外来では、片頭痛だけでも20種類近くに分類しています。その頭痛には前兆があるのかないのか?月経との関連は?など様々な特徴によって治療法も変えていくのです。
そして、いよいよ治療です。片頭痛には4種類の特効薬がありますが、先生は過去の経験から、まずは前兆がなく月経に関連して起きる頭痛に最も効果的な薬を選択し、F・Sさんに処方したのです。そして同時に、頭痛外来特有のあるモノを渡したのです。それが…「頭痛ダイアリー」。処方した薬が効いているかなど、その後の状態を患者さんがつける頭痛の日記。1日分が午前、午後、夜に分かれており、頭痛が起こったら、ラインに縦の線を引きます。痛みが軽度なら1本、中程度なら2本、重度なら3本で表します。そしてその時、薬を服用したら、飲んだ薬の最初の1文字を書き記します。また生理期間や日常生活への影響度、その時の状況を書く欄もあり、医師がそれぞれの患者さんにあったオーダーメイドの治療を行いやすくなっているのです。平田先生は処方した薬と頭痛ダイアリーで、1ヵ月間、F・Sさんの様子を見ることにしました。生理が始まって2日目、頭痛が起こったため、早速、薬を飲んだF・Sさん。すると「一時間程で効果」が現れ、その日はもう頭痛がなくなりました。さらにひどい頭痛が立て続けに起こっても、2日目以降は薬を飲めば2〜30分程度で痛みが治まっています。痛み止めも効かない状態だったF・Sさん。頭痛外来での専門的な診断によって、ようやく自分の片頭痛に効く薬が見つかったのです。そして頭痛を出にくくする予防的な薬も併用した結果、月に2週間以上も続いていたF・Sさんの片頭痛が、7ヵ月後には、なんとたった1日だけに。劇的に頭痛が減ったのです。
すぐにわかる頭痛タイプチェック法
『睡眠外来〜Y・Kさんの場合〜』
Y・Kさん(男性)/26歳(発症当時) 会社員
入社して1週間しか経っていないというのに、早くも寝坊してしまったY・Kさん。二度と遅刻しないと誓った彼は、それ以来、早く起きられるよう以前より早めに床に就くよう心がけましたが、どうしても眠れず、またまた寝坊。どんなに頑張っても週に1〜2度遅刻してしまいます。その後も、何とか眠れるように、枕を変えてみたり、ヒーリング音楽を流したり、色々なことを試してみたY・Kさん。しかし、どれも効果はなく、布団に入って数時間眠れない状態が続きました。
(1)不眠
(2)不眠が続く
(3)どうしても朝起きられない
概日リズム睡眠障害(がいじつりずむすいみんしょうがい)
<睡眠外来での診察と治療とは?>
一口に睡眠障害といっても、その種類は様々。なんと50種類にも分けられると言います。しかも症状がどれも似ているため、特定するのは容易な事ではありません。例えば、同じ眠れないという症状でも、夜寝つきが悪い人や、睡眠の途中で起きてしまう人、さらに本人は寝ているつもりでも熟睡できていない人など様々。それによって治療法も変わってくるのです。そこで最も大切になるのが問診。複雑に絡み合った症状を丁寧に解きほぐし、病の正体に迫るのです。まず行なうのは、精神的な病の可能性を排除すること。Y・Kさんのように眠れない悩みを持つ人は、その背景に「うつ」などの精神の病を抱えている場合が多いのです。しかし、事前の問診表やY・Kさんの様子から、杏林大学医学部 精神神経科 主任教授  睡眠障害センター 古賀良彦先生は精神的な病ではないと判断。その他の問診結果も踏まえて、50を超える睡眠障害の中から7つにまで絞り込んだのです。その7つこそ、代表的な睡眠障害でした。過去に眠れなかった経験がトラウマとなって、眠れない不安から不眠に陥る「精神生理性不眠」。現在抱えているストレスや悩みを気にする余り、眠れなくなる「ストレス性不眠」。睡眠中に呼吸が何度も止まり、いびきなどから熟睡できないため、昼間強い眠気に襲われる「睡眠時無呼吸症候群」。睡眠のリズムが乱れ、寝付きが悪くなる「概日リズム睡眠障害」。日中、突発的な眠気に襲われる「ナルコレプシー」。足がむずがゆく、眠れなくなる「むずむず足症候群」。そして睡眠中、怖い夢にうなされ大声を上げたり暴れたりする「レム睡眠行動障害」。この7つの睡眠障害から一つに絞り込むために、先生はさらなる問診を行ないます。問診の際、まず1つ目のキーワードは、「眠りにつくまでに時間がかかる」。そして2つ目は「一旦眠ると途中で目覚めることはない」ということ。この2つのキーワードによって、先生の頭の中に一つの病名が浮かび上がりました。そして最後に、「今のような睡眠の習慣がついたのはいつ頃からなのか」を尋ねました。Y・Kさんによると、4年前、大学に入った頃から自由な一人暮らしを開始。以来、夜中までレンタルビデオを見て過ごすようになり、眠るのはいつも朝の4時頃。毎日のように寝坊をし、起きるのはいつも昼過ぎだったというのです。全ての問診を終え、古賀先生はついにY・Kさんの睡眠障害を特定しました。病名「概日リズム睡眠障害」。概日リズム睡眠障害とは、長年にわたる夜更かしなど深夜型の生活を続けることで、脳内神経物質メラトニンの分泌に異常が起きる病。眠気を誘うメラトニンの出るタイミングがずれることで睡眠のリズムが変わってしまうのです。すると「夜眠れない」「朝起きられない」などの睡眠障害を引き起こしてしまいます。そして概日リズム睡眠障害の特徴は、睡眠のリズムに問題があるだけで、眠りの質には問題がないこと。つまり一度寝てしまうと、途中で目覚めることがほとんどないのです。まさにY・Kさんの睡眠のタイプと合致します。さらに睡眠中の脳波などを測定する睡眠ポリグラフ検査でも、Y・Kさんの睡眠の質には問題がなく、リズムがずれていることを確認。こうしてようやく、Y・Kさんを悩ませていた睡眠障害の正体が明らかになったのです。睡眠外来で眠れない原因が分かったY・Kさんは現在、投薬を続け、社会復帰を果たしています。
3分でわかる睡眠障害チェック
VASスケールによる「気に病み度問診」
『女性外来〜S・Tさんの場合〜』
S・Tさん(女性)/28歳(発症当時) 派遣社員
生活が不規則な営業の仕事から心機一転、事務職の派遣社員となったS・Tさん。ところが、そこにはちょっとヒステリックな、お局様的上司がいました。周囲の派遣社員たちが次々と辞めていく中、自分さえ我慢すれば、と勤め続けたS・Tさん。転職して3ヵ月、突然、左足の太ももの筋肉が痙攣し始めたのです。しかし異変はそれだけではありませんでした。
(1)太腿の痙攣
(2)筋肉の痛み
(3)微熱が続く
(4)喉の痛み
(5)頭皮の激痛
(6)全身の痛み
慢性疲労症候群(まんせいひろうしょうこうぐん)
<女性外来での診察と治療とは?>
女性外来の場合も問診が最も重要。最低でも30分、時には1時間以上をかけ、じっくりと患者の症状を聞き出します。しかも千葉県立東金病院 副院長 天野恵子先生は患者の話を遮らず、何を言っても決して否定しません。実はこれが最大のポイント!こうすることで患者自身も忘れていたことや、関係ないと思う症状まで、洗いざらい聞き出すことができるのです。そして聞き出した問診内容から、天野先生は一見バラバラだった症状を結びつけることで、病の正体を探っていきました。まず注目したのは、2つの症状。「毎晩続く微熱」と「喉の痛み」。このとき天野先生の脳裏に、ある病の名が浮かびました。そして、それを確認するために、S・Tさんの日常生活にまで踏み込んだ問診を始めたのです。実はこれこそ女性外来の真骨頂。生活の中で何らかのストレスや問題を抱え、日々の暮らしが辛いなど、「暮らしの質」が低下していると、それが病の発症に関わっている可能性があります。病の本当の原因となっていることを暮らしの中から探り出すのです。その結果、S・Tさんの場合、あの職場でのストレスが病のきっかけと判断されました。しかし、多少のストレスや悩みは誰しもあるもの。問題となるのは、その受け止め方です。生真面目なS・Tさんは、そのストレスを重く受け止め、さらに周りへの気遣いから症状を誰にも打ち明けませんでした。それが更なるストレスとなり、病をここまで悪化させたと考えられたのです。そして血液検査などで他の病の可能性を完全に排除した結果、ついに最終的な診断が下りました。病名「慢性疲労症候群」。ストレスや感染症などが原因で、神経・内分泌・免疫系に変調をきたした結果、体中に痛みが現れ、重い疲労感が半年以上続く病です。症状が多岐にわたり、検査をしてもほとんど異常が見つからないため、診断が極めて難しいのです。年間患者数は、およそ20万人。そのうちの7割近くが女性という女性に多い病です。長時間に渡って問診を受けるうち、いつしかS・Tさんは、それまで溜め込んでいた苦しみを洗いざらい打ち明けていました。そして・・・一筋の涙が。これも女性外来の重要な要素。女性の場合、心の負担が身体の異変につながることが多いため、丁寧に話を聞く問診自体が絶大なカウンセリング効果をもたらすのです。診察を終えたS・Tさんには、4種類の薬が処方されました。抗鬱剤、抗不安剤、鎮痛剤、そして漢方薬。このように、女性の身体に優しい漢方薬を積極的に使用するのも、女性外来の特徴なのです。それから5年。S・Tさんは、病も完治。現在一児の母となり、幸せ一杯の毎日です。
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