診察室
診察日:2007年6月19日
緊急警告 骨粗しょう症スペシャル!
テーマ:
「骨密度低下」
「太り気味」

『骨密度低下』

I・Nさん(女性)/50歳(発症当時) 主婦
口うるさい姑がある日、骨粗しょう症により骨折。以来、寝たきりになった姑の介護に追われていた主婦、I・Nさん。姑のこともあって骨粗しょう症の検診を受けたところ、骨密度が84%あり今のところ問題ないと言われ安心していましたが、それから間もなくして、彼女の骨と重要な関係がある、ある変化が訪れます。いつの間にか彼女は閉経を迎えていたのです。とはいえ、介護の疲れを感じることもなく元気に過ごしていたI・Nさんでしたが、姑の骨折から2年後、自宅で転倒した瞬間、足の付け根に激痛が走り、立ち上がれなくなってしまいます。
(1)転倒した瞬間、足の付け根に激痛が走る
大腿骨頚部骨折(だいたいこつけいぶこっせつ)
<なぜ、骨密度が急激に低下したのか?>
「大腿骨頚部骨折」とは、足と骨盤のつなぎ目が折れること。I・Nさんは、奇しくも姑とまったく同じ箇所が折れていました。さらに精密検査をしてみると、骨粗しょう症にこそなっていなかったものの、彼女の骨密度は72%。たった2年間で、なんと12%も落ちていたのです!一体なぜI・Nさんは、こんなに急激な骨密度の低下に見舞われてしまったのでしょうか?その謎を解くキーワードこそ・・・「骨代謝」。実は、私たちの骨は皮膚と同じように毎日少しずつ生まれ変わっています。これが骨代謝。「骨代謝」には大きく、二つの働きがあり、一つは、古い骨を壊すこと。そしてもう一つが、壊した部分に新しい骨を作ること。健康な人は両方のバランスが取れ、新しく作る骨の量と壊す量が一致しているため、骨密度が一定に保たれています。ところが年をとるにつれ、誰しも骨を作る能力が衰えはじめ、少しずつ骨密度は低下していきます。しかも女性の場合、老化以外の原因でも「骨代謝」のバランスが崩れ、急激に骨密度が落ちる時期があるのです。それこそが・・・「閉経」。閉経すると、エストロゲンと呼ばれる女性ホルモンの分泌が止まります。このエストロゲンには、骨を壊す量を一定に抑える働きがあるため、閉経することで骨を壊す量が一気に増えてしまい、骨の量が減少。骨密度が低下してしまうのです。とはいえ、ほとんどの女性の場合、閉経直後の骨密度が最も下がる時期でも年間3%程度。ところが、I・Nさんはなんと2年で12%も減ってしまいました。閉経直後の女性の中には、原因はわかっていないものの、急激に骨密度が下がる人がいるのです!だからこそ大切なのが、年に一度、骨密度を測ること。もし急激に骨密度が下がっていたら、それは骨代謝のバランスが崩れている証拠。毎年欠かさずチェックしていれば、骨代謝のバランスの崩れを早期発見でき、速やかな治療につなげることができるのです。
『太り気味』
H・Kさん(女性)/48歳(発症当時) 無職
最近ちょっと太り気味なこともあり、夫に誘われて人間ドックを受診することにした専業主婦のH・Kさん。オプションで骨密度検査も受けたところ、骨粗しょう症になっていることが判明。医師から、「この数値だと、いつ骨折してもおかしくない」と警告を受けてしまいました。そしてさらなる検査の結果、彼女を骨粗しょう症へと追い込んだ、思わぬ病の存在が発覚します。
※特になかった
慢性腎臓病(まんせいじんぞうびょう)
<なぜ、慢性腎臓病から骨粗しょう症に?>
「慢性腎臓病」とは、腎臓の機能が長年にわたって低下し続け、充分な働きが出来なくなってしまう病のこと。日本腎臓学会の調べによると、この病にかかっている人は、なんと日本人の6人に1人。実に1900万人の患者がいると推測されています。ところがこの病気、発病してもよほど悪化しない限り、ほとんど症状が出ることはありません。そのため、多くの人が病に気付かないまま放置していると考えられるのです。でもなぜ、腎臓の機能が低下すると骨粗しょう症になってしまうのでしょうか?腎臓の最大の役割は、血液をきれいにし、体の老廃物を尿として排出することです。しかしそれだけではなく、腎臓は骨を作る働き、つまり骨代謝と密接な関係があります。なぜなら腎臓は、骨を作る際に欠かせない、とても重要な物質を作り出しているからです。それが・・・「活性型ビタミンD3」。そもそも骨の材料となるカルシウムは腸で吸収され、血液によって骨へと運ばれます。ここで活躍するのが活性型ビタミンD3。このビタミンは、腸を刺激し、カルシウムの吸収を高める働きがあるのです。また活性型ビタミンD3は、骨の生成にも欠かせない存在。骨を作る細胞を刺激し、新しい骨が出来る働きを活発にしてくれます。私たちの骨は、このビタミンのお陰で、常に健康が保たれているのです。ところが腎臓の機能が低下すると、この「活性型ビタミンD3」の生産が激減。その結果、腸ではカルシウムを吸収しづらくなり、骨を作る働きも衰えてしまいます。つまり腎臓の働きが低下すると、骨代謝のバランスが崩れ、骨がどんどん減っていくのです。これこそ、H・Kさんが骨粗しょう症になった原因。では一体、何が腎臓の機能を低下させてしまうのでしょうか?最大の要因は、日頃の生活習慣。カロリーの摂り過ぎと運動不足です。こうした生活を続けるうち、腎臓の血管で動脈硬化が進行。充分な働きができなくなっていくのです。今や、2000万人といわれる日本のメタボリックシンドローム人口。それに当てはまる人すべてが、知らず知らずのうちに腎機能低下をさせている危険性が高く、将来、H・Kさんのように骨代謝のバランスを崩し、気付いた時には骨粗しょう症だったというケースが、ますます増えると考えられています。