診察室
診察日:2007年11月6日
テーマ: 『本当は怖い食べ物の好き嫌い〜漆黒の使者〜』

『本当は怖い食べ物の好き嫌い〜漆黒の使者〜』

M・Sさん(男性)/59歳 会社員
都内の中堅メーカーで営業部長を務めるM・Sさんは、若い頃から大の野菜嫌い。夫の体を気遣う妻から野菜を勧められても、殆ど食べませんでした。そんなある日、残業中に突然、視界がぼやける異変に襲われたM・Sさん。老眼が進んで眼鏡が合わなくなってきたのかと思っていましたが、異変はそれだけでは治まりませんでした。
(1)目のぼやけ
(2)視界の中心が歪む
(3)視界の中心が見えない
加齢黄斑変性(かれいおうはんへんせい)
<なぜ、野菜嫌いから加齢黄斑変性に?>
「加齢黄斑変性」とは、加齢に伴い網膜の中心にある「黄斑」と呼ばれる部分に異常が生じる病。黄斑は、自分が最も見たい視野の中心を見るために欠かせない場所です。そのため、この病が進むと、視野の中心がぼやけ、日常生活に大きく支障をきたすのです。現在、日本での患者数は、およそ40万人。近年の高齢化に伴い、今後も増え続けると予測されています。では、なぜ黄斑に異常が生じてしまうのでしょうか?主な原因と考えられているのが「活性酸素」。活性酸素とは、体内で有害な形に変化した酸素のこと。動脈硬化やガンの要因の一つとも言われています。そして活性酸素は、加齢とともに増え続け、体内に蓄積されていきます。すると血管や内臓だけでなく、なんと目にも大きなダメージを与え始めるのです。目が活性酸素のダメージを受けると、やがて網膜の細胞の一部がはがれ落ち、老廃物となって網膜の下にたまっていきます。この老廃物が、「ドルーゼン」と呼ばれるもの。詳しい原因はわかっていませんが、ドルーゼンができると、網膜の奥から新しい血管が生えやすくなります。しかし、この血管は、もろいため、あちこちから出血し始めることに。M・Sさんを襲った様々な異変は、この出血によって網膜の中心がダメージを受けたために起こったもの。そして最終的に、目の中の出血が黄斑を覆い、視野の中心が見えなくなってしまったのです。でも年を取ったからと言って、誰もがこの病にかかる訳ではありません。実は野菜が、私たちの網膜を活性酸素から守ってくれているのです。野菜に含まれるビタミンCやE、βカロテンなどの栄養素は「抗酸化ビタミン」と呼ばれ、活性酸素を無害にする力があるのです。ところがM・Sさんは、若い頃からの野菜嫌い。そのため、彼の体内では抗酸化ビタミンが慢性的に不足していました。その結果、網膜が活性酸素のダメージを受け続け、ついに発病に至ってしまったのです。この病気は、加齢や体質的なものに加え、喫煙などの生活習慣も関係していると考えられています。だからこそ野菜を毎日摂り、予防に努めることが何よりも大切なのです。
野菜嫌いでも美味しい「目にいい料理」