診察室
診察日:2007年12月18日
テーマ: 『年末全身総チェック!日本の名医が診断!家庭でできる人間ドック早期発見スペシャル』
「整形外科・恐怖の症例」
「耳鼻咽喉科・恐怖の症例」

『整形外科・恐怖の症例』

T・Mさん(女性)/50歳 主婦
最近太り気味なのを気にして健康診断を受けたところ、メタボリックシンドロームと言われたT・Mさん。高校時代はバレーボール部のエースだった彼女は、少しでもあの頃の体型を取り戻したいと運動をしてやせることを決意。近所の主婦が集まるウォーキングサークルに入ってハードなウォーキングを続けていましたが、ある日突然、腰に痛みを感じます。それでも、ここで休むと怠け癖がついてしまうとウォーキングを続けたT・Mさん。そんな彼女にさらなる異変が襲いかかりました。
(1)腰の痛み
(2)膝の痛み
(3)足の付け根の痛み
(4)正座ができない
(5)階段が上がれない
変形性股関節症(へんけいせいこかんせつしょう)
<なぜ、腰の痛みから変形性股関節症に?>
「変形性股関節症」とは、何らかの原因で、股関節の動きが悪くなり、痛みや歩行障害などが出る病。そもそも股関節は、大腿骨頭と、それを覆うように包んでいる臼蓋(きゅうがい)と呼ばれる骨からできています。この病は、2つの骨の間でクッションの役割を果たしている軟骨がすり減り、骨が削れて変形し、周りの組織に炎症が起きて、発症すると考えられています。40代後半から50代に多く、全国でおよそ100万人の患者がいると言われています。では、なぜT・Mさんはこの病になってしまったのでしょうか?その大きな原因こそが肥満。そして過度のウォーキング。そもそも軟骨は加齢とともに減っていくもの。しかし、彼女の場合は人一倍重い体重が圧力となり、軟骨のすり減りが加速。無理なウォーキングのせいで、さらに圧力がかかり、軟骨のすり減りが激化してしまいました。ウォーキングそのものは、身体に優しい運動ですが、痛みが出てまで続けるのは、逆効果なのです。そしてもう一つ、彼女の場合、臼蓋の丸みが不足していたことも病の原因となりました。これは、「臼蓋形成不全」と呼ばれ、日本人の300人に1人に見られる先天的な異常。女性に多く、そのため変形性股関節症の発症は、女性のほうが男性の5倍にものぼるのです。しかし、彼女の初期症状は、腰痛でした。なぜ股関節の痛みが腰に?これがこの病の落とし穴!股関節の周りには腰や膝につながるたくさんの神経が走っているため、股関節で起きた炎症が周りの神経に影響を与え、離れた腰や膝に痛みが出ることがよくあるのです。そのためただの腰痛と思い込み、悪化させてしまいがち。彼女の場合もそうでした。最終的に残された選択肢は、人工関節の手術しかなかったのです。軟骨は一度すり減ると、二度と復活することはありません。だからこそ早期に発見し、それ以上進行させないことが何より大切なのです。
『耳鼻咽喉科・恐怖の症例』
T・Sさん(女性)/45歳 主婦
突然のプロポーズを受け、バツイチ同士の結婚に踏み切ることにしたT・Sさん。しかし、近くで暮す姑が毎日のように訪ねてきて、多忙で家を空けることが多い夫より、口うるさい姑といる時間の方が長く感じる程に。そんな中、いつものように姑から注意を受けたその時、突然耳がつまった感じがしたT・Sさん。痛いわけでもないので、放っておいた彼女ですが、やがて新たな異変に襲われるようになります。
(1)耳のつまり
(2)低音の耳鳴り
(3)声が響いて聞こえる
(4)眼が回るめまい
(5)吐き気
メニエール病
<なぜ、耳のつまりからメニエール病に?>
「メニエール病」とは、耳の中の内耳という器官にリンパ液がたまりすぎ、強いめまいと共に、難聴や耳鳴りが起こる病気です。その原因は、はっきりと分かっていませんが、大きく関係していると言われるのが、ストレス。T・Sさんの場合も、再婚によるストレスが、発症の引き金になったのではないかと考えられます。30代から50代に多く発症し、中でも最近女性患者が全体の6割を占めるまでに増えています。恐ろしいのは一旦発症すると、めまいの発作は抑えられても、多くの場合、耳鳴りや難聴が後遺症として残ってしまうこと。では、そうならないために、発症を予防する手立てはないのでしょうか?実は最近、メニエール病の前段症状の一つが明らかになってきたのです。それが「急性低音障害型感音難聴(きゅうせいていおんしょうがいがたかんおんなんちょう)」という病の症状。急性低音障害型感音難聴とは、耳の聞こえを司る内耳の蝸牛(かぎゅう)に異変が起き、聴覚に障害が生じるもの。最大の特徴は、その名の通り、低音域が聞こえにくくなるということ。しかし、人の話し声などは中音域が中心。低音の聞こえにくさには、中々気付きにくいのです。とはいえ彼女の場合、自覚しやすいこの病の他の特徴的な症状にも襲われていました。それが、「耳のつまり」や「低音の耳鳴り」、「声が響いて聞こえる」というもの。この 時点で病院に行っていれば、メニエール病を未然に防ぐことが出来たかもしれません。ところがT・Sさんは、どの症状も数日間で治まってしまったため、せっかくのサインを見逃してしまいました。その結果、病は進行し、ついにメニエール病を発症。治療後も、耳鳴りの後遺症に苦しめられることになってしまったのです。メニエール病にならないためには、前段症状の一つである急性低音障害型感音難聴を早期に発見することがポイントなのです。
家庭でできる人間ドックで全身総チェック!