診察室
診察日:2009年5月12日
『本当は怖い口の臭さ〜誰もが陥る日常の罠〜』

『本当は怖い口の臭さ〜誰もが陥る日常の罠〜』

T・Aさん(男性)/29歳 声優
一流のアニメ声優を目指して頑張る傍ら、週に3日24時間営業のスーパーで働くT・Aさん。仕事柄、口臭には気をつかい、歯科医での定期検診、丁寧な歯磨き、マウスウオッシュと十分すぎるくらいのケアをしていました。そんなある日、食事中にドブのような異臭を感じます。てっきり同僚の口臭だと思い込んでいましたが、その後、発声練習をすると、喉が強く痛むなどの異変に襲われるようになります。
(1)異臭がする
(2)喉の強い痛み
(3)38度の熱
(4)強烈な異臭がする
舌扁桃炎(ぜつへんとうえん)
<なぜ、口臭から舌扁桃炎に?
 「舌扁桃炎」とは、喉の奥、舌の付け根にある「舌扁桃」と呼ばれる免疫器官に炎症が起きてしまう病。近年、中高年の女性を中心に患者が増え、年間30万人以上がこの病を患っていると考えられています。
 その最も大きな原因は風邪。風邪をしっかり治しきらないと起こってしまうのです。風邪をひくと、知らず知らずのうちに鼻水が喉の奥に垂れ、舌扁桃に付着します。それが長期間繰り返されると、鼻水に含まれる細菌で舌扁桃が炎症を引き起こしてしまうのです。炎症とは、白血球が細菌と戦うことで起こる免疫反応。その結果、白血球や細菌の死骸が粘膜に付着し、臭いを発してしまうのです。そう、扁桃や喉に炎症が起こるだけで、口臭は強くなるのです。
 しかし、臭いにも気付かなかったT・Aさんは、単なる風邪と軽く考え、放っておいてしまいました。でも、それも無理はありません。人の嗅覚は、臭いの刺激にすぐに慣れてしまうため、常に起きている口の臭いは、感じることができないのです。こうして炎症はますます悪化。ついには舌扁桃に、「膿栓(のうせん)」と呼ばれる強烈な口臭の原因を作りだしてしまいました。
 そもそも舌扁桃には、細菌をたくさん捕らえるため、表面に「陰窩(いんか)」と呼ばれる小さな窪みが無数に開いています。ところが、慢性的に炎症が続くと、この陰窩に白血球や細菌の死骸などが詰まってしまうのです。これが膿栓と呼ばれるもので、ドブのような強烈な臭いを発するのです。食事の時だけ強く臭いを感じたのは、たまった膿栓が食べ物と共に飲み込まれ、その臭いが鼻の奥に上がってきたことで感じたのです。
 口臭の9割は、歯周病や進行した虫歯、溜まった歯垢など、口の中に原因がありますが、T・Aさんのように喉の病や糖尿病など、他の病のサインとなっている場合もあります。だからこそ口臭には注意が必要なのです。
知らないと臭くなる口臭予防クイズ