診察室
診察日:2009年5月26日
『本当は怖い間違った頭痛の対処法〜E・Mさんの場合〜』

『本当は怖い間違った頭痛の対処法
〜E・Mさんの場合〜』

E・Mさん(女性)/40歳 主婦
E・Mさんは、中学生の頃からの「頭痛持ち」。肩がこると、後頭部にかけて締め付けられるような鈍い痛みに悩まされ、マッサージや温かいお風呂にゆったり浸かることで痛みを和らげていました。そんな彼女の頭痛が微妙に変わってきたのは、8年前。子育ても一段落し、パート勤めを始めたころ、後頭部が鈍く痛む頭痛や、右のこめかみにズキズキと脈打つ鋭い痛みに悩まされるようになりました。今回はマッサージやお風呂では治まらず、痛みはひどくなるばかり。痛む範囲も広がり、病は悪化の一途を辿っていきました。
(1)後頭部に重く鈍い痛み
(2)こめかみにズキズキと脈打つ痛み
(3)一度治まるも、2週間後、再びこめかみにズキズキとした痛み
(4)1ヵ月の半分以上、激しい頭痛
片頭痛および緊張型頭痛
<なぜ、E・Mさんは片頭痛および緊張型頭痛に?>
 そもそも「頭痛」とは、大きく3つのタイプに分けられます。まずは、日本人に最も多い「緊張型頭痛」。肩や首の“こり”によって血管が収縮。痛み物質が放出され三叉神経を刺激することで、鈍い痛みが長期間続くというものです。2つ目が、女性の5人に1人が悩まされているといわれる「片頭痛」。緊張型とは反対に、脳の血管が拡張し、周りの神経を刺激することで起きる頭痛です。通常、頭の片側がズキンズキンと脈打つように激しく痛みます。最後が、1000人に1人と比較的まれな「群発頭痛」で、目の裏側を通る血管が拡張することで痛みが出るといわれています。
 そして厄介なのが、これら3つのうち、2つをあわせ持つ「複合型頭痛」。中でも最近の研究で近年急増していると考えられているのが、片頭痛と緊張型頭痛をあわせ持つ「片頭痛および緊張型頭痛」なのです。E・Mさんの頭痛は、血管の収縮と拡張というまったく逆のメカニズムによって起きる痛みが混在していたのです。 彼女がしばしば感じていた肩こりからくる後頭部の痛みは、緊張型頭痛が出ていた時の症状。だからこそマッサージや入浴でこりを解消すれば、血流が良くなり痛みはなくなりました。
 一方、30歳を過ぎて新たに加わった、こめかみにズキズキと脈打つような痛みは片頭痛が出た時。そうとも知らず、E・Mさんは、マッサージやお風呂など今までのやり方で、これに対処。その結果、血流が良くなり血管がさらに拡張し、痛みが増してしまいました。自分に現れている頭痛のタイプを知らなかったために、間違った対処法を行い、逆に悪化させてしまったのです。
 でもなぜ彼女は、緊張型頭痛だけでなく片頭痛まで発症してしまったのでしょうか?原因として考えられるのは、長年の頭痛持ちであることに加え、大きなストレスがかかったこと。家事とパートを両立させるうち、次第にストレスを蓄積。その結果、緊張型頭痛に加え、片頭痛も発症してしまったと考えられます。さらに対処法も誤った結果、ひと月の半分以上も激しい頭痛が続くようになってしまったのです。
 頭痛外来で治療を始めて、およそ2年。今ではE・Mさんの頭痛は、その頻度も強さも劇的に改善されています。
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