診察室
診察日:2009年9月1日
眠れない原因を徹底解明! 快眠スペシャル
テーマ:
『本当は怖い中高年の不眠〜生活習慣に潜む罠〜』
『快眠のカギを握る重要なアイテム、理想的な枕とは?』

『本当は怖い中高年の不眠〜生活習慣に潜む罠〜』

K・Hさん(男性)/64歳 無職
会社勤めをしていた40代の頃から、20年以上も不眠に悩まされてきたK・Hさん。4年前にリタイア生活に入った彼は、悠々自適に10時間睡眠を満喫しようと、夜10時には布団に。それまでは仕事のストレスで熟睡できない夜が多かったため、「退職したら好きなだけ寝てやろう」と心に決めていたのにもかかわらず、なぜか寝つけず、眠りに入るまで2時間近くもかかる夜が何日も続きます。昼間のうたた寝を我慢するようにしますが、寝付きの悪さは相変わらず。おまけに夜中に2回も目が覚めてしまうようになりました。
(1)寝付きが悪い
(2)夜中に目が覚める
(3)熟睡感がない
精神生理性不眠症
<なぜ、K・Hさんは精神生理性不眠症に?>
 「精神生理性不眠症」とは、不安やストレスなどがきっかけとなって一度眠れない体験をした人が、「また眠れなくなるのでは」という恐怖によって、さらなる不眠状態に陥ってしまう病のこと。現在、不眠に悩む患者で一番多いのが、この病だと言われています。
 K・Hさんの場合も、40代の頃、「仕事のストレス」から、なかなか寝付けないという夜を経験。それが、「また眠れなくなることへの恐怖」を呼び寄せ、慢性的な不眠状態に陥ってしまったと考えられます。退職後も、寝つきの悪い状態が続いたのは、仕事のストレスは消えても、この「不眠への恐怖」が残っていたためだったのです。
 しかし、なぜその後、かえって症状が悪化してしまったのでしょうか?1日の活動量を計測する「行動計」をK・Hさんに付けたところ、眠りについてからも常に小さく体が動いていることがわかりました。つまり、一晩を通して熟睡できず、「睡眠の質」が極めて悪い状態が続いていたのです。
 でもなぜ、彼の「睡眠の質」は、こんなに悪化してしまったのでしょうか?私たちの睡眠時間は、年を取るにつれ、少しずつ短くなることがわかっています。一般に10代で8時間、30代で7時間、そして60代になると6時間程度で、充分な睡眠がとれているというのです。
 60代のK・Hさんで言えば、本来必要とされる睡眠時間は、およそ6時間。午前1時に就寝し、朝7時に起きれば、充分に睡眠がとれていたはずなのです。ところが、たっぷり寝ようと、3時間も早い夜10時に就寝。当然すぐには眠れず、寝付くまでの3時間、「眠れない」という恐怖にさらされ続けました。そう、この恐怖こそ、睡眠の質を悪化させた張本人。
 さらに朝、2時間余分に寝たのも逆効果。ぐずぐず床にいることで、ますます睡眠の質を低下させてしまったのです。つまり、身体の意思に逆らい無理に長い時間眠ろうとしたことこそ、病を悪化させた最大の要因。
 実は、このような「寝過ぎ」は、決して特殊なケースではありません。ある研究では、高齢者になるほど、長時間寝床にいるという結果が。今や中高年の大半が、精神生理性不眠症の予備軍といっても過言ではないのです。
<快眠のカギを握る重要なアイテム、理想的な枕とは?>

 神奈川県相模原市にある「16号整形外科」は、枕の力で病を和らげる、日本で唯一の専門外来、「枕外来」がある病院。枕が原因で不眠、頭痛、肩こりなどに悩む患者一人一人にオーダーメイドで最適な枕を作り、治療をしています。この枕外来の責任者である、整形外科医の山田朱織院長は、「枕は睡眠の姿勢を整えるために、一番影響力の大きいもの」だと言います。
 では、どんな姿勢が快眠につながるというのでしょうか?その謎を解くカギは、「寝返り」。「寝返り」とは、血液やリンパ液などが体の下側に滞らないよう循環させるためにするもの。「寝返り」が正しくうてないと、寝苦しかったり、途中で目が覚めてしまったりと、不眠の大きな原因になってしまうのです。
 では、その「正しい寝返り」とは?それは、お尻から頭まで一本の棒になったような、真っすぐな状態で転がること。これなら、どこにも余分な力が入らないため、目を覚ましてしまうこともありません。そして、身体に合った適切な枕を使っていないと、正しい寝返りは打てないのです。
 「正しい寝返りが打てる枕」とは、どんな物なのでしょうか?最大のポイントは、「枕の高さ」です。横を向いた時、おでことあごの中心を結んだ線(顔の中心線)と敷き布団が平行であると、最も身体に合った枕の高さであり、正しい寝返りがうてるというのです。枕の硬さも、あまり沈み込まないのが理想的。柔らかすぎると、適切な高さを維持出来ません。
 では実際に、枕は寝返りにどんな影響を及ぼすのでしょうか?小型のレーザー装置を頭とお腹に装着し、周囲のドームに当たったレーザーの光が、どのように動くかを観察しました。まず身体に合わない低い枕で寝返りを打ってもらうと、先に腰が動き、後から頭がついてくるため、動きがバラバラです。次に身体に合った高さの枕で試してもらうと、頭と腰がほぼ同時に移動。一本の棒になったような、正しい寝返りが打てていることがわかりました。このように、自然な寝返りが打てる枕こそ、快眠をもたらす重要な要素と言えるのです。

(実験協力:福井大学工学部 塩島謙次先生)

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