月〜金曜日 21時54分〜22時00分


京の伝統菓

 京都には平安時代からつちかわれた伝統の和菓子が多い。和菓子は古都・京都の風土に合い、茶道が盛んになるにつれ、家元を中心に開かれた盛大な茶会の席に出され、和菓子にいっそうの磨きがかかった。今回は京都の伝統的な和菓子の一部を訪ね、その由来や味を紹介する。


 
虎屋饅頭(とらやまんじゅう) 放送 1月31日(月)
鉄斎の書 饅頭は和菓子の代表のような存在で、全国どこの菓子店にもある。その饅頭の中でも古い歴史を持ち、名品と言われているのが虎屋饅頭。
 鎌倉時代の仁治2年(1241)、中国から帰国した聖一(しょういち)国師が、博多の茶店の店主・栗波吉右衛門に中国・宋で学んだ饅頭の製法を教えた。吉右衛門はさっそくこの饅頭を作って売り、屋号も虎屋に改めた。これがわが国で初めての饅頭、虎屋饅頭の元祖となった。聖一国師は博多に承天寺、京都に東福寺を建立した臨済宗の僧で、虎屋には聖一国師が書いたと言われている「御饅頭所」の看板が残っている。また、左甚五郎の作と伝えられている看板や富岡鉄斎筆の「虎屋饅頭」の書もあり、歴史の古さを物語っている。虎屋饅頭の箱の掛け紙「羅漢虎上(らかんこじょう)」の絵も富岡鉄斎の筆。
(写真は 鉄斎の書)

虎屋饅頭 虎屋饅頭はいわゆる酒饅頭。糯米(もちごめ)と麹(こうじ)を使い、酒造りと同じような工程で長時間かけて元種を作る。この元種に含まれている酒の酵母が、饅頭をふっくらと蒸し上げ、ほんのりとした酒の香りを漂わせる。虎屋饅頭は酒造りと同じように製造期間は10月から3月いっぱいで、この間の期間限定販売。
 蒸しあがった虎屋饅頭の真っ白な皮を割ると、小豆あんの甘い香りと酒の香りに思わず懐かしさが込みあげてくる。虎屋饅頭は賞味期間が短いため、関西では京都一条店、京都四条店、東京では赤阪店、銀座店でしか売っていない。また一条店近くの虎屋菓寮では、お茶を楽しみながら食することもできる。
(写真は 虎屋饅頭)


 
煉羊羹(ねりようかん) 放送 2月1日(火)
総本家駿河屋伏見本舗日本茶とピッタリ合い、茶請けの菓子として日本人になじみの深いのが羊羹。茶会の席にもよく出る。羊羹の中でも最も一般的なのが煉羊羹。この煉羊羹を日本で最初に作ったのが総本家駿河屋。
 総本家駿河屋の歴史は古く、室町時代の寛正2(1461)伏見で饅頭(まんじゅう)を作り始めた「鶴屋」が起源。元和5年(1619)、紀州徳川家の祖・徳川頼宣に従って和歌山へ行き、後に屋号を「駿河屋」と変えた。その後、のれん分けで「駿河屋」の屋号の店が各地に増えたが、京都・伏見が駿河屋発祥の地で総本家。総本家駿河屋の本店は和歌山にあり、伏見の店と共に伝統の煉羊羹を作り続けている。
(写真は 総本家駿河屋伏見本舗)

紅羊羹 羊羹には煉羊羹のほかに蒸羊羹、水羊羮がある。当初は蒸羊羹を作っていた総本家駿河屋は、五代目当主・岡本善右衛門が寒天に和三盆糖、白小豆あんを加えて煮た後、これを固めて羊羹にする製法を考案したのが現在の煉羊羹の始まり。
 厳選された丹波の糸寒天、阿波の和三盆、備中の白小豆をまぜて一定温度で煮つめる。この煮つめ具合で煉羊羹の味が決まるとベテラン職人は言う。
 総本家駿河屋では食紅を入れた紅羊羹がメインの羊羹。ほかに小倉羊羹、茶羊羹などを作っている。のれん分けなどで駿河屋の羊羹は各地にあるが、発祥の地・伏見の駿河屋の煉羊羹の流れを受け継ぐのは総本家駿河屋。商品には総本家の銘が入っている。
(写真は 紅羊羹)


 
清浄歓喜団(せいじょうかんきだん) 放送 2月2日(水)
山崎聖天堂 密教の供え物。特に歓喜天への供え物から生まれたので清浄歓喜団と言うユニークな名前がつけられた。元は奈良時代に遣唐使によって日本に伝えれた唐菓子のひとつ。通称「お団」と呼ばれ、歓喜天に供え、汚れを清めるお団子の意味がある。京都・大山崎町の「山崎聖天」の名で知られている観音寺の歓喜天にも清浄歓喜団が供えられている。
 亀屋清永は江戸初期に誕生した菓子店で約300年の歴史がある。八坂神社の前にあり、今も八坂神社、知恩院、清水寺、三十三間堂、妙法院などの社寺の御用達として出入りしている。
(写真は 山崎聖天堂)

清浄歓喜団 清浄歓喜団は、米粉と小麦粉を混ぜて蒸した皮の中に、白檀(びゃくだん)、丁子、桂皮など7種類の香料を加えた小豆のこしあんを入れ、ごま油で揚げた菓子。でき上がった形の口が巾着形に締まり、金袋になぞらえられている。結び目は8葉の蓮華を表している。
 表皮のパリッとした歯ざわりと、香りのよいあんがうまく溶け合った味が、何とも言えぬと言う人が多い。手で2つに割ってみると最中のような感じもする。供え物だけの時は月に数回作っていたが、最近は一般家庭でも菓子としての人気が高まり、2、3日おきに作らなければならなくなったと言う。
(写真は 清浄歓喜団)


 
みたらし団子 放送 2月3日(木)
御手洗神社と御手洗池 みたらし団子と言えば誰しも素朴な味に懐かしさをおぼえる。平安時代に下賀茂神社の糺(ただす)の森の御手洗(みたらし)社前の、御手洗池からわき出る水玉を形取って作られたと言う。昔の風味をそのまま、今に伝ええているのが京都名物のみたらし団子と言える。
 御手洗池は京都三大祭のひとつ、葵祭の主役「斎王代」が祭の前日、この池のほとりでみそぎをする池でもあり、清らかな水がいつもわき出ている。土用の丑の日に御手洗祭が行われる。この日に御手洗池に足をひたすと悪病が退散すると言われ、多くの人が足をひたしにやって来る。
(写真は 御手洗神社と御手洗池)

みたらし団子 下賀茂神社前でこの名物のみたらし団子を作っているのが亀屋粟義。ここのみたらし団子は、5つの団子が1つと4つに分けて串に刺さっている。これは人間の5体の頭と両手、両足を表していると言う。6月30日に行われる夏越(なごし)の祓(はらい)の行事の時に使う紙の人形(ひとがた)と同じように、この人形の団子を神前に供えて厄除けの祈とうを受け、家に持ち帰りいただいたのがみたらし団子の発祥。
 米の粉をこねて蒸し、串に刺して焼く。焼き上がった団子を甘味のたれにつけると言う単純な製法。だが、たれの味がそれぞれ店で微妙に違い、みたらし団子の味を決める。昔は醤油味だけで、今のような甘味のたれのみたらし団子はなかったそうだ。いつまでも変わらぬこの素朴な味のみたらし団子には根強い人気がある。
(写真は みたらし団子)


 
麦代餅(むぎてもち) 放送 2月4日(金)
中村軒 京都・桂離宮前の中村軒に麦代餅と言う風変わりな名前の名物餅がある。白い餅にあんをはさみ、きな粉を振りかけただけの餅だが、素朴な味わいがある。
 麦代餅は、かつてこのあたりが一面の田畑だったころ、麦刈りや田植えなどの農繁期に、田畑での農家の人たちの間食だったりおやつだった。中村軒はこの時期、餅を農作業の現場まで直接届けた。今の出前のようなもの。忙しい農作業の時なので、餅代はその場で受け取らず、農繁期が終わったころに餅2個につき、麦5合(0.9リットル)を受け取った。ここから麦代餅の名がついたと言う。
(写真は 中村軒)

麦代餅 中村軒は明治16年(1883)、初代中村由松が現在地で饅頭(まんじゅう)屋を始めたのが起こり。丹波、丹後方面への往来客たちの間で「かつら饅頭}として評判になり、土産品としても人気が出た。人気のポイントは、昔懐かしい味、あっさりした味だったようだ。
 麦代餅は農作業現場まで届けた出前のサービスと、餅代金が農家の人が抵抗なく支払える麦だったことがヒットしたのだろう。これも中村軒の優れた商才のひとつと言える。麦代餅を知らなかった人は、桂離宮を訪れたときにでも味わえば、京の思い出がまたひとつ増えるかもしれない。
(写真は 麦代餅)


◇あ    し◇
虎屋一条店 地下鉄今出川駅下車南へ徒歩7分。
総本家駿河屋 京阪伏見桃山駅下車徒歩3分。
近鉄桃山御陵前駅下車徒歩5分。
亀屋清永 京阪四条駅下車徒歩10分。
阪急河原町駅下車徒歩15分。
市バス祇園下車。
亀屋粟義 市バス下賀茂神社前下車。
中村軒 阪急桂駅下車徒歩15分。
市バス桂離宮前下車。
◇問い合わせ先◇
虎屋一条店 075−411−3111
総本家駿河屋 075−611−5141
亀屋清永 075−561−2181
山崎聖天堂 075−956−0016
亀屋粟義 075−791−1652
下鴨神社 075−781−0010
中村軒 075−381−2650

◆歴史街道とは

     日本の歴史の舞台を尋ねながら、日本文化の魅力を楽しみながら体験できる
ルートのことです。
     伊勢・飛鳥・奈良・京都・大阪・神戸の歴史都市を時流れに沿ってたどるメインルートと地域の特徴を活かした8本のテーマルートが設定されています。

 

@・・・ひょうごシンボルルート   
A・・・丹後・丹波伝説の旅ルート
B・・・越前戦国ルート              
C・・・近江戦国ルート              
D・・・お伊勢まいりルート         
E・・・修験者秘境ルート           
F・・・高野・熊野詣ルート         
G・・・なにわ歴史ルート           

    歴史街道計画では、これらのルートを舞台に
  「日本文化の発信基地づくり」
  「新しい余暇ゾーンづくり」
  「歴史文化を活かした地域づくり」
を目指し,
    官民188団体によりソフト・ハード両面の事業が推進されています。

◆歴史街道テレフォンガイド

     テレビ番組「歴史街道〜ロマンへの扉〜」と連合した各地の歴史文化情報を提供しています。
                  TEL:0180−996688    約3分 (通話料は有料)

 

◆歴史街道倶楽部のご紹介

    あなたも「関西の歴史や文化を楽しみながら探求する」歴史街道倶楽部に参加しませんか?
    歴史街道倶楽部では、関西各地の様々な情報のご提供や、ウォーキング、歴史講演会など楽しいイベントを企画しています。
   倶楽部入会の資料をご希望の方は、
 ハガキにあなたのご住所、お名前を明記の上、
          郵便番号 530−6691
          大阪市北区中之島センタービル内郵便局私書箱19号
                  「テレホンサービス係」
へお送り下さい。
   歴史街道倶楽部の概要を解説したパンフレットと申込み用紙をご送付いたします。
       FAXでも受け付けております。FAX番号:06−6448−8698   

歴史街道推進協議会