月〜金曜日 21時54分〜22時00分


芦 屋  

 芦屋は明治時代中頃から関西の実業家の別荘地として有名になってきた。JR芦 屋駅の開業、阪神、阪急電鉄の開通で、山手が開発されるにつれ高級住宅地として発 展、財界、文人、芸術家らの多くが芦屋に居を構えるようになった。谷崎潤一郎も芦 屋に住み「細雪」などを執筆した。


 
昭和を生きたモダニズム  放送 2月21日(月)
芦屋仏教会館 芦屋川のほとりの住宅街の中に、ちょっと異彩を放っているコンクリート3階建 ての建物がある。昭和2年(1927)に完成した芦屋仏教会館。仏の教えを広める とともに社会福祉に貢献しようと、近江商人で丸紅社長をつとめた伊藤長兵衛氏の発 願で建設された。東洋風を加味した近代的な建築で、会館正面にはステンドグラス が飾られるなど、建物の随所に大正モダニズムの名残が見られる。
(写真は 芦屋仏教会館)

聖徳太子像(鎌倉時代) 1階大講堂には鎌倉期の聖徳太子木像が本尊としてまつられている。この仏教会 館では第1、2、3日曜日の朝10時から親鸞の浄土真宗の教えを説く法話が行われ ている。青少年の健全育成を図るため、設立当初から続けられている法話会で、大 谷、竜谷両大学の教授らが親鸞の教えや仏の教えを説く。この法話を聞くのも西洋式 の椅子でと言うのも会館の先進性がうかがえる。
 このほか、会館会議室は地域の文化活動などの貸教室として利用されたり、大講堂 はコンサートなどにも使われている。
(写真は 聖徳太子像(鎌倉時代))


 
黒松に抱かれて  放送 2月22日(火)
芦屋川 芦屋川の河口付近の東側、左岸の緑の松が連なる芦屋公園は、市民らの散歩、憩い の場となっている。芦屋公園は大正6年(1917)に芦屋川遊園地として開かれ、 上流の開森橋や山手町付近まで松林が続いていた。天井川で有名な芦屋川は大雨の度 に水害を起こした。この被害を防ぐため松を切って堤防を強化したり、台風で倒れた りして上流の松はなくなってしまった。
(写真は 芦屋川)

芦屋公園 開設当時の芦屋川遊園地は、ぶらんこ、木馬、すべり台などがあった程度で、遊 園地の松の間を人力車が走りまわっていたと言う。
 昭和30年(1955)ごろ「具体美術」を提唱した前衛画家・吉原治良(1905〜1972)が、この公園を舞台に世界初の野外展覧会を開いて話題になった。吉 原は大阪市に生まれ、大正13年(1924)に、武庫郡精道村(現芦屋市精道町) に移り、関西学院に通学していたと言う。吉原は「他人のやらないことをやれ」との 方針で、破天荒な実験を繰り広げていた。野外展はそのひとつ。
(写真は 芦屋公園)


 
ヴィオロンの浜  放送 2月23日(水)
ミヒャエル・ウェクスラーと貴志康一 夭折の天才音楽家として近年、その真価が広く認識されつつある貴志康一(1909〜1937)は、多感な10代を芦屋市浜芦屋の洋館で過ごした。貴志は大阪市 で生まれたが、父が浜芦屋に別荘を建てたのを機に芦屋に住むようになり、甲南小学 校から甲南高校で学んだ。父からヴァイオリンを与えれていたが、絵画に興味を持ち 画家を目指していた。ある日、神戸でヴァイオリンの演奏を聴いてからヴァイオリン に熱中するようになった。
 浜芦屋の自宅2階で夜遅く貴志がヴァイオリンの練習をしていたところ、その音色 聴きつけたロシア人ヴァイオリニストのミヒャエル・ウェクスラーが、バルコニーに 突然現れ「ぜひ、あなたの指導をさせて欲しい」と懇望した。
(写真は ミヒャエル・ウ
クスラーと貴志康一)

ベルリンフィルを指揮する貴志康一 この劇的な出会いによって、貴志はヴァイオリニストとしての腕をあげるととも に、クラシック音楽の神髄を学んだ。旧制甲南高校を2年で中退して、ジュネーブ国立音 楽院へ留学し、2年後に首席で卒業、ヴァイオリニストとしてデビューした。昭和 9年(1934)、ベルリン・フィルハーモニーを指揮して、自作の交響組曲「日本 のスケッチ」、交響曲「仏陀」を初演奏した。帰国後も新交響楽団(現NHK交響楽 団)を指揮するなど、若手音楽家として大きな期待が寄せられつつあった昭和12年 (1937)、盲腸炎を悪化させて28歳で死去した。
 貴志の母校・甲南高校には「貴志記念室」が設けられ、貴志のレコードなどの資料 が保管されている。甲南高校は貴志がベルリン・フィルを指揮して演奏したときに録音 された、日本組曲から「道頓堀」と交響組曲「日本スケッチ」から「市場」のレコー ドを復刻した。
(写真は ベルリンフィルを指揮する貴志康一)


 
洋館のある風景  放送 2月24日(木)
芦屋市立図書館打出分室 芦屋市内には洋風建築や洋風建築に和風の門構えと言った和洋折衷の建物が多 い。現在の芦屋市立図書館打出分室は、大正時代に建てられた、どっしりとした堅牢重 厚な石造りの2階建て建築。元は大阪の銀行の建物を買い取った民間人が現在地へ移 築し、美術品の保管庫として使っていた。これを芦屋市が昭和27年(1952)に 買い取り、改修して市立図書館にした。
 昭和4年(1929)建築の旧芦屋郵便局電話事務室は、外面の連続アーチの内側 には、事務室との間を半屋外の廊下にしたスペースがあり、ロマネスク的な雰囲気を 出している。
(写真は 芦屋市立図書館打出分室)

旧芦屋郵便局電話事務室 大正12年(1923)完成の、灘の酒造家・山邑太左衞門邸だった淀川製鋼所 迎賓館は鉄筋コンクリート造り。東京の旧帝国ホテルと設計したフランク・ロイド・ ライトの設計で、国の重要文化財に指定されている。このほか芦屋警察署は昭和2年 (1927)の建築で、御影石の玄関アーチの上のミミズクは、夜間警備の象徴なの か。
 旧芦屋郵便局電話事務室は昨年6月までNTT芦屋営業所だったが、組織改革よる 統廃合で営業所が廃止され、現在は空き家。いずれNTTグループの会社が使用する予 定。また、先の阪神淡路大震災では、民間の多くの洋風建築が失われるなどしてお り、芦屋市は現在残っている洋風建築をどう残していくか検討を始めている。
(写真は 旧芦屋郵便局電話事務室)


 
ライトの遺産  放送 2月25日(金)
旧山邑邸・淀鋼迎賓館 阪急芦屋川駅の北西、芦屋川左岸の小高い丘に建つ、灘の酒造家・山邑太左衞門 旧邸は東京の旧帝国ホテルを設計したアメリカの建築家・フランク・ロイド・ライト の設計で、大正12年(1923)に完成した。昭和22年(1947)、淀川製鋼 所が購入し同社の迎賓館として使われていた。昭和49年(1974)に国の重要文 化財に指定され、現在、有料で一般公開されている。
 ライトはアメリカでは「草原住宅」と言うスタイルの建物を設計していたが、旧山 邑邸は避暑を目的とした鉄筋コンクリート造りの住宅で、ライトの建築物の中では異 色の傑作と言われている。
(写真は 旧山邑邸・淀鋼迎賓館)

淀鋼迎賓館内部 尾根状の地形に逆らわずに1階玄関から4階の食堂まで段丘を登るような間取り になっている。大谷石を使っていろいろな模様を彫ったり、窓の銅の飾り板、ピラミ ッド形の天井、サッカーボールのような電球など、デザインの工夫がいたる所に凝ら されている。
 阪神淡路大震災でこの迎賓館も被害を受けた。3年余りをかけて修復工事が行わ れ、ライトの建築物は再びその美しい姿を現した。この修復工事中に3階の3部屋続 きの和室の壁の一部にコンクリートでなく、土壁が使われていることが初めてわかっ た。また、壁の色も畳の色に合った茶色が下から現れ、修復時にこのオリジナルな色 に復元された。4階への階段踊り場の壁には漆を塗った形跡も見つかったが、なぜ漆 を塗ったのかはわからない。震災がもたらし新しいた発見だった。
(写真は 淀鋼迎賓館内部)


◇あ    し◇
芦屋仏教会館
JR芦屋駅、阪急芦屋川駅、
阪神芦屋駅下車それぞれ 徒歩10分。
芦屋公園 阪神芦屋駅下車すぐ。
甲南高校 阪急芦屋川駅下車徒歩15分。
芦屋市立図書館
               打出分室
阪神打出駅下車すぐ北。
旧芦屋郵便局
  電話事務所(現NTT)
阪神芦屋駅下車5分。
淀川製鋼所迎賓館 阪急芦屋川駅下車8分。
◇問い合わせ先◇
芦屋市役所 0797−31−2121
芦屋仏教会館 0797−22−1562
芦屋公園
(芦屋市役所公園緑地課)
0797−31−2121
甲南高校 0797−31−0551
芦屋市立図書館
                打出分室
0797−38−7220
淀川製鋼所迎賓館 0797−38−1720

◆歴史街道とは

     日本の歴史の舞台を尋ねながら、日本文化の魅力を楽しみながら体験できる
ルートのことです。
     伊勢・飛鳥・奈良・京都・大阪・神戸の歴史都市を時流れに沿ってたどるメインルートと地域の特徴を活かした8本のテーマルートが設定されています。

 

@・・・ひょうごシンボルルート   
A・・・丹後・丹波伝説の旅ルート
B・・・越前戦国ルート              
C・・・近江戦国ルート              
D・・・お伊勢まいりルート         
E・・・修験者秘境ルート           
F・・・高野・熊野詣ルート         
G・・・なにわ歴史ルート           

    歴史街道計画では、これらのルートを舞台に
  「日本文化の発信基地づくり」
  「新しい余暇ゾーンづくり」
  「歴史文化を活かした地域づくり」
を目指し,
    官民188団体によりソフト・ハード両面の事業が推進されています。

◆歴史街道テレフォンガイド

     テレビ番組「歴史街道〜ロマンへの扉〜」と連合した各地の歴史文化情報を提供しています。
                  TEL:0180−996688    約3分 (通話料は有料)

 

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歴史街道推進協議会