月〜金曜日 21時54分〜22時00分


京の庭 

 京都には金閣寺、銀閣寺などの社寺の庭、修学院離宮、桂離宮など離宮庭園、豪 壮な別荘に付随した庭などの名庭園が多い。今回はその中から5ヶ所を選んで紹介す る。


 
高台寺  放送 4月3日(月)
臥龍廊 高台寺は「ねねの寺」とも呼ばれ、豊臣秀吉の菩提を弔うため秀吉の正室・北政 所「ねね」が、慶長10年(1605)に開創した。寺の名前は出家した北政所が、 高台院湖月尼と称していたことに由来する。
 萩の名所としても知られる高台寺には、開山堂(国の重要文化財)の東西の池を中 心に東山を借景にした池泉回遊式庭園があり、小堀遠州の作と伝えられている。
 開山堂の西の池を偃月池(えんげつち)と呼び、池の北に亀島、南に鶴島を配し、 開山堂と方丈を結ぶ渡り廊下の楼船廊(ろうせんろう)が池に架かり、亀島と鶴島を 分断している。楼船廊の中央、最も高いところにある桧皮ぶき唐破風屋根、4本柱の 観月台(国の重要文化財)は、伏見城で秀吉がこよなく愛し月を眺めていた観月台を 移築した。
(写真は 臥龍廊)

霊屋(重文)内部 開山堂東側の池を臥龍池(がりゅうち)と呼ぶ。この池にも開山堂とこちらも国の重要文化財の霊屋(たまや)を結ぶ、臥龍廊が池の上に架かっている。臥龍廊の瓦 屋根が上下にうねり、地をはう龍の背に似ていることからこの名がつけられた。渡り 廊下を歩むと龍の腹の中を進んでいるような気になる。
 高台寺の庭は建物と庭がよくマッチしており、建物あっての庭、庭あっての建物の 趣が強く、庭と諸堂のトータルな美しさが観賞できる。
 第1世住職をまつる開山堂には、天女図などが極彩色で描かれており、絢爛(けん らん)豪華な安土桃山時代の特色がよく出ている。秀吉と北政所をまつっている霊屋 の須弥壇や厨子には、安土桃山時代の工芸美を代表する豪華な蒔絵(まきえ)が施さ れており、高台寺蒔絵として有名である。
(写真は 霊屋(重文)内部)


 
法然院  放送 4月4日(火)
白砂壇 鎌倉時代初め、専修念仏の元祖・法然上人が、鹿ヶ谷に草庵を結び弟子らと共に 念仏三昧の修行をしていた。このゆかりの地に延宝8年(1680)、知恩院第38 世万無和尚の発願によって知恩院の僧侶らが建立した念仏道場が法然院。
 山門をくぐり本堂へ向かう参道脇の庭に白砂壇(びゃくさだん)と呼ばれる台形の 白い砂盛がある。この砂盛は水を象徴し、参詣者が砂盛の間を通ることによって心身 を白砂壇の水で清め、浄域へ入ることを意味する。砂盛の上には水を表現した文様が 描かれている。水に漂う桜の花びらやイチョウ、カエデなど季節によって文様は変わ る。文様はこれを描く僧侶の創意工夫、デザイン感覚にまかされている。
(写真は 白砂壇)

阿弥陀如来坐像 本堂のそばにある方丈庭園は中央に阿弥陀三尊を象徴する三尊石を配置した浄土 庭園。この庭園には京の名水として知られる清水が建立以来、絶えることなく湧き出 し、庭園の池を潤している。この名水は法然院の山号「善気山」にちなみ「善気水」 と呼ばれている。
 本堂北側の坪庭は三銘椿の庭と呼ばれ、花笠椿、貴(あて)椿、五色散り椿の3本 のツバキが植えられている。3月下旬から4月上旬にかけてそれぞれのツバキが花を つけ、参詣者の目を楽しませる。本堂には本尊・阿弥陀如来座像や法然上人像などが 安置され、本尊前の須弥壇前には25菩薩を象徴するツバキ、ツツジ、アジサイな ど、25輪の季節の生花が散華してある。
(写真は 阿弥陀如来坐像)


 
白沙村荘の池泉回遊式の館内庭園 放送 4月5日(水)
倚翠亭より問魚亭を望む 哲学の道近く、銀閣寺の西にある白沙村荘(はくさそんそう)庭園は、近代日本 画壇の巨匠・橋本関雪記念館 。大文字山を借景に疎水の水を 引き入れた庭園は、関雪が大正5年(1916)、この地に建てた新居に引っ越して から亡くなるまで、30年間にわたって造り続けた名園。関雪は随筆の中で「私にと っては、庭を造ることも、画を描くことも一如不二(いちにょふじ)のものであっ た」と述べている。庭や建物の設計、庭石や樹木、石造美術品の配置などのすべてを 自らが手がけており、関雪が地上に描いた絵画とも言える。
(写真は 倚翠亭より問魚亭を望む)

藪の羅漢像 庭内には大画室存古楼、持仏堂、茶席の憩寂庵、倚翠亭(いすいてい)、問魚亭 などが静かなたたずまいを見せている。庭内のいたる所に置かれている 石仏、石塔、灯ろうなどは平安、鎌倉時代の名品ぞろい。竹林の中に何気なく置かれ た石仏は、関雪の石造美術品に対する愛情と鑑識眼の深さを物語っている。ユーモラ スな表情の石仏を観賞しながら、静かな庭内を歩くと心が落ち着くと言う人が多い。 8月16日の五山の送り火の夜は、庭の池に逆さに写る大文字の送り火を見ることが できる。
 ギャラリーには関雪の作品やスケッチ、下絵のほか、関雪が内外から集めたコレク ション、遺品などが展示されている。
(写真は 藪の羅漢像)


 
随心院  放送 4月6日(木)
小野小町像 随心院は正歴2年(991)の創建で、千年余の歴史を持つ古刹。随心院あたり は古くから小野氏の栄えた所で、小野小町にゆかりの深い寺で小町の遺跡や伝説など が残っている。
 深草少将の百夜通(ももよかよい)の伝説で有名な深草少将ら、多くの貴公子から 寄せられた千束の文を埋めた文塚、恋文を下張りにして造られた文張地蔵、小町が朝 夕の化粧の時に使う水をくんだ化粧の井戸などある。本堂には小町の晩年の姿を写し た卒塔婆小町座像も安置されている。
(写真は 小野小町像)

小野梅園 境内にある小町梅園は遅咲きの紅梅が園内を赤く染めることで知られている。薄紅 色のことを古くは「はねず」と言い、小野梅園を「唐棣(はねず)の梅」とも呼んで いる。梅の季節の3月には、深草少将、小野小町に扮した少女8人が踊る「唐棣踊 (はねずおどり)」があり、梅見客や参詣者の喜ばせている。
(写真は 小野梅園)


 
陶板名画の庭  放送 4月7日(金)
睡蓮・朝(モネ) 京都・北山の京都府立植物園の隣りに「京都府立陶板名画の庭」がある。古今東 西の名画を忠実に陶板に再現、展示しており、屋外で観賞できる世界で初めての絵画 庭園。
 陶板画は原画を撮影したフィルムから転写した陶板を焼成して鮮やかな色で仕上 げ、それを何枚も組み合わせて大きな絵にしたもの。変色も腐食もしないので永く保 存でき、焼物と美術を複合した新しい芸術ジャンル。展示されている陶板画は堺屋太一氏が発案企画、ダイコク電機社長栢森新治氏が発注製作、京都府に寄 贈した。施設の設計は安藤忠雄氏が担当した。
(写真は 睡蓮・朝(モネ))

最後の晩餐(レオナルド・ダ・ビンチ) 展示されている作品は全部で8点。「最後の審判」など4点は1990年の「国 際花と緑の博覧会」に出品されたもので、そのほかの4点は「陶板名画の庭」ために 新しく製作された。
 圧巻はミケランジェロの「最後の審判」で、110枚の陶板を組み合わせた縦1 4.3m、横13.9mでほぼ原寸大。ほかには、モネの「睡蓮・朝」、伝鳥羽僧正の 「鳥獣人物戯画」、ダ・ヴィンチの「最後の晩餐」、伝張擇端の「清明上河図」、スー ラの「ラ・グランド・ジャット島の日曜日の午後」、ルノアールの「テラスにて」、 ゴッホの「糸杉と星の道」。
(写真は 最後の晩餐(レオナルド・ダ・ビンチ))


◇あ    し◇
高台寺市バス東山安井下車徒歩5分。 
法然院市バス南田町下車徒歩5分又は浄土寺下車10分。 
白沙村荘庭園市バス銀閣寺前下車徒歩3分。 
随心院市バス、京阪バス小野下車5分。 
京都府立陶板名画の庭地下鉄北山駅下車徒歩3分。 
市バス前萩町下車徒歩5分。
◇問い合わせ先◇
高台寺075−561−9966 
法然院075−771−2420 
白沙村荘庭園075−751−0446 
随心院075−571−0025 
京都府立陶板名画の庭075−724−2188 


◆歴史街道とは

     日本の歴史の舞台を尋ねながら、日本文化の魅力を楽しみながら体験できる
ルートのことです。
     伊勢・飛鳥・奈良・京都・大阪・神戸の歴史都市を時流れに沿ってたどるメインルートと地域の特徴を活かした8本のテーマルートが設定されています。

 

@・・・ひょうごシンボルルート   
A・・・丹後・丹波伝説の旅ルート
B・・・越前戦国ルート              
C・・・近江戦国ルート              
D・・・お伊勢まいりルート         
E・・・修験者秘境ルート           
F・・・高野・熊野詣ルート         
G・・・なにわ歴史ルート           

    歴史街道計画では、これらのルートを舞台に
  「日本文化の発信基地づくり」
  「新しい余暇ゾーンづくり」
  「歴史文化を活かした地域づくり」
を目指し,
    官民188団体によりソフト・ハード両面の事業が推進されています。

◆歴史街道テレフォンガイド

     テレビ番組「歴史街道〜ロマンへの扉〜」と連合した各地の歴史文化情報を提供しています。
                  TEL:0180−996688    約3分 (通話料は有料)

 

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