月〜金曜日 21時48分〜21時54分


奈良・西ノ京 

 奈良に都が遷され、その都・平城京の東半分を左京、西半分を右京と呼んだ。こ の右京を古くから西ノ京とも呼んでいた。かつてはこのあたりに西大寺、喜光寺、唐 招提寺、薬師寺の堂塔が甍を連ね町も栄えたが、今はベッドタウン化している。西大 寺から世界文化遺産に登録された 唐招提寺、薬師寺への道は「歴史の道」として整 備され、多くの人たちが訪ねている。


 
垂仁天皇陵  放送 5月15日(月)
垂仁天皇陵 近鉄尼ケ辻駅の西、満々と水をたたえた周濠に囲まれた全長227mの前方後円 墳が垂仁天皇陵。垂仁天皇は記紀上で第11代天皇。皇女の倭(やまと)姫に天照大 神を伊勢に祭らせて伊勢神宮を創始するなど、祭祀を重んじ、整備したと言う。
 また垂仁天皇は、天皇、皇后らが死去した時の殉死を禁じ、埴輪を作らせて一緒に 埋葬したとも伝えられているが、考古学上の埴輪の製作年代と垂仁天皇の代とが一致 せず、あくまでも記紀伝承上のことのようだ。
(写真は 垂仁天皇陵)

田道間守(たじまもり)の墓 垂仁天皇陵の周濠に浮かぶ小さな島は田道間守(たじまもり)の墓と伝えられて いる。田道間守は垂仁天皇の命を受け、常世(とこよ)の国へ不老不死の妙薬を求め て船出した。ようやく妙薬の非時香菓(ときじくのかぐのこのみ)と言う橘の実を見 つけ持ち帰ったが、すでに天皇は死去していた。あまりの悲しさに天皇の墓前に橘の 実を供え自害して果てたと言う。
 田道間守は伝説上の人物で、新羅から渡来した天日槍(あめのひぼこ)の末裔とさ れている。持ち帰った橘が品種改良され、紀州ミカンになったとも言われ、和歌山・ 下津町にミカンの始祖・田道間守を祭る橘本(きつもと)神社がある。
(写真は 田道間守(たじまもり)の墓)


 
がんこ一徹長屋  放送 5月16日(火)
がんこ一徹長屋 世界文化遺産に登録されている薬師寺、唐招提寺の名刹の中間あたりに「がんこ 一徹長屋」がある。がんこはこだわり。こだわりがなければ職人でないと言うほんま もんの、がんこな職人6人の工房があるのが「がんこ一徹長屋」。大和の伝統を受け 継いで匠の技を磨いている。西ノ京散策の機会にのぞいてみては…。
 とんぼ玉「ガラス工房はんど」は、紀元前2000年の昔から世界各地で作られて いたガラス玉。昔ながらの技法を交え装身具などを作っている。
 茶筌「左京工房」は、全国生産の8割を占める生駒・高山の茶筅の技を引き継ぎ、 芸術品とも言える見事な茶筅が生まれている。
(写真は がんこ一徹長屋)

とんぼ玉のひな人形 一刀彫「志清}は、巧みなノミさばきで木に命を与え、作品を生みだす。一刀彫 は鎌倉時代に春日若宮祭の木偶を飾ったのが始まり。
 漆空間「あをぎり」は、伝統的な手法を踏まえ斬新でモダン的な作品を作りだして いる。漆工芸は縄文時代前期にさかのぼり、聖武天皇のころに開花した。
 赤膚焼「大塩恵旦」は、陶器作りに適した土を産した赤膚山に伝わった伝統の赤膚 焼を実演、販売しており、かわいい奈良絵が人気。
 表具「法斎堂」は、昔ながらの方法をがんこに守り続ける表具師が、書や絵などの 作品の持ち味を最大限に引き出す手さばきにはほれぼれする。
(写真は とんぼ玉のひな人形)


 
墨の資料館  放送 5月17日(水)
昔の墨 墨は古くからの筆記用具のひとつで、紀元前1000年も昔の中国の周の時代に 存在していたとも言われている。日本には1300年前、高麗の僧・曇徴(どんちょう)によって伝 えられたと日本書紀に記されている。墨で書かれた木簡などの文字が消滅することな く出土し、当時の歴史や文化を今に伝えている。
 そんな墨の歴史や製法を知る「墨の資料館」が、がんこ一徹長屋に併設されてい る。戦前から現代までのあらゆる種類の墨や著名作家の書、水墨画、版画などの作品 が展示されている。また、墨作りの実演や体験、墨の販売も行う。
(写真は 昔の墨)

墨の型入れ作業 現在の奈良墨は鎌倉時代に興福寺二諦坊で、灯明のすすを集め、にかわとまぜ合 わせて作ったのが始まりと言われている。基本的には現代もこの製法が引き継がれて いる。油煙、松煙のすすに、にかわをまぜて練り合わせ、香料を入れて型枠にはめて 成形する。型から取り出した墨を灰の中で乾燥させ、さらに空中でつるして自然乾燥 させる。完全に乾燥した墨は水洗い、磨き、彩色などの工程を経て完成する。完成ま でに大型の墨で3ヵ月以上もかかる。
 墨作りが最盛期の江戸時代には、38軒の墨製造業者があり、現在も13軒の業者 が年間600万個の墨を生産、全国シェア90%を占めている。
(写真は 墨の型入れ作業)


 
赤膚焼  放送 5月18日(木)
赤膚焼き 西ノ京の唐招提寺から西へ約1kmの赤膚山(別名五条山)は、古代から陶器作 りに適した土を産出した。この付近には土器作りの渡来人・土師氏が住んでいた。近 くに埴輪窯跡が見つかっており、古くから土器や埴輪などが作られていたようだ。
 戦国時代の天正年間、郡山城主になった豊臣秀長が、尾張・常滑から陶工の与九郎 を招き、独自の登窯を築き茶道用の陶器を作らせたのが、赤膚焼の始まりとされてい る。
(写真は 赤膚焼き)

絵つけ 江戸時代中期の寛政年間に、郡山藩主柳沢保光が窯を開き、保護奨励した ことで陶芸が盛んになった。天保年間に奥田木白と言う名陶工が出て、赤膚焼に人気 が集まった。
 赤膚焼は乳白色の上に春日山や社寺の鳥居、五重塔、鹿などのかわいい奈良絵が描 かれているのが特徴。この単純な絵柄が赤膚焼をいっそう親近感の持てるものにして いる。
(写真は 絵つけ)


 
一刀彫  放送 5月19日(金)
奈良人形の立ち雛 一刀彫とは木彫の技法のひとつで、奈良以外にも一刀彫の工芸品がある。奈良の 一刀彫の工芸品は奈良人形と言った方が適切だとも言える。一刀彫奈良人形は大胆な ノミ使いで生まれたシンプルな造形に、金箔、岩絵具などで華麗な極彩色に色づけし た工芸品を言う。
 奈良の一刀彫は鎌倉時代に春日若宮祭の時に木偶を飾ったのが始まり。これが玩 具、観賞用の人形として製作されるようになった。一刀彫奈良人形は主にヒノキを使 い、大きくわけて能狂言を題材にしたもの、舞楽を題材にしたもの、動物を題材にし た人形や置き物がある。
(写真は 奈良人形の立ち雛)

森川杜園 江戸時代末から明治初期にかけて活躍した名工・森川杜園は、一刀彫奈良人形の 中興の祖、あるいは真の奈良人形の創始者とも言われ、奈良人形を芸術作品の域にま で引き上げた。
 その後、一刀彫奈良人形は室内の置き物や観光客のみやげものとして盛んに製作さ れるようになった。一刀彫奈良人形は彫刻に視点を置いた芸術品か、商品性に視点を 置いた工芸品なのか、作者のスタンスの違いで作品にも大きな隔たりがある。また、 和風建築の床の間に合わせた人形から、洋間にもマッチし現代の若者にもアピールで きる斬新な作品の創作など、一刀彫奈良人形も多くの種類がある。
(写真は 森川杜園)


◇あ    し◇
垂仁天皇陵近鉄尼ケ辻駅下車徒歩5分。 
がんこ一徹長屋、墨の資料館近鉄西ノ京駅下車徒歩5分。 
赤膚焼窯元「大塩玉泉」近鉄学園前駅からバス東坂下車徒歩1分。 
◇問い合わせ先◇
垂仁天皇陵
    宮内庁書陵部畝傍監区事務所
0744−22−3338 
がんこ一徹長屋0742−41−7011 
とんぼ玉「ガラス工房はんど」0742−40−1567 
一刀彫「志清」0742−41−0694 
漆空間「あをぎり」0742−41−0358 
赤膚焼「大塩恵旦」0742−41−0657 
赤膚焼窯元「大塩玉泉」0742−45−1806 
表具「法斎堂」0742−41−0667 
茶筌「左京工房」0742−41−0527 
墨の資料館0742−41−7155 

◆歴史街道とは

     日本の歴史の舞台を尋ねながら、日本文化の魅力を楽しみながら体験できる
ルートのことです。
     伊勢・飛鳥・奈良・京都・大阪・神戸の歴史都市を時流れに沿ってたどるメインルートと地域の特徴を活かした8本のテーマルートが設定されています。

 

@・・・ひょうごシンボルルート   
A・・・丹後・丹波伝説の旅ルート
B・・・越前戦国ルート              
C・・・近江戦国ルート              
D・・・お伊勢まいりルート         
E・・・修験者秘境ルート           
F・・・高野・熊野詣ルート         
G・・・なにわ歴史ルート           

    歴史街道計画では、これらのルートを舞台に
  「日本文化の発信基地づくり」
  「新しい余暇ゾーンづくり」
  「歴史文化を活かした地域づくり」
を目指し,
    官民188団体によりソフト・ハード両面の事業が推進されています。

◆歴史街道テレフォンガイド

     テレビ番組「歴史街道〜ロマンへの扉〜」と連合した各地の歴史文化情報を提供しています。
                  TEL:0180−996688    約3分 (通話料は有料)

 

◆歴史街道倶楽部のご紹介

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