月〜金曜日 18時54分〜19時00分


兵庫・神戸市、吉川町 

 神戸の六甲山に初めて別荘を建て、日本で始めてゴルフ場を作ったのは、神戸開港と同時に神戸にやって来た貿易商のイギリス人で、国際都市・神戸の先べんをつけた人物でもある。神戸の北隣の吉川町も町内にゴルフ場がたくさんある町として知られ、同時に自然の恩恵を受けた酒米の産地でもある。女性プロゴルファー・久保樹乃さんと共に訪ねてみた。


 
ゴルフの黎明(神戸市)  放送 9月9日(月)
 六甲山上の「神戸ゴルフ倶楽部」は、わが国最初のゴルフ場で開場は明治36年(1903)。このゴルフ場の創立者は明治元年(1868)開港したばかりの神戸にやって来た、22歳でイギリス人貿易商アーサー・ヘスケス・グルームだった。
 神戸へ来た当初は居留地に住んでいたが、日本人女性と結婚し、女の子供たちには洋服は着せず着物で通し、言葉も日本語を話させた。自分の死亡後は妻の生家の墓地に埋葬するよう遺言を残し、日本人と同じ仏教の戒名をつけてもらったほどの日本びいきだった。明治28年(1895)六甲山に初めて別荘を建て、六甲山の開発に先べんをつけ、生涯六甲山を愛した人物だった。グルームは六甲山の別荘に居留地の商館番号と同じ「101番」の名前をつけので「ひゃくいちばんの旦那」と呼ばれていた。

神戸ゴルフ倶楽部

(写真は 神戸ゴルフ倶楽部)

2代目 クラブハウス

 六甲山の別荘で友人たちと週末を楽しむ団らんの中でゴルフが話題になった。グルームは「六甲山にゴルフ場を作ってみよう」と思い立ち、明治34年(1901)に4ホールのゴルフ場を作り、2年後に9ホールのゴルフ場にした。この年、神戸の居留地に住む外国人らを中心メンバーにした「神戸ゴルフ倶楽部」が誕生、倶楽部の開場式で当時の兵庫県知事・服部一三が始球式のティショットをし、この始球式のボールは今も倶楽部に保存されている。だだしゴルフをしたことのなかった服部知事のショットは、パッティングのような打ち方だったのでわずかしか飛ばなかったとか?。
 このゴルフ場では創立当初から居留地の外国人婦人らが長いスカートを翻してプレーをしていた。大正時代にはいると女性のゴルフ熱も高まり、日本女性が大きくクラブを振るショットやグリーン上でパターをする姿が目立つようになった。

(写真は 2代目 クラブハウス)


 
法光寺(吉川町)  放送 9月10日(火)
 法光寺は飛鳥時代の白雉2年(651)天竺の人・法道仙人の開創と伝えられる古刹。
本堂は天正7年(1579)羽柴秀吉の三木城攻撃の時の兵火にかかり焼失。江戸時代の元禄年間に再建されたが再び焼失し、元文5年(1740)に再建された。本堂内陣には法道仙人が自ら彫ったと伝えれる本尊・阿弥陀如来座像が安置されている。この寺は春にはサクラ、秋は紅葉の名所としても知られている。

五輪泥塔

(写真は 五輪泥塔)

法光寺 文書

 室町時代初期のものと見られる境内の高さ22mの五輪塔そばの地中から、おびただしい数の五輪泥塔が見つかっている。この五輪泥塔は平安時代末から鎌倉時代にかけての阿弥陀信仰として盛んに作られた。長さ7cm、厚さ1cmの五輪塔をかたどった粘土板に阿弥陀如来を表す梵字5字を刻み、供養のために地中に埋めたもので大変珍しい貴重な資料とされている。
 寺には法光寺文書や正月の修正会(しゅしょうえ)の鬼踊りの行事に使われた恐ろしい表情をした鬼の面・8面が保存されている。客殿のふすまには京狩野家9代目狩野永岳が、江戸時代の天保6年(1835)に描いた障壁画が残っている。

(写真は 法光寺 文書)


 
伝統工芸・美吉かご(吉川町)  放送 9月11日(水)
 吉川町には数百年の昔から受け継がれてきた伝統工芸品として竹で編んだ「美吉かご」がある。本来は農家の日用品として作られ、使われてきたものだが、有馬温泉の湯治客の土産物として喜ばれるようになり農家の副業になった。明治時代は有馬かごと呼ばれていたが、吉川町となってから美吉かごと呼ばれるようになる。現在は町内で美吉かごを作る職人は10人ほどで、戸田竹芸店で一括販売している。ほかには吉川町内の吉川温泉「よかたん」の売店で販売しているだけとなった。

戸田竹芸店

(写真は 戸田竹芸店)

美吉かご

 竹芸店ではベテラン職人の指先が竹に命を吹き込むように黙々と動き、しなやかな竹が繊細で優美、素朴な味わいの竹かごに生まれ変わる。美吉かごには四海波、市松編み、編組、丸竹加工など大きく分けて8種類ほどの作り方があるという。
 今はプラスチック製やステンレス製のかごやざるが多いが、竹製品の良さは使って初めてわかる。使い込むほどに竹製品独特の光沢と味わいが出てきて、日本の伝統工芸品の美しさをかもし出す。現代生活に合わせ使いやすさを追及した新しい製品を開発したり、生け花を挿す花かごなど個性豊かな造形美のインテリア製品も作られている。手の込んだものは製作に1カ月以上もかかり、値段も数十万円もする作品もあるそうだ。日用品として使う安い品は千円ぐらいからある。

(写真は 美吉かご)


 
東光寺(吉川町)  放送 9月12日(木)
 吉川町の東端にたたずむ東光寺は、奈良時代の神亀年間(724〜29)行基が自ら刻んだ子安地蔵尊を本尊として創建し、播州の東に位置するところから東光寺と名づけられたという。最盛時には塔頭28坊を数え、寺域も広かったようだ。

本堂

(写真は 本堂)

多宝塔

 本堂(国・重文)は室町時代初期から中期にかけての建立、和様に唐様、天竺様を取り入れた折衷様式で、簡素ながら技巧を凝らした美しい形が周囲の森閑とした自然とよく調和している。
 本堂から急な石段を登っていくと室町時代中期に建築された朱塗りの多宝塔がある。秋には境内や周囲の山々の木々が色づき、紅葉の風情が楽しめるお寺でもある。

(写真は 多宝塔)


 
酒米の里(吉川町)  放送 9月13日(金)
 吉川町を囲む山々の山麓から里へ連なる棚田で頭を垂れている稲穂は、酒米の中でも王様といわれる山田錦。粘土質の土壌、昼夜の大きな気温の差など自然の恵みが最高級の酒米を産出する。さらに酒米作りに精根を傾け、倒れやすい山田錦を風水害や病害虫から守り、丹精込めて育てた農家の努力が酒米に込めれている。大粒で粒の中心に白っぽいでんぷん部分があり、たんぱく質と脂肪分が少ないなど良質な酒米として条件をすべて満たしているのが山田錦。灘五郷のベテラン杜氏たちは「最高の酒米」と太鼓判を押している。
 吉川町の特産物である山田錦のルーツをたどれば伊勢山田へと行き着く。伊勢詣に行った吉川の田中新三郎と言う人が、道中の伊勢山田でほれぼれするような酒米を見つけて持ち帰り栽培した。伊勢山田にちなんで「山田穂」と名づけた。大正12年(1923)兵庫県立農業試験場で「山田穂」を母に「短稈渡船(たんかんわたりふね)」を父として人工交配されて生まれ、品種改良を重ねて昭和11年(1936)に「山田錦」と命名され、酒米の奨励品種にされた。

山田錦

(写真は 山田錦)

黒滝

 丘陵地を流れる美嚢川の上流にある黒滝は落差4m、幅30mの横長の形をした珍しい滝。大きな一枚岩から水がすだれ状に落ち、その水音はいかにも涼しげだ。冬には一面ツララとなるなど四季折々に違った顔を見せる。万八タヌキとお万キツネが化けあいの腕競べした民話の舞台がこの黒滝。腕競べに勝った万八タヌキを祭った万福大明神が黒滝近くにある。
 こんな緑と水の自然が豊かな吉川町にはゴルフ場が12カ所もあり、町の面積の25%を占めている。中国自動車道の開通による交通の便の良さと、緑豊かな丘陵地帯を利用してゴルフ場がつぎつぎに開発された。ひとつの町内に12カ所ものゴルフ場があるのは全国でも少ない。

(写真は 黒滝)


◇あ    し◇
神戸ゴルフ倶楽部JR六甲道駅、阪神御影駅、阪急六甲駅からバスで六甲ケーブル下駅へ、六甲ケーブルで山上駅で下車、山上バスで記念碑口下車徒歩15分。
法光寺JR福知山線三田駅、神戸電鉄粟生線三木上の丸駅からバス渡瀬下車徒歩10分。 
戸田竹芸店JR福知山線三田駅からバス有安下車徒歩8分。 
東光寺JR福知山線三田駅からバス福吉下車徒歩10分。 
黒滝JR福知山線三田駅からバス二瀬川下車徒歩10分。吉川町へはJR大阪駅前(大阪中央郵便局前)から中国自動車道高速バスで吉川インターチェンジ下車、吉川インター前バス停から町内コミュニティバスか路線バス、タクシーを利用するのが便利。JR福知山線三田駅、神戸電鉄粟生線三木上の丸駅からの路線バスの運転本数は少ないので注意。
◇問い合わせ先◇
神戸ゴルフ倶楽部078−891−0364 
吉川町役場企画調整課0794−72−0180 
法光寺0794−73−0083 
戸田竹芸店0794−73−0008 
東光寺0794−72−0315 

◆歴史街道とは

     日本の歴史の舞台を尋ねながら、日本文化の魅力を楽しみながら体験できる
ルートのことです。
     伊勢・飛鳥・奈良・京都・大阪・神戸の歴史都市を時流れに沿ってたどるメインルートと地域の特徴を活かした8本のテーマルートが設定されています。

 

(1)・・・ひょうごシンボルルート   
(2)・・・丹後・丹波伝説の旅ルート
(3)・・・越前戦国ルート              
(4)・・・近江戦国ルート              
(5)・・・お伊勢まいりルート         
(6)・・・修験者秘境ルート           
(7)・・・高野・熊野詣ルート         
(8)・・・なにわ歴史ルート           

    歴史街道計画では、これらのルートを舞台に
  「日本文化の発信基地づくり」
  「新しい余暇ゾーンづくり」
  「歴史文化を活かした地域づくり」
を目指し,
    官民188団体によりソフト・ハード両面の事業が推進されています。

◆歴史街道テレフォンガイド

     テレビ番組「歴史街道〜ロマンへの扉〜」と連合した各地の歴史文化情報を提供しています。
                  TEL:0180−996688    約3分 (通話料は有料)

 

◆歴史街道倶楽部のご紹介

    あなたも「関西の歴史や文化を楽しみながら探求する」歴史街道倶楽部に参加しませんか?
    歴史街道倶楽部では、関西各地の様々な情報のご提供や、ウォーキング、歴史講演会など楽しいイベントを企画しています。
   倶楽部入会の資料をご希望の方は、
 ハガキにあなたのご住所、お名前を明記の上、
          郵便番号 530−6691
          大阪市北区中之島センタービル内郵便局私書箱19号
                  「テレホンサービス係」
へお送り下さい。
   歴史街道倶楽部の概要を解説したパンフレットと申込み用紙をご送付いたします。
       FAXでも受け付けております。FAX番号:06−6448−8698   

歴史街道推進協議会