月〜金曜日 18時54分〜19時00分


大阪の味 

 食文化の大阪、食い倒れの町・大阪などと言われ、大阪には食にまつわる文化やエピソードが多い。東京や京都などにない大阪独特の味や食材がある。これが大阪の食文化であろう。


 
湯木美術館と正月屋  放送 12月23日(月)
 大阪市高麗橋の「吉兆」と言えば大阪を代表する日本料理の名門料亭。その創業者・故湯木貞一氏は稀代の包丁人であったばかりでなく、茶の湯の道具をはじめとする古美術の蒐集家でもあった。
 湯木氏が50年余りにわたって蒐集したコレクションを展示しているのが、大阪ビジネス街のど真ん中、大阪・中央区平野町にある湯木美術館。昭和62年(1987)吉兆平野店の跡地に建てられた8階建てビルの1階〜3階にオープンした。収蔵品は約970点で、その中には国の重要文化財に指定されているものが11点、重要美術品3点が含まれている。
日本料理を総合芸術の域にまで高めたと評価された湯木氏が、料理と茶の湯を人生の両輪とした人生観が展示品からうかがわれる。

雪笹手鉢(仁阿弥道八作・湯木美術館)

(写真は 雪笹手鉢
(仁阿弥道八作・湯木美術館))

睦月献立・八寸(茶寮正月屋)

 展示品の中から代表的なものを紹介しよう。信楽鬼桶水指(室町時代)は厚手の水指で口が広く、信楽特有の山土を使い赤褐色に焼きあがっている。雪笹手鉢(江戸時代・仁阿弥道八作)は、優れた技巧で雪笹を見事に表現している。色絵扇流文茶碗(江戸時代・野々村仁清作)は、ゆったりとした曲線が美しい茶碗で、仁清の色絵茶碗の作品の中でも評価が高い作品。このほかに重文の春日宮曼荼羅(まんだら)、大燈国師墨跡、織部四方手鉢などがある。
 このビルで老舗吉兆の味が気軽に味わえるのが1階の「正月屋」。美術館の帰りにちょっと寄ってみるのもよい。昼間は点心とコーヒー、抹茶などの喫茶メニュー。

(写真は 睦月献立・八寸(茶寮正月屋))


 
大好きたこ焼  放送 12月24日(火)
 食い倒れの大阪にはうまいもが数多くあるが、庶民の町の大阪を代表するものと日本の全国民が認めているたこ焼。東京から大阪へ出張して来るビジネスマン、特に若い女性には大阪でたこ焼を食べるのが楽しみと言う人もいるほど。今は大阪以外の土地でもたこ焼が食べられるが、やはり本場、大阪のたこ焼の味はほかでは味わえない独特のものがあるようだ。
 たこ焼の元祖を名乗るのが大阪・西成区玉出の会津屋で、昭和8年(1933)に初代・遠藤留吉が肉、コンニャクなどを入れて焼いたラジューム焼(ラジオ焼)がその始まりと言う。昭和10年(1935)明石のたこと、ころもに味をつけて焼いたのが「たこ焼」で、ソースをつけずに食べておいしいのが会津屋のたこ焼と評判になった。

会津屋

(写真は 会津屋)

たこ焼懐石(元祖たこ昌)

 その後、ソースの普及でころもに味がなくなり、いろいろなものを入れたたこ焼が出回るようになった。道頓堀に4階建てビルを構える「たこ昌」は、ビル全体がたこ焼づくし。ここではたこ焼をいろいろな方法で調理した「たこ焼懐石」が味わえる。この「たこ焼懐石」は、堺市浜寺と同市鳳にある純日本風の雰囲気にした竹粋亭にもある。
 家庭に持ち帰り気軽にたこ焼が味わえるパック入りのたこ焼も登場し、大阪周辺のJRや私鉄、空港の売店、百貨店、スーパー、コンビニでも買えるようになった。「たかがたこ焼、されどたこ焼」と言えるのが、大阪の食文化の一端を担うたこ焼である。

(写真は たこ焼懐石(元祖たこ昌))


 
うどんすき  放送 12月25日(水)
 大阪・中央区淡路町に鎮座するのが御霊神社。ビジネス街のど真ん中にある神社とは思えないような閑静なたたずまいである。明治から大正時代にかけて境内では人形浄瑠璃の御霊文楽座の興業が行われ、見世物小屋や夜店が建ち並び大変にぎやかな所だった。また、近松門左衛門の「曾根崎心中」や谷崎潤一郎の「春琴抄」にも御霊神社が登場する。
 この御霊神社のすぐ西にあるのが「うどんすき」でおなじみの美々卯本店。かたくなに伝統の味と食材、調理法を守り続け、味にうるさい関西の人たちに受けている。

御霊文楽座跡(御霊神社)

(写真は 御霊文楽座跡(御霊神社))

うどんすき(美々卯)

 美々卯は大阪・堺市で200年続いた老舗料亭「耳卯楼」を大正13年(1924)美々卯の先代・薩摩平太郎氏が麺類専門店「美々卯」にした。昭和3年(1928)に先代・平太郎氏が考案した「うどんすき」は、自家製の太打ちうどんと具沢山の鍋と言う、大阪ならではの組み合わせで、味の決め手は独特の出し汁。美々卯で生まれたうどんすきは、今や全国的な鍋物料理になっている。
 出し汁はメジカ節と利尻昆布から2時間かけて作る。野菜は土のついたままのものを土を洗い落とすところから始まり、魚は1尾づつさばく。白菜にはほうれん草が巻き込まれ、一度湯通しされる。こうすることによってうどんすきのだしが濁らないそうだ。このように食材ひとつひとつに、細心の気配りがされているのが美々卯のうどんすきと言える。

(写真は うどんすき(美々卯))


 
かやくごはん  放送 12月26日(木)
 地下鉄難波駅の西、JR難波駅やOCATのすぐ北に新しイベントスペース「湊町リバープレイス」が誕生した。1500人収容のスタンディングホールやさまざまなイベントが展開できる広場を備え、すぐ北側には道頓堀川の水辺が広がる大阪・ミナミの新しい若者スポットとなっている。
 その「湊町リバープレイス」から数分の所にある仕舞屋(しもたや)風のこじんまりとした店構えの「大黒」は、明治35年(1902)創業で名物のかやくごはんで知られている。古くからのなじみ客が多く「このかやくごはんを食べると落ち着く」と言う人も多い。

OCAT

(写真は OCAT)

かやく御飯(大黒)

 コシヒカリに上質の昆布とかつお節から取った濃いだしを入れ、あげ、ゴボウ、コンニャクの3種の具とともにふっくらと炊き上げる。「具はシンプルだが決め手は決してまねのできないだしにある」と2代目女将・木田節子さんは言う。おかずは焼きたてのサケやサワラ、サンマなどの焼魚とヌタ、キンピラ、ヒジキ、カボチャ、コイモの丸煮などを選ぶ。かやくごはんに劣らず、薄味のおかずの総菜が人気を得ている。
 近くの新歌舞伎座で公演していた辰巳柳太郎もこの大黒の常連客だったとか。このほか、作家や役者などで大黒のかやくごはんの味が忘れられない人が多いようだ。

(写真は かやく御飯(大黒))


 
なにわ食いしんぼ横丁  放送 12月27日(金)
 海遊館、サントリーミュージアム、大観覧車などで大阪の観光スポットに定着した天保山。その天保山のマーケットプレースに今年新しい町「なにわ食いしんぼ横丁」が誕生した。昭和45年(1970)の大阪万博を目前にした昭和40年頃の大阪が最も光り輝いていた「元気な大阪」をテーマに、ガード下や駅前商店街と言った下町を再現したのがこの横丁。横丁に張られた映画のポスターもオジサン、オバサンたちを青春時代に呼び戻してくれる。
 この懐かしい「なにわの街並み」に関西の食文化を代表するグルメの老舗や元祖の店が集まっており、日本初の「関西名物グルメ・フードテーマパーク」と言える。

北極星

(写真は 北極星)

ゆかり

 この横丁には食べ物店ばかり20軒が軒を並べている。洋食の定番・オムライス発明した老舗の北極星。元祖・イカ焼の桃谷いかやき屋。たこ焼の元祖・会津屋。「ソース二度つけ禁止」の串カツのドタバタ屋。お好み焼の老舗・ゆかり。丹波黒の大豆をお客が自分で挽いて作るきな粉をワラビ餅にかける芭蕉庵。
 ほかに塩昆布の小倉屋、大和煮の江戸三大和屋、近畿の名産を集めた近畿ふるさと産品館、うどんに汁をぶっかけるぶっかけ十三、キムチなど韓国食材の徳山商店、紀州梅のおにぎりのサラヤ、夫婦善哉で有名なカレーの自由軒、大阪土産のいちびり庵、自慢のコーヒーと日本一低い山「天保山」の登山証明を発行する店の山小屋、パリッとした食感の餃子の餃々、焼きたてみたらしだんごの御菓子司守口つくし、抹茶ソフトクリームの新八茶、焼ポン栗の京丹波、手焼きせんべいの寺子屋本舗。
 全部の店を一度で味わうのは無理で、何度も足を運ぶ人もおり、熟年層よりもむしろ若いカップル、子供たちにうけている。 

(写真は ゆかり)


◇あ    し◇
湯木美術館、正月屋京阪電鉄、地下鉄御堂筋線淀屋橋駅下車徒歩5分。 
会津屋本店地下鉄四つ橋線玉出駅下車徒歩3分。 
たこ昌道頓堀本店地下鉄御堂筋線・千日前線、近鉄奈良線難波駅下車
徒歩5分。 
御霊神社、美々卯本店地下鉄御堂筋線淀屋橋駅、本町駅下車徒歩5分。
京阪電鉄淀屋橋駅下車徒歩5分。
湊町リバープレイス、大黒 地下鉄御堂筋線・千日前線、近鉄奈良線難波駅下車
徒歩5分。 
なにわ食いしんぼ横丁地下鉄中央線大阪港駅下車徒歩5分。 
◇問い合わせ先◇
湯木美術館06−6203−0188 
正月屋06−6231−2829 
会津屋本店06−6651−2311 
たこ昌道頓堀店06−6212−3363 
御霊神社06−6231−5041 
美々卯(本店)06−6231−5770 
湊町リバープレイス06−4397−0571 
大黒06−6211−1101 
なにわ食いしんぼ横丁06−6576−5501

◆歴史街道とは

     日本の歴史の舞台を尋ねながら、日本文化の魅力を楽しみながら体験できる
ルートのことです。
     伊勢・飛鳥・奈良・京都・大阪・神戸の歴史都市を時流れに沿ってたどるメインルートと地域の特徴を活かした8本のテーマルートが設定されています。

 

(1)・・・ひょうごシンボルルート   
(2)・・・丹後・丹波伝説の旅ルート
(3)・・・越前戦国ルート              
(4)・・・近江戦国ルート              
(5)・・・お伊勢まいりルート         
(6)・・・修験者秘境ルート           
(7)・・・高野・熊野詣ルート         
(8)・・・なにわ歴史ルート           

    歴史街道計画では、これらのルートを舞台に
  「日本文化の発信基地づくり」
  「新しい余暇ゾーンづくり」
  「歴史文化を活かした地域づくり」
を目指し,
    官民188団体によりソフト・ハード両面の事業が推進されています。

◆歴史街道テレフォンガイド

     テレビ番組「歴史街道〜ロマンへの扉〜」と連合した各地の歴史文化情報を提供しています。
                  TEL:0180−996688    約3分 (通話料は有料)

 

◆歴史街道倶楽部のご紹介

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歴史街道推進協議会