月〜金曜日 21時54分〜22時00分


周山街道

 周山街道は京都の一条通りを西に延長した街道で、宇多野、高尾、周山をへて若狭へとつながる。この街道周辺は京都でも郊外のおもむきを残し、御室の仁和寺をはじめ、高尾の神護寺、栂の尾の高山寺などの古刹が点在する。さらに北にむかってゆくと北山杉の山々がつずく京北町の周山、そこから深見峠をこえると山々にかこまれた美山町がある。街道の行き着くところは、福井県の小浜である。


 
幻の五新鉄道 放送日 9月13日(月)

 五新線は昭和14年(1939年)に起工式が行われたが戦争のため工事中止となり、戦後になって昭和32年(1957年)に工事を再開した。34年には五條と西吉野村の城戸間の路盤工事が完成したが、翌35年バス路線に計画変更となり、またもや工事続行は中止となった。この段階で近鉄が御所から路線を延長して電車を国鉄(現JR)吉野口に乗り入れ、五條をへて大塔村の阪本まで運行したいと申し出て、新たな可能性が生まれたが、議論百出で大騒ぎとなった。最終的に近鉄の計画は受け入れられず、線路が敷かれる可能性は一旦なくなった。

五新鉄道のトンネル   

 

 現在、五條ー城戸間はバス専用路線として鉄道の路盤が活用され、一日20便のJRバスの運行が続いている。この路線は昭和42年(1967年)延長工事に着手されて、阪本まで開通するかに思われたが、国鉄再建問題から赤字路線は廃止の方向が決まり、昭和57年(1982年)全面的に工事はストップしたままとなってしまった。

 この記事は8月24日放送予定の分が放送されなかったため、9月13日に放送されることになりました。それゆえ特別に周山街道のシリーズに組み込んだものです。 

五新鉄道の路盤

  


 
仁和寺(にんなじ) 放送日 9月14日(火)

 仁和寺は886年に光孝天皇の勅願で建てられたが、光孝天皇は翌年なくなり、宇多天皇がひきついで2年後の仁和4年(888年に)に完成したので仁和寺と名ずけられた。宇多帝は899年この寺にはいって髪をそり、寺内に円堂をもうけて御座所としたので、御室とよばれるようになった。以後皇室の人たちが後をつぐ門跡の大寺院である。ひときわ大きい仁王門(江戸時代、重文)を入ると広々とした境内がひろがる。左手に書院やしん殿、客殿などが建ち並ぶ。しん殿の北に江戸初期の池泉観賞式庭園がある。
 建物は明治20年の火災で焼けたあとの再建である。

仁和寺の遠望

 

 広場の右手には霊宝館があり、10月1−15日の期間だけ一般に公開される。寺宝には絹本着色孔雀明王像(中国南宋時代)や阿弥陀三尊(平安時代初期)宝相華蒔絵宝珠箱など数多く、いずれも国宝。正面広場に戻ると北側の一段高いところに中門があり、その奥正面に金堂(慶長16年=1611年、国宝)が建つ。これは皇居の紫しん殿を移したもので、屋根は瓦葺きに変えられているが、しとみ戸を残した紫しん殿の古い遺構で我が国で唯一の貴重なもの。東方(右手)に五重塔(江戸時代ー重文)があり、寺観を整えている。
また、御室を有名にしているもうひとつのものは、御室の桜である。たけの低い里桜(八重桜の元種)、山桜などで、丈が低いところから一名「お多福桜」とよばれる。中門を入った左にあり、200本あまりが遅咲きの美を競う。

仁和寺の金堂

  


 
三尾の名刹 放送日 9月15日(水)

 高雄、槙ノ尾、栂ノ尾を総称して三尾(さんび)とよぶ。御室から周山街道を西に進むと徐々に山間部にはいって行くが、道が大きくカーブして北に向きをかえるところの西側、谷をへだてて高雄山神護寺(じんごじ)がある。和気清麻呂の創建した愛宕山五坊の一つで、高雄山寺が前身とつたえる。804年唐国より帰国した空海(弘法大師)が809年この寺に入り、14年間をこの寺で過ごして真言宗を開く基礎をきずいた。また、伝教大師最澄も一時この寺にいたことがある。その後2度の火災で衰えたが、平安末期の1184年、文覚(もんがく)上人が後白河帝や源頼朝の庇護を受けて再興した。清滝川をのぞむ尾根を切り開いた境内の金堂(昭和)には、木造の本尊薬師如来立像(国宝、平安初期)がまつられている。唇と目にわずかに彩色のあとがのこり、きびしい表情に量感のある体、するどいノミのあとをみせる仏像は他に例を見ない傑作。金堂の西南に建つ大師堂(平安、桃山ー重文)は弘法大師の住坊跡とつたえるが、現在のは桃山時代の改築をうけた1168年再建のもの。山内で最古の建物である。柿葺の住宅風建築で弘法大師がまつられている。
 金堂からさらに階段を上ると多宝塔(昭和)があり、五大虚空蔵菩薩座像(平安初期の一木造り、国宝)が豊満な姿で並んでいる。これも平安初期(貞観彫刻)の傑作。このほか絵画では肖像画の傑作、伝源頼朝像、伝平重盛像など(共に平安末ー鎌倉初、国宝)が伝わる。境内の西の広場から清滝川にむかって崖上から飛ばす「かわらけ投げ」に、昔から人気がある。この寺一帯は紅葉の名所で、秋には全山紅葉にそまる。

神護寺の金堂

高山寺石水院

 

 

 

 

高山寺明恵上人樹上坐像(国宝)

 神護寺から川添いに500メートル程北に進むと槙尾山西明寺(さいみょうじ)がある。元は神護寺の別院であったが平安末期のころ、和泉国槙尾山の自証上人が再興した寺で、現在の本堂は江戸時代元禄年間のもの。寺宝に木造釈迦如来像(鎌倉時代ー重文)がある。清涼寺式といわれる独特の彫り方をしている。
 更に川沿いに北へ500メートルもすすむと栂の尾高山寺に至る。ここも紅葉の名所で秋には訪れる人が多い。この寺は奈良時代の末、光仁天皇の勅願による開創とつたえる。鎌倉時代に紀州出身の明恵上人が後鳥羽帝の援助を受けて華厳宗の寺として再興した。その後火災にあって鎌倉時代の建物はほとんど焼けたが、明恵上人が後鳥羽帝より学問所としてもらった石水院の建物だけは今に残って国宝となっている。寺宝には明恵上人樹上座禅像(鎌倉時代、国宝)仏眼仏母像(鎌倉時代、国宝)華厳宗祖師絵伝(鎌倉時代、国宝)などがあり、何よりも有名なのが鳥獣人物戯画4巻(鎌倉時代、国宝)である。猿、蛙、ウサギなどの動物を擬人化した風刺画で達者な筆裁きは他ではみられないものである。高山寺はまた緑茶の発祥地といわれている。栄西禅師が中国からもちかえった茶の種を贈られた明恵上人は、栂の尾の清滝川をはさんだ対岸の深瀬で栽培したところ成功した。当初は薬品として用いられたといわれる。後に宇治などへ移植されて順次茶がひろまっっていった。宇治の茶業家はいまでも新茶を明恵上人の廟前に供えるのを慣わしとしている。

  


 
京北町周山 放送日 9月16日(木)

 高雄から国道は山間を北にむかう。両側の斜面に植えられた杉の林は名高い北山杉である。川端康成の小説「古都」にえがかれ、映画化もされたが、この地方の人たちの磨き丸太造りにかける情熱と労力は敬服に値する。冬のさなかに砂に水をつけて素手で丸太の肌を磨く女性によって仕上げられる床柱は、和室の床の間の必需品として北山杉の価値は高い。

北山杉の林

 

 また、周山は古くから丹波と京を結ぶ交通の要所で明智光秀はこの地の城山に1579年、周山城を構えた。本丸跡の石垣を始め15の遺跡が残っている。周山という名前も光秀が周の武王にみずからをなぞらえて付けたといわれる。山麓の慈眼寺には明智光秀の木像を安置している。

明智城の本丸跡石垣

  


 
美山町茅葺きの里 放送日 9月17日(金)

 北は福井県に隣接する美山町は、標高800−900メートルの山々に四方をかこまれた高地にある。由良川にそって建てられた民家のうち、350棟は昔ながらの茅葺屋根をのこしている。平成5年北地区が文化庁から重要伝統的建造物群保存地区に指定された。以後近在から観光に訪れる人が増え、昔懐かしい風景を楽しんでいる。

萱葺きの民家群

 

 保存地区の中、北地区の「茅葺山村歴史の里」内にある民俗資料館には、入り母屋造り妻入り(建物の間口が狭い方に出入り口がある)の母屋があって生活体験棟に利用され、小屋と倉がそれぞれ農具や生活用品の展示棟になっている。非公開ではあるが下平屋地区の小林家住宅(1816年ー重文)や樫原の石田家(江戸ー重文)などの古い民家もある。また、中地区の美山町自然文化村・河鹿荘では、宿泊、キャンプ、テニス、サイクリング、鮎つかみなどもでき、陶芸教室も開かれている。

萱葺き山村歴史の里民俗資料館

  


あ   し

西吉野村へは近鉄南大阪線高田市駅または大阪線八木駅から奈良交通バス十津川方面ゆきに乗車。  JR五条からJRバス阪本方面行きが一部鉄道の予定地をはしる


御室へは 京都駅、四条大宮から市バス、JRバス京北線で高雄、周山、鶴が丘方面行き乗車。御室仁和寺下車。
高雄へは、 京都駅、四条大宮から市バス、JRバス高雄、周山、鶴が丘方面行き乗車。高雄下車20分。
高山寺へは、 JRバス周山、鶴ヶ丘方面ゆき栂ノ尾下車。
周山へは、 JRバス周山、鶴ヶ丘方面ゆき、周山下車。
美山町へは JRバス周山、鶴ヶ丘方面ゆき、鳥谷下車、町営バスに乗り換え、安掛で乗り換えて北下車で山村歴史の里民俗資料館。中下車で美山町自然文化村・河鹿荘。
JR山陰線和知駅より町営バス美山町ゆき


みどころ

西吉野村には、賀名生皇居、賀名生梅林、柿博物館などがある
北山杉は京都市の中川あたりが中心で周山あたりまでつずく。
京北町には、周山城跡のほかに山国神社や枝垂れ桜の常照皇寺がある。周山には、ウッディ京北「森林・林業と木製品とのふれあい、学びあい」展示館があり、木製品や特産品を販売、喫茶コーナーもある。
美山町には、茅葺きの民家群や民俗資料館、自然文化村、重文の民家、小林家、石田家などがある。 樫原にある大野ダム公園には虹の湖パターゴルフ場や湖上をボートで楽しむ事もできる。公園は桜と紅葉がみごとである。

特産品

京北町周山 北山杉磨き丸太、地酒「初日の出」、北山杉工芸品、納豆もち、まつたけ、京北まごころ味噌、まごころ漬け。
美山町 しめじ、山菜加工品、美山茶、美山牛乳


問い合わせ先

西吉野村企画財政課
      07473−3−0301
仁和寺 075−461−1155
神護寺 075−861−1769
西明寺 075−861−1770
高山寺 075−861−4204
京北地方振興局 
          0771−52−0229
ウッディ京北
          0771−52−1700
美山町役場産業振興課 
          0771−75−0310
かやぶきの里 民俗資料館 
          0771−77−0587 
美山町自然文化村・河鹿荘
          0771−77−0014
大野ダム公園虹の湖パターゴルフ場
          0771−75−0991
            (土・日・祝に開設)