月〜金曜日 18時54分〜19時00分


新宮(8/14)、特選・涼を求めて(8/15〜)

 8月14日は熊野川が“川の熊野古道”として世界遺産に登録され脚光を浴びる新宮を紹介。8月15日からはこれまでに放送してきた中から選りすぐりの映像をお届けする。今週は暑い季節にこそ訪ねてみたいとっておきの納涼スポットをご案内。 


 
川の参詣道(新宮市) 放送 8月14日(月)
 和歌山県と三重県の境を流れる熊野川は、熊野本宮大社から熊野速玉大社へと下る「川の熊野古道」。平成16年(2004)「紀伊山地の霊場と参詣道」がユネスコの世界遺産に登録されたが、川が世界遺産に登録されたのは、非常にめずらしいこととされている。熊野川は紀伊山地の大峰山系を源流としや、奈良、和歌山、三重の3県を流れ熊野灘にそそぐ延長183kmの河川。
 熊野詣の参詣道としての役割を果たしたほか、陸路の道路が整備されるまでは、熊野川筋の木材を筏に組んで新宮まで運んだ筏流しや、沿岸住民の生活物資を運ぶ水運の動脈でもあった。

熊野川舟下り

(写真は 熊野川舟下り)

熊野速玉大社

 この雄大な熊野川の景観を楽しんでもらおうと3月から11月まで観光用の川下りの舟が出て、悠々たる流れ、両岸に迫る緑の山々、そして釜石、骨島、釣鐘石、弁慶の足跡、亀島、昼島などの奇岩、怪石を眺めながら熊野速玉大社を目指すことができる。
 熊野川は聖なる川として信仰の対象になっていた。熊野本宮大社は元は大斎原(おおゆのはら)とよばれる川の中洲に社殿があった。熊野速玉大社も河口付近に鎮座し、本宮大社とともに洪水鎮圧の役目を担っていたと考えられる。

(写真は 熊野速玉大社)

 熊野速玉大社の「速玉」と言う言葉は「玉を転がすように速い流れ」を意味し、熊野川との関係をうかがわせる。毎年10月16日の御船祭は、神霊を神輿に乗せた神幸船が熊野川を遡り、お伴の早船9隻が御船島を回る競漕をする秋祭で、熊野川を聖なる川として崇めている。
 速玉大社は天皇、上皇、将軍など有力者の崇敬を集め、これらの崇敬者から奉納されたおびただしい数の宝物が今に伝わっており、熊野神宝館で一般公開されている。中でも国宝の「彩絵檜扇(さいえひおうぎ)」は、27枚の檜の板に金銀の箔を貼り、山水花鳥の絵が描かれた見事なもので、10握の檜扇が保存されている。

彩絵檜扇

(写真は 彩絵檜扇)


 
京の奥座敷 放送 8月15日(火)
 京都市の最北部にあり東の鞍馬山、西の貴船山の間を流れる貴船川の清流沿いは、水をつかさどる神が宿り、その水をかん養する緑深い森林が続いている。そこには自然から発せられる神気が感じられ、神秘的で厳かな雰囲気がある。
 一方では京の奥座敷の異名があるように、京の人びとは蒸し風呂のようになる京の町の暑さを逃れ、貴船川の清流に涼を求めてやってくる。

ひろや

(写真は ひろや)

鮎の塩焼き 石庭盛り

 京都の市街地より気温が5、6度も低くその涼しさは格別である。貴船に初夏が訪れる5月になると貴船川に沿って軒を連ねる18軒の料理旅館や料理店が一斉に、冷たいせせらぎの上に名物の貴船の川床をしつらえ、納涼客を迎える。
 清流の流れからの冷気が川床を吹き抜け、天然の冷房で真夏でも暑さ知らずである。浴衣姿でこの川床でくつろぎ、それぞれの料理店や料理旅館が趣向を凝らして作る川床料理とビールの味は、筆舌では言い表せないものだと常連の食通は言う。

(写真は 鮎の塩焼き 石庭盛り)

 カジカが鳴き、ホタルが飛び交う清流の川床でいただく料理で旬の味が満喫できる。鴨川、貴船川で捕れる天然アユの塩焼き、夏の京都には欠かせないハモ料理などが、見た目にも涼しげなきれいな器に盛られたり、氷を削って造られた氷鉢に盛られ涼しさをさらに感じさせる。ほかに山菜料理、冷たい流しそうめんなど、貴船ならではの川床料理が並ぶ。真夏の京でこれに勝るぜいたくはないと言えよう。
 川床料理は昼と夜に分かれ、家族連れやグループで気軽に利用できる。値段は1万円前後からあり、それぞれ予約が必要なので、貴船神社内にある貴船観光会に問い合わせれば予算に合わせた店を紹介してくれる。

鯉のあらい 鯛のつくりの氷鉢盛り

(写真は 鯉のあらい 鯛のつくりの氷鉢盛り)


 
ロマンティックナイトシーン 放送 8月16日(水)
 神戸港やその周辺の景色は太陽が輝く昼間も十分魅力的だが、街に灯りがともるころになるとグーンと輝きを増し、ロマンの香りを強く放ち始める。昔から「百万ドルの夜景」と言われた神戸の夜の顔である。
 特に暑い夏には、夕涼みがてらに神戸の夜景を楽しむのは、暑さでたまったストレス解消には最良の方法ではないだろうか。今回は神戸港を中心に輝く神戸のナイトシーンをスケッチしてみた。まだまだ他に素晴らしい夜景のスポットがあるので探索してみるのもよい。

メリケンパーク

(写真は メリケンパーク)

ハーバーランド

 夜の神戸港周辺のベイエリアは、きらびやかに輝く。メリケンパークのライトアップされた神戸ポートタワーや帆船をイメージした神戸海洋博物館は素晴らしい眺めである。ハーバーランドも輝いており、モザイクガーデンの大観覧車やモザイクの商店街もその存在感を誇示している。港に停泊する豪華客船の姿も美しい。ポートアイランドをつなぐ神戸大橋の夜の姿も力強さの中にしなやかさを感じさせる。
 こうした夜のベイエリアをそれぞれの対岸から眺めるのが手軽な方法だが、クールーズ船でディナーと夜景を楽しみながらの夜のクルージングは満足感でいっぱいになる。

(写真は ハーバーランド)

 海からのナイトスケッチから一変して、山から眺める夜の神戸もやはり捨てたものではない。宝石をちりばめたような六甲山山頂からの神戸市街地や神戸港の眺めは定評だが、もう少し間近で神戸の夜景を楽しめる絶好のスポットがヴィーナスブリッジだ。
 諏訪山公園内の遊歩道に架けられた歩道橋兼展望台がヴィーナスブリッジ。目の前に広がる市街地のネオンやビルの窓の灯り、街灯の光り、道路を流れる車のライトの眺めはいつまで眺めていてもあきない。遠く淡路島や関西国際空港の灯りもキラキラと輝いている。若いカップルの夏のデートスポットでもある。

神戸大橋

(写真は 神戸大橋)


 
奈良町の夏 放送 8月17日(木)
 奈良町には季節の風情を織りなす特産品の蚊帳(かや)や奈良団扇(うちわ)を作り続けている老舗が健在だ。昔ながらの伝統技法を受け継ぎ、丹精を込めた手作りの品には匠の技と愛情が込められている。
 軒に「蚊帳」の看板を掲げる格子の家は、大正10年(1921)創業の蚊帳の専門店・吉田蚊帳会社。蚊帳はかつては奈良県の特産品で60%以上の全国シェアを占めていた。蚊帳は古くは貴人たちのもので、庶民にまで普及したのは江戸時代初め。当時、奈良ではまだ蚊帳の生産はしておらず、明治初め奈良で綿蚊帳の生産が始まり、明治30年(1897)ごろから奈良の蚊帳が全国で主流になり、日本の夏の必需品となった。

吉田蚊帳

(写真は 吉田蚊帳)

奈良団扇

 近年、生活様式の転換で見向きもされなくなっていた蚊帳だが、健康と快適さを大切にしたり、蚊帳の風情を見直し、蚊帳のある夏の生活を取り戻している人たちがいる。「昭和30年代に全盛だった蚊帳が最近売れ始めたが、主力商品にまではまだまだ」と吉田社長。同社では蚊帳の生地を使ったのれんやタペストリー、コースター、ランチョンマット、テーブルクロス、ならまちふきんなどを売り出し、奈良町らしい土産品として人気を集めている。
 もうひとつ、夏の風物詩で奈良ではのものが奈良団扇。団扇の起源は古く、紀元前3世紀以前の中国・周の時代に存在していた。涼を取るだけでなく、祭礼などの儀式用や貴人や女性が顔を隠すための道具でもあり、高松塚古墳の壁画にも描かれている。日本には奈良時代に伝わり、奈良・正倉院の御物などに見られる。

(写真は 奈良団扇)

 奈良団扇の起源は春日大社の神職が内職で作った渋団扇。透かし彫りが入った奈良団扇が登場したのは江戸時代に入ってからと言われ、現在、奈良団扇を作っている唯一の専門店が「池田含香堂」。
 きれいに染め抜いた和紙を20枚重ね、正倉院宝物の天平模様や鹿が遊ぶ模様を型写しして、細い小刀で模様を切り抜く。この和紙を竹の骨に貼り合わせると透かし彫りが浮き出した団扇になる。「すべての工程が細心の神経を使う手作業で気が抜けない」と4代目当主・池田繁さんは言う。こうしてでき上がった奈良団扇は、実用品でありながら優雅な趣が漂う芸術品でもあり、こちらも奈良観光の土産品として人気が高い。

池田含香堂

(写真は 池田含香堂)


 
滝・滝・滝 放送 8月18日(金)
 赤目四十八滝は落差の大きいもの、小さいもの、幅の広いもの、狭いもの、流れの力強いもの、優しいものと規模も形状もそれぞれ異なり、奥に進むにつれて壮観な姿になり、千変万化の顔を見せてくれる。あえて必見の滝をあげれば、赤目五瀑と言われる不動滝、千手滝、布引滝、荷担(にない)滝、琵琶滝。
 赤目四十八滝の散策も後澗(ごかん)と呼ばれる後半から終盤の滝にはいり、滝の景観を満喫しながらさまざまに変化する渓谷美や巨岩、奇岩を目にしながら歩を進めることになる。

荷担滝

(写真は 荷担滝)

雛壇滝

 数段の小瀑を集めた水が高さ8mの巨岩の両脇に分かれて流れ落ちてゆく荷担(にない)滝は、赤目のシンボル的存在である。荷を担っているような形からこの名がついたが、荷担滝の前方の高いところから見ると、荷担滝のすぐ上にもうひとつ滝があり、三滝二淵の滝の景観は赤目随一と称賛する人が多い。
 流れ落ちる二つの滝が途中で結び合うように合流する夫婦滝、その奥に幾段にもなった岩を流れ落ちるのが雛壇(ひなだん)滝。さらに滝の音が琴の音に似ている琴滝、琵琶の形に似た琵琶滝、そして赤目四十八滝の最後の滝の岩窟滝にたどり着く。高さ7mの岩窟滝は滝の中腹に深い石穴があることからこのように呼ばれた。

(写真は 雛壇滝)

 滝、滝、滝の赤目四十八滝の景観と滝川の清流、赤目渓谷を取り囲む新緑の木々、緑深いこずえから聞こえる野鳥のさえずり、川面からはカジカの鳴き声、川のほとりや樹間には可憐な野草の花、まさに最高の自然のもてなしを受けての散策は終わる。散策を終えて赤目四十八滝の入り口に戻ると、温泉の湯で疲れを癒すことができる。
 赤目温泉・対泉閣では入浴だけもOKなので、温泉の湯ぶねで疲れと汗を流すハイカーが多い。川魚料理や伊賀肉料理、秋にはマツタケ料理などを湯上がりに楽しむこともできる。

琵琶滝

(写真は 琵琶滝)


◇問い合わせ先◇
熊野速玉大社0735−22−2533
熊野川川舟センター0735−44−0987
料理旅館ひろや075−741−2401
吉田蚊帳0742−23−3381
池田含香堂(奈良団扇)0742−22−3690
赤目四十八滝渓谷保勝会0595−63−3004
赤目温泉・対泉閣0595−63−3355

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