月〜金曜日 18時54分〜19時00分


京都市、南丹市 

 平成17年(2005)4月に京都市と合併するまでの京北町と京都市北区中川地区は、北山杉を中心とする銘木の産地・林業の里。平成18年(2006)1月に合併して南丹市となった美山町は、茅葺き屋根の建物が数多く残るかやぶきの里。今回はこの二つの山里を訪ねた。


 
林業の里(京都市京北)  放送 1月29日(月)
 京都市の北西部・周山街道をたどって行き着く左京区京北地区は合併前の旧桑田郡京北町。標高600〜700mの高原の森林地帯で、杉、桧、松などの木材が豊富に産出され、古くから京の都、さらには大阪へ建築用材や薪を供給してきた林業の里である。
 この地方の林業の歴史は長岡京、平安京造営の時代にまで遡る。室町時代中期以降は茶の湯の流行によって茶室や数寄屋造が盛んになり、良質の北山杉の需要が高まった。

北山杉

(写真は 北山杉)

北桑木材センター

 天正年間(1573〜92)には仙洞御所の茶室に用いられた北山杉が、朝廷の御用木となった。数寄屋造の代表建築である桂離宮や修学院離宮にも使われ、文化遺産として銘木の価値を発揮している。
 林業の里・北山で伐採された北山杉などの銘木は、かつては筏に組んで大堰川(桂川)を嵯峨、嵐山を経て京の町中へ運ばれてきた。こうした木材を扱う商人が集まっていたのが、京の町の「丸太町」であり「木屋町」であった。戦後は道路が整備され、トラック輸送が筏流しに取って代わった。

(写真は 北桑木材センター)

 林業の里・京北に森林と林業、木製品を紹介する「ウッディー京北」がある。この施設は森林と人間の生態学的関係や森林を育む林業への理解を深めるためにオープンした。館内は「木に触れ、木と遊び、木と休み、木を学び、木が買える空間」として家族連れで楽しめる。
 館内中央に林業の里の象徴木・櫓(やぐら)杉がドッシリと座っている。展示コーナには造林から伐採、製品化までの過程や林業の歴史がパネルなどで展示され、販売コーナーには特産品の木製品や木工品が並んでいる。

ウッディー京北

(写真は ウッディー京北)


 
北山杉の里(京都市北山、京北)  放送 1月30日(火)
 京都市北区の中川地区から合併前の京北町にかけては銘木・北山杉の生産の中心地で、山の斜面に天に向かって真っすぐに伸び、整然と立ち並ぶ美しい杉木立の風景が見られる。
 北山杉は古くは長岡京や平安京の造営に深く関わったとも言われるが、室町、桃山時代から盛んになった茶の湯の文化の起こりと共に、北山杉の需要が増大しそのその生産が盛んになった。今も京都市内をはじめ関西地方の凝った木造建築には北山杉が使われ、床柱などがその美しさを誇っている。

皮むき

(写真は 皮むき)

北山丸太

 茶室などの数寄屋建築や日本建築の座敷の床柱に使われる杉丸太は、真っすぐでひとつの節や傷があってはならない。さらに丸太の肌にしわのある「シボ杉」と言うのが最高級品の床柱とされている。
 このシボは本来、自然にできた表面のしわだが、最近は人工的にしわを作るようにもなった。しかし最高級の床柱は「天然シボ」と言われ、こうした床柱は高値で取引される。床柱には杉丸太のほかにサルスベリや漆塗りの角柱、皮つきの赤松などがあるが、やはり杉白木の天然シボが最高の贅沢だとされている。

(写真は 北山丸太)

 こうした最高級の床柱に加工される北山杉を生産するには、植林から伐採までの育林、伐採後の手作業による丁寧な仕上げが欠かせない。
 真っすぐな北山杉から苗木用の穂を採って挿し木する。植林後は下草刈り、枝打ちを何回も繰り返し、節のない真っすぐな木に育てる。その作業はわが子を育てるような慈しみ方である。樹齢30〜40年で伐採され、外皮を取り去って白木丸太にし、これを砂を使って磨き上げ乾燥して仕上がる。この人手をかけた作業は今も昔も変わらない。

初市(京北銘木生産協同組合)

(写真は 初市(京北銘木生産協同組合))


 
かやぶきの里(南丹市美山町)  放送 1月31日(水)
 市町村合併によって昨年から南丹市の一行政区となった旧美山町だが、その名の通り標高800〜900m級の美しい山々に囲まれ、豊かな自然に恵まれた山あいの町である。
 日本海へと流れ行く由良川に沿う集落の中で約250棟は、昔ながらの茅葺きの民家である。その中でも地元の人たちが北村と呼ぶ北地区は、50戸のうち38棟が茅葺き屋根の建築で、日本の原風景とも言うべき「かやぶきの里」として知られ、訪れる人も多い。

北地区

(写真は 北地区)

茅場

 岐阜県白川村の白川郷、福島県下郷町大内宿に次いで、日本で3番目に茅葺き屋根の建物が多い北村は、平成5年(1993)に国の重要伝統的建造物群保存地区に選定され、全国に知られるようになった。
 北村の茅葺き家屋のうち江戸時代中期の寛政8年(1796)に建築されたものが最も古く、約半数が江戸時代のもので、北山型民家の特徴をよく伝えていると言う。山仕事が生活の糧だったこの地区では、建物の建材から屋根を葺く茅まで地元で調達し、自然の恵みを受けて自分たちの手で茅葺き屋根の建物を守ってきた。

(写真は 茅場)

 北村地区では「かやぶきの里保存会」を組織して、地域の各種団体と連携しながら歴史的景観の保全と地域住民の生活維持を両立させることを目指している。また保存会は200年前に建てらた茅葺き民家を活用して「民俗資料館」をオープン、当時の生活様式や茅葺き屋根の建物の構造を紹介している。
 さらに村人が出資して「有限会社かやぶきの里」を設立し「お食事処きたむら」「北村きび工房」「民宿またべ」「お土産処かやの里」「かやぶき交流館」を運営し、かやぶきの里を訪れるひとたちにくつろぎの場を提供している。

美山民俗資料館

(写真は 美山民俗資料館)


 
ふるさとの味(南丹市美山町)  放送 2月1日(木)
 かやぶきの里・北村では、村人が出資して設立した「有限会社かやぶきの里」が、かやぶきの里の景観保全と訪れる人びとを温かく迎え、喜んでもらうためにいろいろな事業を展開している。
 その中の活動のひとつが「北村きび工房」。この工房の狙いは、昔ながらの素朴なふるさとの味を提供し、来訪者には喜んでもらい、地域の若い世代にその味を継承していくことにある。工房では目の前の田んぼで収穫した餅米、キビ、アワ、そしてヨモギなどを材料におばちゃんたちが餅や団子を手作りしている。

北村きび工房

(写真は 北村きび工房)

民宿またべ

 現代っ子たちはキビとかアワを知らない人が多く、食べた人はほとんどいないだろう。飽食時代の今、キビやアワが健康食品として注目されており、手摘みのヨモギは野山の懐かしい味と香りがいっぱい。
 これらの材料を使って三彩もち、切り餅、三色だんご、キビ・ソバまんじゅうなどが手際よく作られている。作業するおばちゃんたちは喜々とした表情でだんご作りなどを楽しんでいる。こうした餅や団子はなかなかの人気で、リピターやネット販売を利用する人もいる。

(写真は 民宿またべ)

 有限会社かやぶきの里経営の民宿「またべ」は茅葺き屋根の民家の座敷をそのまま使って客室とし、有機栽培の新鮮な野菜などを食材にした家庭料理が、囲炉裏を囲んでいただけるなど、素朴で温かいもてなしが喜ばれている。民宿を切り盛りする中野弘子さんの指導のもとで、旅人たちが野菜の煮漬けや鯖すしなどの田舎料理作りにも挑戦できる。このほか村民が経営する「とみ家」「久や」などの民宿もある。
 民宿では季節に合わせて春は山菜料理、夏は鮎料理、秋はまつたけ料理、冬はぼたん鍋などの特別料理も注文に応じている。

鯖すし

(写真は 鯖すし)


 
布で描く山里の四季
(南丹市美山町) 
放送 2月2日(金)
 美山町の「日本の原風景」に魅せられて、他の土地から美山町に移り住んできた人が多い。布絵ギャリー・洛詩舎の市川想人(そうじん)さんもそのひとりで、10年間も美しい美山町へ通った末に、平成14年(2002)明治時代末ごろに建築された古い民家に引っ越してきた。
 市川さんは京都市の染色メーカーに勤めながら色紙に貼る布絵を独学で始めた。昭和63年(1988)に勤めを辞め、本格的に布絵に取り組むようになった。

布絵ギャラリー洛詩舎

(写真は 布絵ギャラリー洛詩舎)

春

 京都市山科区に工房を設け、染色メーカーなどの協力を得て様々な色や柄、織り方の異なる布地を集めた。化学繊維は独特の光沢があり、毛の布は虫がつくので布絵には向かず、すべて絹の布地を使う。集めた布地は何万種にもおよぶと言う。
 布絵は絵具を一切使わず、京友禅の多彩な色の絹地を細かく裂いたり、よったり、糸状にほぐしたりしたものを立体的に貼りつけていく画法。まず、原画のスケッチから始め、このスケッチ画をボードに描いて遠景から布を貼っていく細かな手作業の連続である。

(写真は 春)

 美山町に移り住んでからは美山の日本の原風景が制作の中心画題。市川さんの制作のポイントは遠近感や四季の色合いを出して、実在の場所をリアルに描くことだと言う。こうして布絵に描き出された美山の春夏秋冬は、他の絵画には見られない風合いがある。これらの作品は洛詩舎に展示されている。
 美山町に移り住んだ市川さんは「霧の中の自然がきれいで、月がこんなに明るいことも知り、画題にはこと欠かない。美山町に骨を埋めるつもりです」と言うほどの惚れ込みようだ。

秋

(写真は 秋)


◇あ    し◇
ウッディー京北JR京都駅からJRバスで周山下車徒歩5分。 
北山杉資料館JR京都駅からJRバスで北山グリーンガーデン前下車。 
美山町・かやぶきの里JR京都駅からJRバスで周山下車、南丹市営バスに乗り換え
北下車(途中乗り替えあり)。               
JR山陰線園部、日吉駅から南丹市営バスで北下車
(途中乗り替えあり)。
JR山陰線和知駅から南丹市営バスで北下車
(途中乗り替えあり)。
◇問い合わせ先◇
ウッディー京北0771−52−1700 
北山杉資料館075−406−2241 
京北銘木生産協同組合0771−52−0490 
美山町観光協会0771−75−1906 
有限会社かやぶきの里0771−77−0660 
民俗資料館0771−77−0587 
北村きび工房0771−77−0378 
民宿・またべ0771−77−0258 
布絵ギャラリー・洛詩舎0771−77−9051 

◆歴史街道とは

    関西は「歴史・文化の宝庫」として世界に誇れる地域です。歴史街道では、日本の歴史文化の魅力を楽しく体験し、実感できる旅のルートとエリアを設定しました。伊勢・飛鳥・奈良・京都・大阪・神戸といった主要歴史都市を時代の流れに沿ってたどる「メインルート」と各地域の特徴をテーマとして活かした3つの「ネットワーク」です。

 

    歴史街道計画では、これらのルートを舞台に
  「日本文化の発信基地づくり」
  「新しい余暇ゾーンづくり」
  「歴史文化を活かした地域づくり」

    の3つの目標を掲げ、その実現を目指しています。

 

◆歴史街道倶楽部のご紹介

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