月〜金曜日 18時54分〜19時00分


大阪 京都の正月支度

 初詣客を迎える各地の社寺では大掃除や破魔矢、お守り、縁起もの作りなどの迎春準備に大わらわ。スーパーなどの店頭には各家庭の玄関を飾るしめ飾りも顔を出す。こうした迎春準備に追われる寝屋川市の成田山大阪別院と京都市の雲上流造花の工房を訪ねた。


 
成田さんの歳末(寝屋川市) 放送 12月24日(月)
 初詣客の多さでは関西でも有数のお寺として知られ、地元では「成田さん」とか「成田山不動尊」と呼び親しまれている成田山明王院は、千葉の大本山成田山新勝寺の大阪別院として昭和9年(1934)大阪の表鬼門に当たる寝屋川市に建立された。
 初詣客をきれいな境内、本堂へ迎えようと僧侶、職員らが総出で大掃除などに励んでいる。特に本堂は毎日数回行われる護摩祈祷で焚かれる火で、天井などにススがいっぱい溜まっている。畳を上げて外へ出してほこりたたき出し、天井などのススを竹竿の先につけた笹で落とし、本尊の不動明王像は手でていねいに拭きとられた。

成田山大阪別院 明王院

(写真は 成田山大阪別院 明王院)

本尊 不動明王

 本山の成田山新勝寺の本尊・不動明王像は、嵯峨天皇の勅命で弘法大師が自ら刻んだとされている。天慶2年(939)平将門が反乱を起こした時、朱雀天皇の命を受けて寛朝大僧正が、不動明王とともに関東に下り「将門降伏」の祈祷を行った。やがて将門は討死にして反乱は平定され、霊験あらたかな不動明王像はそのまま成田市の新勝寺に安置され現在にいたっている。
 関西の信者たちが大阪への別院建立を本山に願い出た。京阪電鉄が敷地と本堂を寄進して不動尊の分霊を祀り、和歌山県岩出市の根来寺の塔頭・明王院を移し、念願の大阪別院が創建された。

(写真は 本尊 不動明王)

 関西で成田さんと言えば交通安全祈願でも有名で「成田山不動尊 交通安全祈願車」のステッカーを貼ったり、車のナンバーを入れた成田山の「お守札」をつけたマイカーが多く、年間20万台もの自動車が祈願に来ると言う。最初は車両故障が起きないようにとの祈祷が、今は交通事故防止の願いとなり、年末には地方へ帰省する車、新年には関西へ帰省してきた車がドッと押し寄せる。
 本尊の不動明王の霊験を授ける護摩祈祷が毎日5回行われている。この護摩祈祷は人間の煩悩を現す護摩木を、不動明の知恵の炎で焼きつくすと言う真言密教の秘法で、護摩祈祷を受けた人には護摩札が授けられる。

交通安全祈祷殿

(写真は 交通安全祈祷殿)


 
招福の心・雲上流造花
(京都市)
放送 12月25日(火)
 日本人なら誰しも来る年に福を授かるようにと、年末には縁起飾りのひとつも用意する。門松やしめ飾りもそのひとつである。
 京都御所の南、有職雲上流造花・村岡松華堂の村岡登志一さん方の工房は、年中行事のひな祭りや端午の節句の飾り、料亭の室内装飾、巫女さんの簪(かんざし)など、さまざまな造花を注文に応じて伝統の技法で製作している。今は正月飾りの製作作業が最後の追い込みに入っている。

造花製作

(写真は 造花製作)

日陰蔓(ひかげのかづら)

 雲上流造花による正月飾りと言えば、神の使いである尾長鶏を模した「掛蓬莱」が代表的な造花飾り。村岡さんの工房では妻の富枝さんと二人で、今その作業が続けられている。
 生糸を村岡さんが緑色に染め、丹念に松葉に仕上がる。梅の花や竹笹も同じようにひとつひとつ丹精込めて作られて松竹梅ができる。熨斗(のし)に水引、稲穂と言った縁起のよいものを組み合わせ、天照大神が籠もった天岩戸の前で踊った天鈿女命(あめのうずめのみこと)が、頭を飾っていたと言う「日陰かづら」を使ってできあがった「掛蓬莱」は、平安時代から伝わる京の雅を感じさせる正月飾りである。

(写真は 日陰蔓(ひかげのかづら))

 こうした造花の正月飾りは平安時代に公家の家で飾られていた。神棚や戸口に掛ける掛蓬莱のほかに長寿延命を祝った蓬莱台、一年の幸福を願った宝船などがある。
 平安時代には京都から遠く離れた地方でもこうした造花の正月飾りを飾っており、各地の国府などに派遣されていた役人たちが、京都の雅な正月を思い出して飾ったと言う。移り変わりの激しい現代、バーチャルな世界を創出するデジタル時代の昨今では、こうした伝統の習慣が忘れられたり敬遠されがちだが、正月を日本に伝わる雅な飾りで祝うことで心に余裕が生まれるかも知れない。

掛蓬莱

(写真は 掛蓬莱)


◇あ    し◇
成田山大阪別院(成田山不動尊)京阪電鉄香里園駅下車徒歩15分。
京阪電鉄寝屋川市駅又は香里園駅から
京阪バス成田不動尊前下車すぐ。
有職雲上流造花・村岡松華堂京阪電鉄丸太町駅下車徒歩10分。
地下鉄烏丸線丸太町駅下車徒歩10分。
◇問い合わせ先◇
成田山大阪別院(成田山不動尊)072−833−8881
有職雲上流造花・村岡松華堂075−211−0732

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