月〜金曜日 18時54分〜19時00分


奈良市 

 「奈良にうまいものなし」と言われてきたが、最近は食文化、食生活の多様化に加え、観光客も多様化してきたことに対応しようと、創意工夫を凝らした店が増えてきた。ガイドマップなどを頼りにこまめに歩けば、奈良にもうまいものを食べさせてくれる所がいくつも発見できる。今回はこうした店の一部を紹介した。


 
茶がゆ・塔の茶屋  放送 3月17日(月)
 古来、奈良は茶どころであったことから「大和の茶がゆ」と言われるように、大和の人たちは昔から身近な日常食として、朝夕に茶がゆを食べてきた。お年寄りの中には今も毎日茶がゆを食する人がいる。
 「大和の茶がゆ、京の白かゆ、河内の泥食い」と言われたように、大和では茶を入れて炊き、京都では何も入れない白いかゆだが、いずれもさらさらとしている。これに対して河内では泥のように固く炊くと言われ、かゆの炊き方にもそれぞれの土地によって異なる。

塔の茶屋

(写真は 塔の茶屋)

茶がゆ弁当

 近年、奈良の人たちの食生活もすっかり変わり、若い人たちはほとんど茶かゆを食することがなくなった。興福寺五重塔のすぐ東の「塔の茶屋」の当主は、食の世界でも温故知新の気持ちが大切で、昔の食事を知って新しい食事を見つけ出してもらおうと、茶がゆを奈良のご馳走として提供している。
 茶がゆに甘酒の食前酒、茶豆腐、吸い物、ワラビ餅、季節の品(小タイ、柿の葉寿司など)がついた茶がゆ弁当(3150円)が、手軽に茶がゆが味わえると人気。ほかに茶がゆミニ懐石(6300円)、茶がゆ懐石(8000円)がある。

(写真は 茶がゆ弁当)

 塔の茶屋の茶がゆの作り方は、米を10分ほど炊き、大和茶の粉末を布袋に入れて一緒に炊きあげ、椀によそったかゆに玉露の粉末をかけて仕上げる。かゆに入れる茶は煎茶、ほうじ茶、番茶のどれでもよい。大和の茶がゆはそれぞれの家庭で炊き方や味付けが異なり、独自の味を家伝にしている。
 僧侶の食事にはかゆがよく出されるが、東大寺など奈良の寺院でも昔から茶がゆが用いられてきた。厳寒の中で東大寺二月堂のお水取り(修二会)の行をする練行衆の食事には茶がゆが用意され、修行で冷えた体を温める大切な食事である。

興福寺権少僧都書状

(写真は 興福寺権少僧都書状)


 
惣菜料理・馬の目  放送 3月18日(火)
 メインストリートからはずれた通りをこまめに歩くと古都・奈良にも隠れた味処がある。春日大社参道のひとつ南側の鷺池へと続く道沿いにある総菜料理の「馬の目」もそうした一軒と言える。
 季節の野菜や魚など旬の素材を生かしたヘルシーな総菜料理が自慢の店。昼は定食(3500円)のみで、季節の彩りが豊かなミョウガ、ムカゴ、キノコなどが入ったまぜご飯は好評。それに自慢の胡麻豆腐、煮物の鉢物などの総菜4品に吸い物、香の物、デザートがつく。

馬の目

(写真は 馬の目)

春食材のぬた

 夜は予約制による懐石料理(8400〜13650円)のみになる。落ち着いて食事ができる個室もあり、奈良観光の疲れを癒しながらの食事が楽しめる。
 この付近は春日大社神域の南側にあたり、奈良公園の芝生の中に鷺池と浮御堂、荒池などがある静かの所。古風な建物が周囲の雰囲気にとけ込み、店内には馬の目皿がずらりと並んでいるほか、店内の調度品もアンティークなもので統一され、落ち着いたムードになっている。

(写真は 春食材のぬた)

 変わった店名の「馬の目」は蒐集された馬の目皿に因んでいる。馬の目皿はかつて江戸時代後期に瀬戸で盛んに焼かれ、グルグルと描かれた渦巻き文様が馬の目に似ているところからそのように呼ばれた。
 渦巻きの丸の数や目玉の大きさなどがそれぞれ異なり、これらの違いがコレクターの関心を集める。幕末には日用雑器として数多く出回ったが、明治時代になって使われなくなった。大正時代になると民芸品志向が高まり、再び脚光を浴びて瀬戸で皿や湯のみ、マグカップなどの複製品が作られている。

馬の目皿

(写真は 馬の目皿)


 
おつけもの御膳・あしびの郷  放送 3月19日(水)
 奈良漬こそが文字通り奈良が生んだ味。奈良時代に奈良酒が醸造されるとともに、酒粕を使った粕漬も生まれたと言われている。
 そして400年前の江戸時代初期の慶長年間(1596〜1615)に、現在の近鉄奈良駅北側の中筋町に住んでいた糸屋宗仙と言う町医者が、その粕漬を「奈良漬」と名付けて売り出したのがブランド名の始まりで、以来、漬物の定番として全国に知られている。

奈良漬

(写真は 奈良漬)

あしびの郷

 最近は漬物も速成品や添加物で味付けしたものが出回るようになり、本来の味が失われてきたと漬物愛好家を嘆かせている。奈良漬本来の伝統を守っていると自負しているあしびや本舗は、奈良漬の色合い、歯切れ、香気、うま味、甘味、後味、酒精のきいたやや辛口の良品を、じっくり時をかけて漬け込んでいる。
 奈良漬のほかに豊富な素材で奈良漬の技を生かした漬物も作っており、昔懐かしい古漬からサラダ感覚の新作まで色とりどりの漬物が店頭に並んでいる。

(写真は あしびの郷)

 古い町並みが残る奈良町のあしびや本舗奈良町本店敷地内のあしびの郷の「おつけもの御膳(1260円)」は、旬のお漬け物がおいしくいただけると人気が高い。10品ほどの漬物の味を引き立たせるために米、味噌、茶にいたるまで食材を吟味して料理している。
 食事をする場所も雰囲気の異なった座敷、水の流れる庭、蔵座敷、サロンなどが用意されており、好みの場所が選べる。サロンはコンサートや後援会などのイベント会場としても提供されている。

おつけもの御膳

(写真は おつけもの御膳)


 
饅頭の発祥の地  放送 3月20日(木)
 近鉄奈良駅西のやすらぎの道を少し南へ歩を進めると漢国(かんごう)神社がある。飛鳥時代の推古天皇元年(593)創建と伝えられ、神社名から渡来神をイメージするが、祭神は日本古来の大物主命(おおものぬしのみこと)、大己貴命(おおなむちのみこと)、少彦名命(すくなひこのみこと)の三神。
 漢国神社本殿右の境内社・林(りん)神社は、日本の饅頭の祖神と言われる林浄因命を祀っており、全国の菓子業者の信仰を集めている。

林神社

(写真は 林神社)

林浄因肖像図

 祭神として祀られている林浄因は中国浙江省西湖の人で、中国に留学していた建仁寺の龍山禅師が、南北朝時代の暦応4年(1341)帰国する時に一緒に来日、奈良に住んで日本で初めて饅頭を作り、その製法を多くの人びとに教えて饅頭を日本に広めた。わが国で初めてあんを包んだ菓子として重宝がられ、奈良饅頭として人気を博した。
 境内には紅白の饅頭を埋めたと言われる饅頭塚があり、石で形取った饅頭が置かれている。浄因の命日に当たる4月19日の例大祭には、全国の菓子業者が参拝して饅頭祭が盛大に行われる。

(写真は 林浄因肖像図)

 奈良饅頭を作るようになった浄因は、師の龍山禅師のもとへ饅頭を持参してたびたび訪れていたが、その饅頭が足利将軍の目に留まり、さらに宮中に献上されるようになって饅頭屋を営んでいた林家は大いに繁栄した。
林家の子孫は江戸へも出て「塩瀬」の屋号で饅頭屋を開業、今も塩瀬総本家として営業している。
 奈良の老舗菓子舗の千代之舎竹村は、伝統の奈良饅頭を作り続けている。小豆こしあん入り饅頭には「林」の文字、白小豆こしあん入りの饅頭には鹿の絵の焼き印がおされ、その素朴な形と甘さは、奈良饅頭の原点を感じさせる。

奈良饅頭(千代の舎 竹村)

(写真は 奈良饅頭(千代の舎 竹村))


 
奈良町の甘味処  放送 3月21日(金)
 古くは元興寺の境内で、江戸時代からの格子戸の民家や商家が多く残る奈良町は、十数年前から観光客の人気がぐんぐん高まり、人通りも多くなった。
 また観光客も修学旅行の中、高校生から若者、中高年と幅が広がってきた。ことに奈良町は女性の姿が目立つようになり、彼女たちが喜びそうな和風のスイーツの店が、それぞれ工夫を凝らした創作品を作って競い合っている。店の構えも古い民家を活用して奈良町にとけ込んでいる。

御菓子司 なかにし

(写真は 御菓子司 なかにし)

「庚申さん」(御菓子司 なかにし)

 御菓子司「なかにし」は店主が、饅頭発祥の地に恥じない知恵を絞った創作和菓子を作り、観光客らを楽しませている。庚申信仰から生まれ、奈良町のシンボルとなっている猿の縫いぐるみの「身代わり猿」を形取った「庚申さん」は、鮮やかな紅白の色がきれいな生菓子の身代わり猿。
 大和茶、小豆、白のだんごを笹の葉で包んだ三色の「奈良だんご」は、笹の葉を皿代わりに歩きながらでも食べられると人気。ほかに奈良町に因んだ数多くの創作菓子を作り出している。

(写真は 「庚申さん」(御菓子司 なかにし))

 Cafe・茶香庵の「寧楽(なら)パフェ」は、大和茶のアイスクリーム、ゼリー、大和柿、奈良名産の黒米あられなど大和産の材料にこだわって仕上げている。ほかに茶香パフェ、抹茶わらび餅、白玉あんみつなど若い女性が喜びそうなメニューがいっぱい。
 和風居酒屋を改装した店内の雰囲気も落ち着いている。店内に置かれた小物は落ち着いた雰囲気を作りに一役買い、客の心を和ませている。脱サラの若い女性店主も手作りのパフェ作りなどを自ら楽しんでいる。

「寧楽パフェ」(Cafe 茶香庵)

(写真は 「寧楽パフェ」(Cafe 茶香庵))


◇あ    し◇
茶粥・塔の茶屋近鉄奈良線奈良駅下車徒歩7分。
JR関西線奈良駅下車徒歩10分。 
惣菜料理・馬の目近鉄奈良線奈良駅下車徒歩15分。
JR関西線奈良駅下車徒歩30分。 
おつけもの御膳・あしびの郷近鉄奈良線奈良駅下車徒歩10分。
JR関西線奈良駅下車徒歩20分。 
漢国神社、林神社近鉄奈良線奈良駅下車すぐ。
JR関西線奈良駅下車徒歩7分。 
奈良饅頭・千代の舎竹村近鉄奈良線奈良駅下車徒歩5分。
JR関西線奈良駅下車徒歩10分。
御菓子司・なかにし近鉄奈良線奈良駅下車徒歩10分。
JR関西線奈良駅下車徒歩20分。 
Cafe・茶香庵近鉄奈良線奈良駅下車徒歩7分。
JR関西線奈良駅下車徒歩15分。 
◇問い合わせ先◇
茶粥・塔の茶屋0742−22−4348 
惣菜料理・馬の目0742−23−7784 
おつけもの御膳・あしびの郷0742−26−6662 
漢国神社、林神社0742−22−0612 
奈良饅頭・千代の舎竹村0742−22−2325 
御菓子司・なかにし0742−24−3048 
Cafe・茶香庵0742−24−7557 

◆歴史街道とは

    関西は「歴史・文化の宝庫」として世界に誇れる地域です。歴史街道では、日本の歴史文化の魅力を楽しく体験し、実感できる旅のルートとエリアを設定しました。伊勢・飛鳥・奈良・京都・大阪・神戸といった主要歴史都市を時代の流れに沿ってたどる「メインルート」と各地域の特徴をテーマとして活かした3つの「ネットワーク」です。

 

    歴史街道計画では、これらのルートを舞台に
  「日本文化の発信基地づくり」
  「新しい余暇ゾーンづくり」
  「歴史文化を活かした地域づくり」

    の3つの目標を掲げ、その実現を目指しています。

 

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