月〜金曜日 18時54分〜19時00分


京都市 

いよいよ夏本番。連日のように猛暑が続き、熱中症も続発している。誰しもこの暑さをどのようにしのぐかに工夫を凝らす。夏の暑さで有名な古都・京都市では、昔から食べ物でひとときの涼感を味わおうとの工夫が凝らされてきた。今回は京都らしい雅さがうかがえる涼味を探訪した。


 
京の涼味・緑陰道の名物茶屋  放送 7月28日(月)
  京都市右京区の化野(あだしの)は古くは葬送の地であり、初めは風葬、後には土葬となった。弘法大師・空海が開創した化野念仏寺の境内には、8000体を超える石仏、石塔が祀られており、いずれも室町時代前後のものが多い。

 死者との別離を悲しんだ人たちがこれらの石仏、石塔を安置して霊を慰めた。歳月を経るに従ってこれらの石仏、石塔は参る人びとがなくなり、無縁仏となって散在したり、土中に埋まっていた。明治時代の中ごろに地元の人たちが、土中から掘り出すなどして念仏寺に集めて祀った。

化野念仏寺

(写真は 化野念仏寺)

平野屋


 毎年8月23、24日の地蔵盆の日に行われる千灯供養は、多くの参詣者が無縁仏を訪れ、ローソクを灯して霊を供養する。闇の中にローソクの光と石仏が織りなす光景は、浄土具現を思わせると同時に世の無常を感じさせる。念仏寺付近の嵯峨鳥居本の街道沿いでも、同じ日に竹と和紙で作った大小の灯籠に灯を灯して並べる「愛宕古道街道灯し」が催される。この日は遠方からも力作の灯籠を持参して灯を入れる人もあり、街道沿いに幽玄の世界が現出する。

 嵯峨鳥居本は、愛宕山山頂の愛宕神社への参詣道沿いの門前町としてにぎわったところで、わら葺き屋根の農家風の民家が多く残り、国の重要伝統的建造物群保存地区に指定されている。

(写真は 平野屋)


 嵯峨鳥居本のすぐ近くの曼荼羅山は、五山の送り火のひとつ鳥居形がある山として知られ、嵯峨鳥居本一帯は豊かな自然環境の中に昔の風情が残る街道の町並みのたたずまいが、訪れる人たちを喜ばせている。

 嵯峨鳥居本の愛宕神社一ノ鳥居のすぐそばの平野屋は、創業以来約400年の歴史を持つ老舗の名物茶屋。古くから鮎問屋としても知られているが、平野屋の名物は何と言っても三色団子の「しんこ」。米の粉を蒸してねじった螺旋状のユニークな形の団子は、愛宕山へのつづら折りの坂道を模している。歯ごたえのある食感、黒砂糖ときな粉のほどよい甘さは、愛宕神社参りの旅人らに活力を与えてきた。

しんこ(平野屋)

(写真は しんこ(平野屋))


 
京の涼味・涼やか京菓子  放送 7月29日(火)
 美しさ、繊細さ、おいしさ、気品…。そのすべてが秀逸な京菓子は、平安遷都以来1200余年の王城の地で、宮廷文化とともに育まれた菓子と言える。宮廷や神社仏閣の儀式、典礼、わび、さびの世界を追求した茶席、祝い事の席など、さまざまな場所で京菓子がそれぞれの場を飾ってきた。

 京菓子づくりは三つに大別できる。宮廷や神社仏閣、茶席などで用いられる上菓子を作る菓子司、饅頭や餅菓子を作るおまん屋、餅や赤飯を作る餅屋で、それぞれの菓子は食べる場所や用途が異なる。
末富

(写真は 末富)

花火


 今回は京都市下京区松原通室町で明治26年(1893)に創業、寺院や茶席用の上菓子を作り続けている京菓子司「末富(すえとみ)」で、暑い京都で涼を呼ぶ夏の和菓子を披露してもらった。

 「夕涼み」は繊細な落雁や生砂糖細工、琥珀糖を少し乾燥させた干琥珀、あめ細工の有平糖、せんべいなど数種類がある。季節に見合った色、形、味、舌ざわりが楽しめる干菓子で「京菓子の華」と言われ、夏の贈答用品とした人気がある。「花火」は紅色の葛を餅粉と砂糖で練り合わせた白い求肥(ぎゅうひ)で四方から包み、上に小さな琥珀羹(こはくかん)を乗せたもので、四隅のすき間からのぞくと紅色が飛び散る線香花火を彷彿させる淡い色合いの可憐な夏菓子。

(写真は 花火)

 
 「葛焼き」は吉野葛に小豆あんを練り込み、枠に流し込んで蒸して固め、四角に切ってカタクリ粉をまぶして鉄板で焼いてほんのり焦げ目をつけたもので、見栄えはあまりよくないが葛と小豆あんがうまくマッチして、暑い夏にはピッタリの味。

 川端康成が命名したと言う「宝袋(たからぶくろ)」は、葛に砂糖を加えて練り上げ、小豆を少し散らして笹の葉で袋状に包んだもので、口に入れるとサッパリとした味と笹の葉の緑のみずみずしさが涼感を呼ぶ。こうした京菓子の職人たちがその技を発揮し、王朝文化の心が凝縮した京菓子は五感で堪能してもらいたい。

宝袋

(写真は 宝袋)


 
京の涼味・納涼川床料理  放送 7月30日(水)
 貴船山と鞍馬山の谷あいを流れる貴船川のほとりに鎮座する貴船神社は、神武天皇の母・玉依姫(たまよりひめ)が、国土を潤す水の神を祀る場所を求めて難波の地から淀川、鴨川、貴船川を遡り、この地にたどり着いて祠を建てたのを起源と伝える古社。

 祭神は水を司る高おかみ神(たかおかみのかみ)で、祈雨、止雨、縁結びの神として信仰を集めている。水の神・貴船神社が記録に表れるのは、日照りが続いた弘仁9年(818)に嵯峨天皇が勅使を遣わし、黒馬を献じて雨乞いの祈願をした時である。

貴船神社

(写真は 貴船神社)

ひろや

 貴船の地名は大自然の大地から「気」が立ち昇ることから「気生嶺(きふね)」「木生嶺(きふね)」とか「貴布禰(きふね)」などと呼ばれていた。この名が生まれたようにこのあたりは原生林のように樹木が覆い茂り、山から湧き出る水が集まり、貴船川の清流となっている。

 この貴船川のほとりは京の奥座敷とも呼ばれ、蒸し風呂のような暑い夏の京都の市街地を逃れ、気温が5、6度低い清流に涼を求める避暑客が多い。初夏の5月から9月まで貴船川沿いの料理旅館や料理店18軒が、一斉にせせらぎの上に川床をしつらえ、川床料理を楽しむ納涼客を迎える。

(写真は ひろや)


 昭和7年(1932)創業の料理旅館「ひろや」では、趣向を凝らし見た目にも涼しげな数々の料理が堪能できる。中でも氷を削って作った氷鉢に盛られたお造り、ハモ落としなどは、最も涼感あふれる料理と言える。ほかにアユの塩焼きなどの川魚料理、山菜料理やそうめんなどの貴船ならではの川床料理が並ぶ。カジカが鳴き、夜はホタル飛び交い、清流の音に耳を澄ましながら味わう川床料理は京の夏の醍醐味と言える。

 貴船の川床料理は昼と夜に分かれ、家族連れやブループで気軽に利用できる。値段は一人前約6000円から1万7000円ぐらいまである。予約が必要なので貴船観光会へ問い合わせれば、予算に合わせて店を紹介してくれる。

氷鉢(ひろや)

(写真は 氷鉢(ひろや))


 
京の涼味・清流で育てた
京野菜 
放送 7月31日(木)
 賀茂茄子は夏を代表する京野菜。5月から8月にかけて収穫され出荷される。京都市北区上賀茂の賀茂茄子生産者の高間眞蔵さんの畑では、この時期は早朝から収穫が行われる。賀茂茄子の紫の色が最も美しいのが、日の出ごろの早朝だと言う。

 賀茂川の清流が育んだ賀茂茄子は、ボリュームのある円形、つやつやと光る深い紫、ヘタも紫色で三片に分かれており、ずっしりと重いのが特徴。大きなものでは直径15cm、重さ1kgもあると言う。
上賀茂

(写真は 上賀茂)

加茂茄子


 平安京の都があった京都へは全国各地から野菜が持ち込まれ、この中から京都の土地にあったものが京野菜となった。春夏秋冬を通じて壬生菜、京菜、鹿ヶ谷南瓜、聖護院大根、聖護院かぶら、堀川ごぼうなど、その種類は二十数種におよぶ。

 夏の京野菜の代表格・賀茂茄子は賀茂川と高野川が合流して鴨川となる、合流地点の上流の扇状地で栽培されている。京都市街地の都市化の波に押されて、栽培地はどんどん北へ追いやられてきた。今では大原や静原あたりでも賀茂茄子を栽培するようになった。

(写真は 賀茂茄子)


 賀茂茄子の栽培には多量の水が必要で、適当な日照りと雨が賀茂茄子の品質を左右すると言われ、賀茂川の清流も味のよい賀茂茄子を育てるのに大きな役割を果たしてきた。

 京都では賀茂茄子の田楽や揚げ出しが一般的だが、京都市中京区烏丸通姉小路の複合ビルの新風館にあるレストラン「Tawawa」では、賀茂茄子の真ん中をくり貫いて油で揚げ、くり貫いた部分に野菜や天ぷらを盛りつけ、賀茂茄子本来の甘みとギュッと身の締まった味を生かした洋風茄子料理が食べられる。ほかにグラタンやトマトの煮込みなどにも使われており、茄子の女王・賀茂茄子は夏バテ時の栄養補給に最適の食材と言える。

丸ごと加茂茄子の揚げ出し(京野菜ダイニング Tawawa)

(写真は 丸ごと賀茂茄子の揚げ出し
(京野菜ダイニング Tawawa))


 
京の涼味・名水で磨く京麩  放送 8月1日(金)
 五条大橋東南にある「半兵衛麩」は、江戸時代初期の元禄2年(1689)に創業し、300年以上も生麩と湯葉を作り続けている麩屋の老舗。玄関回りの格子がきれいな町家の店構え、母屋に残るおくどさん(かまど)や天窓が、創業当時の雰囲気を今に伝えている。

 麩は室町時代に中国に渡った僧によって日本に伝えられ、殺生が禁じられ、肉食を口にできない厳しい戒律の禅僧たちの貴重な蛋白源として食されてきた。宮廷や寺院で食されていたものが、江戸時代に入って町衆にも広まり、寺院の多い京都では精進料理に麩や湯葉が使われ、京都ならではの食品として成長した。

半兵衛麸

(写真は 半兵衛麩)

なま麸(半兵衛麸)

 麩は小麦粉から取り出したグルテンを主材料にした食品で、生麩と焼麩に大別できる。半兵衛麩は生麩が有名で、あわ麩、ごま麩、よもぎ麩、彩りが鮮やかなかえで麩などがある。半兵衛麩の生麩で秀逸の一品は手まり麩。手まりに色鮮やかな糸を巻くように生麩を糸のように伸ばしながら巻く作業は、ベテラン職人にしかできない技で、できあがった手まり麩は食品と言うより芸術品に近く、口にするのは惜しいほどの品である。

 この手まり麩は生産に手間がかかり、量産ができないので注文販売となっており、店頭では販売していない。電話などで注文すれば、遠方でも発送してもらえる。

(写真は なま麸(半兵衛麩))


 おいしい麩づくりには麩に適した小麦、もち米ときれいな水が欠かせない。小麦粉を練り、寝かせた後で澱粉を洗い流し、抽出したグルテンにもち米を加えて蒸したり、ゆでたりしたものが生麩。「水で練り、水で洗い、水で冷やす」とまで言われるほど、水の良し悪しが麩の味を変える。半兵衛麩はこの水に恵まれ、今も地下から汲みあげた清らかな水を使って製造している。

 店内の奥にあるサロン風の茶房で生麩と湯葉づくしの「むし養い料理」がいただける。営業は午前11時から午後4時、電話での完全予約制で1人前3150円(税込み)。京都ならではの料理とヘルシーさが女性に人気を呼んでいる。

むし養い料理(半兵衛麸

(写真は むし養い料理(半兵衛麩)


◇あ    し◇
化野念仏寺、平野屋JR京都駅又は京阪電鉄三条駅から京都バスで
鳥居本下車徒歩5分。

京菓子司・末富地下鉄烏丸線五条駅下車徒歩8分。 

貴船神社、料理旅館・ひろや叡山電鉄貴船口駅からバスで貴船下車徒歩5分。
叡山電鉄貴船口駅下車徒歩30分。

京野菜ダイニング・Tawawa 地下鉄烏丸線、東西線烏丸御池駅下車徒歩すぐ。
京都市バス烏丸御池下車すぐ。

半兵衛麩京阪電鉄五条駅下車すぐ。 
京都市バス五条京阪前下車すぐ。
地下鉄烏丸線五条駅下車徒歩15分。


◇問い合わせ先◇
化野念仏寺075-861-2221 

平野屋075-861-0359 

京菓子司・末富075-351-0808 

貴船神社075-741-2016 

貴船観光会075-741-4444 

料理旅館・ひろや075-741-2401 

京野菜ダイニング・Tawawa 075-257-8058

半兵衛麩075-525-0008 


◆歴史街道とは

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  「新しい余暇ゾーンづくり」
  「歴史文化を活かした地域づくり」

    の3つの目標を掲げ、その実現を目指しています。

 

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