月〜金曜日 18時54分〜19時00分


箕面市、豊中市、池田市 

 今回は冬の北摂・箕面、豊中、池田の各市の名刹、野外ミュージアム、音楽ミュージアム、落語ミュージアムなど、個性あふれるポイントを訪ねた。


西国三十三所第23番札所・
勝尾寺(箕面市) 
放送 1月12日(月)
 箕面市の北部、箕面公園の箕面の滝のさらに北に位置する勝尾寺(かつおうじ)は、神亀4年(727)摂津国の国司・藤原敦房の子・善仲(ぜんちゅう)善算(ぜんさん)の双子の兄弟が、この地に草庵を結んだことに始まる。

 聡明だった善仲、善算は幼いころは神童と言われ、9歳で四天王寺の栄湛上人の弟子となり、17歳で剃髪して出家した。2人はもっと静かな所で修行をしたいと語り合い、20歳になった時、標高450mのこの地に入って草庵を構え修行に入った。

開成皇子の墓

(写真は 開成皇子の墓)

本尊十一面千手観音菩薩(秘仏)

 光仁天皇の皇子・開成(かいじょう)は、善仲、善算に出会い、二人を師として修行を続け、宝亀6年(775)に大般若経600巻を納め、勝尾寺の前身・弥勒寺を創建した。本尊の十一面千手観世音菩薩像は、宝亀11年(780)弥勒寺を訪れた僧・妙観が香木の白檀に彫った2mを超す大きな観音像。

 平安時代初期に第6代座主・行巡上人が清和天皇の病気平癒を祈願し、その効験があったことから天皇から「我が権力より力あり、王に勝つ寺・勝王寺」として「勝王寺」の寺号を賜ったが、それでは畏れ多いと「王」を「尾」に控えて勝尾寺と号するようになった。

(写真は 本尊十一面千手観音菩薩(秘仏))

 この「王に勝つ寺」の寺号から勝運の寺として、清和天皇の血筋の源氏の武将をはじめ多くの武将たちの信仰を集め、必勝の祈願寺となった。
 勝運の寺として有名になると入学試験、スポーツの試合、選挙、病気、商売などでの勝ちを祈願する人たちの参詣が多くなった。こらら参詣者のお守りとなったのが七転び八起きの「勝ダルマ」。この勝ダルマに勝運の願いを込めて奉納する人が増え、境内の灯籠や築地塀の屋根など、いたる所に「勝ダルマ」が並んでいる。

 御詠歌は「おもくとも つみにはのりの かちおでら ほとけをたのむ みこそやすけれ」。

勝運成就奉納ダルマ

(写真は 勝運成就奉納ダルマ)


勝尾寺・寺宝の美(箕面市)  放送 1月13日(火)
 創建後の勝尾寺(かつおうじ)の堂塔は源平合戦の兵火で焼失したが、源頼朝らの援助で再興された。現在の堂塔は頼朝が再建し、開成(かいじょう)皇子が彫った薬師三尊像を祀る薬師堂を除いて、本堂や山門などは豊臣秀頼によって再建されたものである。

 本堂に祀られている秘仏の本尊・十一面千手観世音菩薩像は、僧・妙観が弟子18人とともに30日間をかけて白檀の香木に彫った。この観音像を完成させた妙観は、新仏の前で低頭合掌して死去、18人の弟子たちもいずこかへ姿を消したので、妙観は観音の化身ではなかったかと伝えられている。

多宝塔

(写真は 多宝塔)

天部形神立像

 十一面千手観世音菩薩像は高さ2mを超える大きな観音像だが、おだやかで包み込まれるようなその像容を拝していると心に豊かさが満ちてくるようである。

 勝尾寺は数々の寺宝を所蔵しており、平安時代初期の作であると言われる天部形神(てんぶぎょうしん)立像もそのひとつ。頭上には大きな髻(もとどり)を結い、両手は腹の前で笏(しゃく)を構えている。目は細く、唇は薄い。仏教の天部形だが、笏を構えていることから神仏習合を伝えるものである。背中に「開成皇子御作」とあるが、後世に書かれたもののようだ。

(写真は 天部形神立像)

 第4代座主・証如が建立した二階堂では、浄土宗の宗祖・法然が讃岐配流からの帰途、証如の遺徳をしのび、ここで4年間、念仏三昧の修行を行った。この修行中に中国・唐の僧・善導大師の夢のお告げによって、浄土宗の基本の戒を授けられたと言われ、善導大師、法然対面の姿を映した板壁が二階堂の本尊となっている。

 三宝荒神堂に祀られている三宝荒神は仏・法・僧を守護する護法神で、開成皇子が感得した三宝荒神と伝えられている。この荒神は厄払い荒神と言い、高野山の立里荒神、宝塚の清荒神とともに日本三荒神のひとつとして信仰されている。

法然上人(二階堂)

(写真は 法然上人(二階堂))


懐かしい民家のたたずまい(豊中市)  放送 1月14日(水)
 豊中市の服部緑地は昭和25年(1950)に開設された126.3haの広大な自然公園で、その一角にある日本民家集落博物館は昭和31年(1956)に日本で最初にオープンした野外博物館。

 約3万6000平方mの敷地には日本の各地から移築した代表的な民家12棟や風車、刳(く)り船、供養塔などが展示されている。移築された民家はいずれも江戸時代の17-19世紀に建築された建物で、50年ほど前まで実際に人びとが生活を営んでいたもので、それぞれ生活の痕跡が残っており、それぞれの地域の気候や風土、習慣、暮らしぶりなどがうかがえる。

信濃秋山の民家(長野県)

(写真は 信濃秋山の民家(長野県))

小豆島の農村歌舞伎舞台(香川県)

 摂津・能勢(大阪府)の民家は博物館内で最も古い建物で、家の中を半分に分け、片方に座敷と板張りの部屋、もう片方が土間と馬屋となっている摂津・丹波地方独特の間取り。大和・十津川(奈良県)の民家は、屋根に特産の吉野杉の板を張っている。

 奄美大島(鹿児島県)の高倉は高床式で湿気を防ぐ穀物貯蔵庫。信濃・秋山(長野県)は豪雪対策として外壁を厚いカヤで覆い、土間にカヤ、むしろを敷いて生活していた。小豆島(香川県)の農村歌舞伎台は神社の境内に建て、農民が役者になって村人を前に歌舞伎を演じて楽しんだ。

(写真は 小豆島の農村歌舞伎舞台(香川県))

 ユネスコの世界遺産に登録されている飛騨・白川郷(岐阜県)の合掌造の民家は、博物館で最初に移築された民家。江戸時代中ごろに建てられた3階建てで、茅葺きで急勾配な三角屋根が特徴で、掌を合わせたような形から合掌造と呼ばれる。2階から上で蚕を飼い、居住部分の1階の囲炉裏の周りは一家団欒の場だった。

 このほかに日向・椎葉(宮崎県)の民家、越前・敦賀(福井県)の民家、馬と一緒に暮らした陸奥・南部(岩手県)の曲家(まがりや)、河内・布施(大阪府)の長屋門、堂島(大阪府)の米蔵、北河内(大阪府)の茶室などが立ち並んでいる。

飛騨白川の民家(岐阜県)

(写真は 飛騨白川の民家(岐阜県))


世界の楽器(豊中市)  放送 1月15日(木)
 大阪音楽大学音楽博物館は「世界の楽器と音楽」「関西の西洋音楽」「関西の伝統音楽」をテーマに楽器や映像、音響、文献など、多様な資料をそろえた総合的な音楽資料の博物館。館内で珍しい楽器やレトロな楽器を眺めたり、触ったり、その音色を聴いていると音楽の奥深さを再認識させられる。

 大阪音楽大学音楽博物館は昭和41年(1966)に音楽文化研究所として発足、平成14年(2002)に音楽研究所(旧音楽文化研究所)と楽器博物館が発展改組して音楽博物館として再出発した。博物館を訪れた見学者を、スタッフが展示物の説明や演奏をしてくれるガイドツアーも行っている。

18〜19世紀のピアノ

(写真は 18〜19世紀のピアノ)

アフリカの楽器

 音楽研究所は関西の音楽研究に独自の分野を切り拓いた実績を持っており、楽器博物館は日本をはじめ世界各地の楽器を集めた関西を代表する博物館で、両組織が合体したことで関西ではほかに例を見ない音楽資料の殿堂となった。

 所蔵資料は楽器約2300点、書籍約1万点、視聴覚資料約6000点、音楽関連論文約5000点、関西の伝統音楽に関する資料約1万4000点、関西の洋楽史に関する資料約25万点、大阪音楽大学の歴史に関する資料約6万点にのぼる。

(写真は アフリカの楽器)

 蒐集された世界各地の楽器には目を奪われる。古典ピアノのコーナーには18-19世紀のレトロな形のピアノがずらりと並んでいる。ストローヴァイオリンは20世紀初頭にストロー氏が、録音用に製作したもので拡声器がついている珍しいヴァイオリン。体験コーナーでは実際に楽器に触れることができるほか、手に取って演奏することもできる。

 博物館のイベントとして世界の楽器を使った演奏会などを行っており、今回は特別にインドネシア・バリ島のガムランを演奏してもらった。活気あふれるガムラン楽器の楽を聴いていると現地の風景が目に浮かんでくる。

韓国の楽器

(写真は 韓国の楽器)


池田の猪買い(池田市)  放送 1月16日(金)
 池田市は上方落語の「池田の猪買い」や「池田の牛ほめ」などの舞台となったことから「落語の町」とされ、市内の受楽寺には初代、二代目春団治の顕彰碑も建てられている。

 その「落語の町」を象徴するかのように、大阪から池田を通って能勢へ通じる能勢街道沿いに池田市立上方落語資料展示館「落語みゅーじあむ」がある。ここでは上方落語の資料展示、映像やDVD,CDなどでの落語の紹介、視聴コーナーなどのほかに落語入門講座もある。毎月第2土曜日には「落語みゅーじあむ寄席」が開かれている。

落語みゅーじあむ

(写真は 落語みゅーじあむ)

噺家の楽屋

 「池田の猪買い」や「池田の牛ほめ」のように落語に都市の名がついているものは少ない。これを町おこしの起爆剤にしようとの話が持ち上がり、紆余曲折の末に「落語みゅーじあむ」が平成19年(2007)にオープンした。

 アマチュア落語入門講座ではプロの落語家を講師に「池田の猪買い」と「池田の牛ほめ」を中学生から80歳までの男女の市民らが落語を学び、その成果を発表会寄席で披露した。それぞれ個性あふれる語り口、時には思わぬ失敗に、客席からは笑いと盛んな拍手が起こったと言う。

(写真は 噺家の楽屋)

 「池田の猪買い」は冷え性に悩む男が「獲ったばかりの新鮮な猪を食えばよい」とのアドバイスを受け、猪撃ちの名人・六太夫を訪ねて池田まで歩く珍道中。「池田の牛ほめ」は物覚えの悪い男が、伯父が新築した家をほめて小遣いをもらおうと企み、難しいほめ言葉を披露するのだが、その結果は?

 池田の猪買いにならっての池田への旅の締めくくりは、池田市伏尾町の伏尾温泉・不死王閣で、猪肉たっぷりのぼたん鍋に舌鼓を打ち、仕上げは自然に囲まれた露天風呂の温泉で身体を芯から温め、至福のひとときを楽しみたい。

ぼたん鍋(伏尾温泉不死王閣)

(写真は ぼたん鍋(伏尾温泉不死王閣))


◇あ    し◇

勝尾寺地下鉄御堂筋線・北大阪急行線千里中央駅から
バスで勝尾寺下車徒歩5分。 

日本民家集落博物館地下鉄御堂筋線・北大阪急行線緑地公園駅下車徒歩15分。 

大阪音楽大学音楽博物館
阪急電鉄宝塚線庄内駅下車徒歩7分で大阪音楽大学
第一キャンバスへ。
同キャンパスからスクールバスで音楽博物館へ。 

受楽寺(初代・二代目桂春団治顕彰碑)
阪急電鉄宝塚線石橋駅からバスで新開橋下車徒歩3分。
阪急電鉄宝塚線石橋駅下車徒歩15分。

落語みゅーじあむ阪急電鉄宝塚線池田駅下車徒歩7分。 

不死王閣阪急電鉄宝塚線池田駅からバスで伏尾下車すぐ。 

◇問い合わせ先◇

勝尾寺072-721-7010

日本民家集落博物館06-6862-3137

大阪音楽大学音楽博物館
06-6868-1503 

受楽寺(初代・二代目桂春団治顕彰碑)
072-762-0938

落語みゅーじあむ072-753-4440 

不死王閣072-751-3540 


◆歴史街道とは

    関西は「歴史・文化の宝庫」として世界に誇れる地域です。歴史街道では、日本の歴史文化の魅力を楽しく体験し、実感できる旅のルートとエリアを設定しました。伊勢・飛鳥・奈良・京都・大阪・神戸といった主要歴史都市を時代の流れに沿ってたどる「メインルート」と各地域の特徴をテーマとして活かした3つの「ネットワーク」です。

 

    歴史街道計画では、これらのルートを舞台に
  「日本文化の発信基地づくり」
  「新しい余暇ゾーンづくり」
  「歴史文化を活かした地域づくり」

    の3つの目標を掲げ、その実現を目指しています。

 

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