2010/04/01

クロマグロ会議で見た日本の強かな外交

会議の俯瞰です

『アメリカ・EU27ヵ国もクロマグロ禁輸支持!』
『クロマグロ禁輸包囲網!』
連日のように新聞紙上で劣勢が伝えられるなか、ワシントン条約締約国会議で大西洋・地中海産クロマグロ禁輸案は否決された。下馬評を完全に覆したこの投票結果のウラには普段見ることが少ない強かな日本政府の外交があった。

石井のリポートです

禁輸案を提案した
モナコの審議官へインタビュー

警備上の理由から、国際会議の取材(特にテレビカメラ)は極端に規制が厳しく、自由な取材はほとんどできない。そこで私たちは、『日本代表団のキーパーソン(審議官)への密着と各国代表団へのインタビュー』に徹する取材手法を選択した。すると取材を進めるうちに興味深い事実がわかった。

『日本を応援するよ』『日本政府の考えに賛成だ』という声が非常に多く、日本代表団が数ヵ月前から途上国を中心に水面下で個別交渉してきたことがわかった。
そして『アラブ連盟が緊急会議を開き禁輸案反対を決める』という情報をキャッチ。私たちが単独でその会議を撮影し、『アラブ17ヵ国が禁輸案反対へ!』というニュースをどの新聞社・通信社・放送局よりも早く伝えることができた。そして私は確信を持って、『アラブ以外にアジアの多くの国やアフリカの国からかなりの反対票が確保できそうだ』と他社の論調に反した内容を会議開始前の中継リポートで伝えた。

事前の予想ではマグロの議論は紛糾が予想され、採決までに数日はかかるといわれていた。ところがマグロの議論初日の開始わずか2時間後、北アフリカのリビアが『(禁輸を提案した)モナコの話はウソばかりだ。証拠を持って出直せ!』と激昂、さらに『こんな議論に意味はない。今すぐ採決すべきだ!』と緊急動議を出してそのまま採決することが決まった。

会議中に激昂し緊急動議を出す
リビアの審議官

結果は、禁輸賛成20、反対68、棄権30の大差でクロマグロ禁輸案は否決された。日本政府にしてみれば、実に見事な逆転劇である。

今回の逆転劇、実は日本代表団によって周到に仕組まれたものだと私は見ている。日本の審議官に密着していた私たちのカメラは、会議直前、会議で吠えたリビアの審議官が日本の審議官と親密に話す姿を捉えていた。逆転劇のシナリオの最終打合せだったとみられる。

会議前に親しく話すリビアと日本の両審議官

会議直前に親密に話す
リビアと日本の両審議官

否決直後、笑みで話す
リビアと日本の両審議官

さらに禁輸案否決直後、満面の笑みを浮かべる日本の審議官がリビアの審議官の肩をポンと叩く姿もカメラは捉えていた。会議後、このリビアの審議官は、「彼(日本の審議官)は古くからの友達だから・・・」と事前交渉を暗に認めた。

数ヵ月前から途上国を中心に反対票を固め、しかし表向きは終始『厳しい状況!』とコメント、そして『今なら勝てる!』と見るや自らは表立たずに緊急動議を発動させて禁輸案を否決に持ち込んだ。今回の日本代表団の外交は実に強かだった。

会議直前に親密に話す
チュニジアと日本の両審議官

各国の審議官と話す日本の審議官

各国の審議官と話す日本の審議官

大西洋・地中海産クロマグロの禁輸はひとまず回避されたが、クロマグロの個体数が激減していることは事実だ。そしてこの個体数の激減は、日本という格好の市場を目指してマグロの乱獲が行われてきた結果であることに疑いの余地はない。
貴重な資源であると自覚し、クロマグロを少しだけ大事に味わおうと決めている。

シャンハイ★Shanghai