2018/10/26

パリっ子を魅了。若冲展

こんにちは、パリ支局の橋本美輝です。

「入場数、新記録しました!」(パリ市立プティ・パレ美術館)

パリで開催されていた日本の画家、伊藤若冲の特別展が大好評のうちに閉幕しました。『若冲−≪ 動植綵絵 ≫ を中心に』と題された展覧会は、9月中旬から1ヵ月間行われました。今年フランスでは日仏友好160周年を記念して「ジャポニスム2018:響きあう魂」というテーマで様々な行事が行われています。この展覧会はその一環でした。

展覧会のポスターにも使われた『老松白鳳図』(宮内庁三の丸尚蔵館蔵)日仏友好160周年記念「ジャポニスム2018」の一環での特別な貸し出しだった展覧会のポスターにも使われた『老松白鳳図』(宮内庁三の丸尚蔵館蔵)
日仏友好160周年記念「ジャポニスム2018」の
一環での特別な貸し出しだった

伊藤若冲は、「日本美術の巨匠」と評価されていますが、残念ながらフランスではほとんど知られていない画家でした。これまで、その作品は1900年のパリ万博の際にわずか一点、『老松白鳳図』が展示されたくらい。作品が紹介される機会がなかったことが、知名度の低さの背景にあります。

そのため当初は、どれだけの観客が集まるのか、懸念する声がささやかれていました。そんななか、プティ・パレ美術館のルリボー館長は「自然の壮麗さを描く並外れた画風や宗教に対する観点は、ここフランスでも人々を魅了するものだと思います」と、成功を確信する言葉を寄せ、欧州で初めての大きな展覧会をスタートしたのです。

今回、プティ・パレ美術館の特別展示室で公開されたのは、最高傑作とされる『動植綵絵』や『釈迦三尊像』など計33幅です。 時に優雅に時に可愛らしく舞う鳥、どこかユーモラスな海洋生物、真っ白な雪の情景や薄紅色のバラ−

作品に見入る観客作品に見入る観客

フランスの専門記者たちを招待したプレス向け公開日には、相国寺の管長らによる法要も行われ、日本の文化を直に伝えるムードのなか、動植物をテーマに現実と空想の入り混じった緻密な描写の作品の数々を前に、 感嘆の声が漏れ聞こえました。

プレス向け内覧会の様子プレス向け内覧会の様子

法要も行われた。珍しさもあって、フランス人記者たちもじっと耳を傾けた法要も行われた。
珍しさもあって、フランス人記者たちも
じっと耳を傾けた

フランスの主要メディアや専門誌は、若冲を「日本のフェルメール」などと評し、大きく特集を組みました。同じように長い間忘れられ、19世紀の再評価で飛躍的に知名度を高めた、オランダの巨匠にたとえたようです。

館内に入ってからも、展示会場まで大行列が続いた館内に入ってからも、
展示会場まで大行列が続いた

評判はじわじわと広がり、最終日を迎える頃には、この貴重な機会を逃したくないと、開館前から多くの人が集まりました。会場から数百メートル離れたシャンゼリゼ大通りまで、長蛇の列は1日中途切れることなく、展示室内も大混雑となりました。

実際に作品を見た観客たちからは、
「2時間以上も並んだ甲斐がありました。若冲の朱色と鳥の目に心を奪われました。」(A.Fさん 29歳)

「細部へのこだわりや普遍的なテーマに心を惹きつけられました。このような世界観を持つ芸術家を生み出した日本に旅行してみたいと思いました」(A-M.Bさん 64歳)
と、絶賛する反応があちこちで聞かれました。

準備したカタログは文字通り飛ぶように売れ、急遽増刷。絵葉書などの関連グッズの中には、売り切れになったものもあったそうです。多い日には1日に4000人近くが足を運び、1ヵ月間で総計7万5000人以上の入館数となり、この美術館での企画展としては、記録を塗り替える大きな成功となりました。

多くのポスターが掲示され、パリの街は「若冲」であふれた多くのポスターが掲示され、
パリの街は「若冲」であふれた

パリではこれに続いて縄文時代の土器や土偶を集める「縄文展」が始まっています。また、国宝の俵屋宗達作『風神雷神図屏風』を ヨーロッパで初めて4週間だけ公開する 「京都の宝―琳派300年の創造」展などが続きます。
フランスの芸術の秋はますます深くなりそうです。

シャンハイ★Shanghai