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「処罰するのは憲法違反」「望まない“生”強いることに」ALS嘱託殺人 弁護側が無罪主張 実行役の医師の初公判 検察側「詳しい検査せず殺害」正当性ないと主張

01/11 18:04 配信

 ALS患者の嘱託殺人事件で、実行役の医師の男の初公判が開かれました。男は嘱託殺人について起訴内容を認めましたが、弁護側は無罪を主張しました。

「女性の願いをかなえるためだった」
 裁判長のほうを真っ直ぐ向き、噛みしめるようにこう語ったのは、ALS患者の嘱託殺人事件などで起訴された医師の大久保愉一被告(45)です。11日、初公判が開かれ、初めて事件について語りました。

 大久保被告は2019年、元医師の山本直樹被告(46)と共謀し、京都市内に住んでいた難病のALS・筋萎縮性側索硬化症を患う女性から依頼されて殺害したとして、嘱託殺人の罪などに問われています。

(女性)「作業は簡単だろうから、カリスマ医者じゃなくてもいいです」
(大久保被告)「たしかに作業はシンプルです。訴追されないならお手伝いしたいのですが」

 大久保被告と女性はSNS上で知り合ったとみられていて、「安楽死」の計画についてやり取りをしていました。

(大久保被告)「なんなら当院にうつりますか?自然な最期まで導きますが」

 その後ダイレクトメッセージで準備を進め、事件当日、女性の診断をせず薬物を投与し殺害したとされています。大久保被告と女性が会ったのは、この日が初めてでした。また、事件前には女性から報酬として130万円を受け取っていたとみられています

 11日の初公判で大久保被告は、嘱託殺人の罪について「間違いありません。ただ、女性の願いをかなえるためだった」と起訴内容を認めました。一方、弁護側は「嘱託殺人罪で処罰するのは憲法に違反する」として無罪を主張しました。

 冒頭陳述で検察側は「報酬を支払われることを前提に殺人の依頼を受け、詳しい検査などもせず殺害した」「女性は死期がせまった状況ではなかった」と被告の行為に正当性はないと主張。

 これに対し、弁護側は「女性はALSの末期で死にたいという願望を自分でかなえられなかった。被告の行為を処罰することは、女性の『望まない生』を国家によって強いられる結果になる」と真っ向から反論しました。

 弁護側の冒頭陳述の際、大久保被告はメガネを外し涙をぬぐうような仕草もみせました。判決は3月5日に言い渡される予定です。

最終更新:01/12 11:23

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