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産婦人科医の男性自殺 「安全配慮義務を怠った」病院側に約1億5000万円の賠償命令 大阪高裁が逆転判決
12/24 22:02 配信
産婦人科医の男性(当時50代)が長時間の勤務などが原因で精神疾患を患い自殺したとして遺族が起こした裁判で24日、大阪高裁は病院側に1億5000万円近くの賠償を命じる逆転判決を言い渡しました。
判決などによりますと、男性は1999年から山口県長門市にある長門総合病院の産婦人科で部長として勤務を始めました。
付近で、産婦人科と小児科がある医療機関は長門総合病院だけで多くの患者が入院していたのに、産婦人科には当時常勤の医師が男性を含め2人しかいない上、男性ともう1人の医師との関係は勤務の仕方を巡って悪化していたといいます。
さらに男性の連続勤務は最長で20日、残業時間は多い月で117時間を超え、男性は体調不良を訴えめまいを起こして入院したこともあり、2009年の1月にはうつ病と診断され、その2カ月後に自殺しました。
男性の遺族は2020年に「常勤の医師の確保や(男性の)過重業務の軽減などの安全配慮義務を怠った」として病院側に1億7000万円あまりの賠償を求め訴えを起こしましたが、神戸地裁は2024年、一部の残業時間を「客観的な証拠がない」として訴えを退け、遺族が控訴していました。
大阪高裁は判決で、男性が病院のパソコンにログインした記録から「男性が時間外労働の申告をしていなくても、休日にも入院病棟を巡回し、患者の様子を確認するなどしていた」と1カ月に80時間以上の残業をしていたことを認めました。
さらに、院長が男性が退院した直後に面談したのに負担軽減の措置をとらなかったとして、「疲労や心理的負荷などが過度に蓄積すると精神障害を発病し、自殺念慮が出現する可能性があることを院長が認識してなかったとは考え難い」などと安全配慮義務を怠ったとして1審判決を変更し、病院側に約1億5000万円の損害賠償を命じました。
判決後、大阪市内で会見を開いた男性の妻は「普通の出産でも常に危険をはらんでいる産婦人科の業務の特殊性が少しでも周知されればと思っています。今後、産婦人科の医師たちの労働環境の見直し改善の布石となり、心身の負担の軽減、精神衛生上の改善の一助となることを願っています」と話しました。
長門総合病院は「主張が認められず残念です。判決の詳細を把握し、今後の対応を検討していきます」とコメントしています。
最終更新:12/24 22:02


