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政府は「足りている」のに企業は「足りない」 “認識のズレ”の原因は? エアコンに保冷剤、殺虫剤まで…「ナフサショック」は夏の必需品にも影響【識者解説】

05/20 12:00 配信

 中東情勢の緊迫化でナフサの供給が滞るいわゆる「ナフサショック」。夏の必需品にも大きな影響を与えるかもしれません。神戸国際大学教授・中村智彦さんに詳しく聞きました。

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政府は「足りている」のに企業は「足りない」…なぜ起こる“認識のギャップ”

 プラスチック製品や塗料、合成繊維など、あらゆる製品の原料となるナフサ。その万能性から「魔法の液体」とも呼ばれるこの物質がいま、深刻な供給不足に陥っています。

 ナフサ不足の背景には、中東情勢の悪化による輸入量の減少があります。ホルムズ海峡の封鎖により、中東からの輸入が約4割減少。食品メーカーが商品のパッケージデザインを変更したり、製紙会社が製品を値上げしたりするなど、企業活動への影響がすでに出ています。帝国データバンクの調査では、国内製造業4万6741社に「調達リスク」の可能性があると指摘されています。

 しかし、ナフサ由来の化学製品について、政府は「年を越えて継続供給できる見込み」「必要量は確保済み」と発表していて、企業側の認識とズレが生じています。

 このズレについて、中村教授は「政府としては、景気悪化に繋がるため節約を呼びかけたくない」といいます。その上で「原料は足りていても、実際は『供給の目詰まり』が起こっているので、企業にはダメージがある」と指摘します。

供給の「目詰まり」なぜ起こる? 先行きの不透明さから工場の稼働率を抑える動きが背景に

 では、なぜ「供給の目詰まり」が起こっているのでしょうか。

 今、ナフサを精製してプロピレンなどの製品原料を製造する精製工場では、ナフサ供給の先行きが全く見通せないことから稼働率を抑える動きが出ています。すると、プロピレンなどを原料とする溶剤メーカーの製品も減少し、製品の価格高騰につながります。

 中村教授は「工場は一度ストップさせれば再稼働には1〜2カ月かかる」「工場を完全に止めないために、生産量を調整している」と説明。実際にエチレンの工場稼働率は統計史上で過去最低になったといいます。

エアコンに保冷剤、殺虫剤まで…夏の必需品にも影響

 このナフサ不足は、猛暑が予想される今年の夏、私たちの生活に大きな影響を及ぼすかもしれません。すでに値上がりや品薄が始まっている夏の必需品もあります。

・エアコンの周辺部品…配管や壁の穴を埋めるパテ、室外機の土台などがすでに値上がりし品薄に。エアコン本体を買っても取り付けができない可能性も指摘されています。

・保冷剤:栃木の飲食店では仕入れ値が2割増となり、客に持参を呼びかけています。

・ネッククーラー:冷却材の不足から増産が困難となり、着色をやめてモノクロに変更する動きも出ています。

 中村教授によると、浮き輪やビーチサンダル、使い捨て容器、殺虫剤の成分にまでナフサが使われているため、かなり多くの製品に影響が出てくる可能性があるといいます。

“物価高倒産”は過去最多に…中村教授「赤字を避けるための廃業も急増する」

 一方、物価高が原因の倒産は相次いでいます。

 帝国データバンクによると「物価高が原因で倒産」は先月108件にのぼり、1カ月の発生件数としては過去最多を記録しました。内訳で最も多いのが「原材料の値上げ」で63件、業種別では「建設業」が最多となっています。

 全京都建築労働組合の緊急アンケートでは、工事原価が「上がった」「かなり上がった」と回答した事業者が7割近くに達する一方、その値上がり分を取引価格に転嫁できず、自社で負担していると回答した事業者も同じく7割を超えるという厳しい実態が明らかになりました。

 今後の見通しについて、中村教授は「ナフサ由来の資材を多用する建設・製造業では価格高騰による“オイルショック倒産”のみならず、赤字を避けるための廃業も急増するだろう」と考えています。

中村教授
「日本の中小企業は1970年代、80年代に創業した会社が多い。コロナが終わって様々な物価が上がってきて、人件費も上がってきた。『そろそろやめようかな』と思っていた経営者のところでいよいよ厳しいとなったときに、今回の中東危機が起こって『もうやめよう』となっています」

 一方で、オイルショックを機に省エネ技術などが発展した歴史を振り返り、この危機を新たな技術革新のチャンスに変えるべきだとの見方も示しました。

中村教授
「今回も悪いことばかりではなく、何か新しい工夫をして次の時代に残せるようなものができないか、みんなで考えるべきだと思います」

(「newsおかえり」2026年5月19日放送分より)

最終更新:05/20 13:45

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