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世界初!「完全養殖ウナギ」試験販売スタート スーパーに並ぶ日は? 今後の可能性を専門家が解説
06/03 17:00 配信
世界初!「完全養殖ウナギ」試験販売スタート
夏の風物詩「ウナギ」。日本で食べられるウナギのほとんどは、天然の稚魚から育てた「養殖ウナギ」です。こうした中、「完全養殖ウナギ」の試験販売が29日、世界で初めて始まりました。“完全養殖”の登場で、食卓はどう変わるのでしょうか。完全養殖の研究に関わった、近畿大学水産研究所の田中秀樹特任教授に聞きました。
世界で初めて「完全養殖」されたウナギが29日、試験販売を開始しました。このプロジェクトは、国が予算を出して水産研究・教育機構が開発した技術を、大分県の山田水産が検証するという形で進められました。
価格は1尾4860円からと高価ながら、オンラインでは完売するほどの注目を集めています。
「完全養殖」の背景に 絶滅危惧と資源枯渇
ウナギの供給量の変化
完全養殖技術が求められる背景には、ウナギ資源の深刻な枯渇があります。
国内の天然ウナギの漁業生産量は、2024年時点でわずか52トン。これはピークだった1961年の3387トンと比較すると、約1.5%にまで激減しています。
さらに、私たちが主に食しているニホンウナギは、2014年にIUCN(国際自然保護連合)によって絶滅危惧種に指定されました。
去年のワシントン条約締約国会議では「ウナギ全種類の規制」が議題に上がったものの、日本の反対もあり否決され、規制は見送られました。しかし、資源確保への懸念は依然として残っており、完全養殖技術は生態系を守り、日本の食文化を守るうえでも重要だと位置づけられています。
完全養殖への長い道のり 謎に包まれたウナギの生態
販売までの長い道のり
ウナギ養殖の歴史は古く、1879年(明治12年)から行われていました。しかし、これはあくまで天然の稚魚を捕獲し、それを成魚になるまで育てる「養殖」でした。
今回実現した「完全養殖」とは、成魚から卵を採り、それを孵化させて稚魚にし、再び成魚へと育て上げるという、ウナギのライフサイクル全てを人間の管理下で完結させる技術です。この研究は1960年前後から始まり、半世紀以上の歳月を経て、2010年に世界で初めて成功しました。
謎に包まれたウナギの生態
完全養殖がこれほどまでに困難だった理由は、ウナギの生態が謎に包まれているからです。
ニホンウナギは、日本から約3000km離れたマリアナ海域で産卵します。田中教授によると、その産卵場所が特定されたのも、2009年とごく最近のことでした。
マリアナ海域で生まれた”赤ちゃん”は、海流に乗って約6000kmもの長旅を経て、シラスウナギに成長して日本の沿岸にたどり着きます。そして成長したウナギは、再び産卵のためにマリアナ海域を目指しますが、その詳しいルートはまだ解明されていません。
田中特任教授は「親ウナギに発信器をつけて、それを追跡するという研究がされているが、まだ途中までしか追跡ができていない」と、研究の現状を語りました。
完全養殖を阻んだ「2つの大きな壁」
「産卵」と「エサ」の問題が
完全養殖の実現には、2つの大きな壁が立ちはだかっていました。それは「産卵」と「エサ」の問題です。
第1の壁は「養殖環境下ではウナギが自然に卵を産まないこと」でした。田中特任教授は「自然界ではマリアナ海域まで泳いでいく途中の環境の刺激を受けることで成熟が進み、卵や精子ができると考えられている」と解説。この課題は1973年に人工ふ化の成功という形で乗り越えられます。
第2の壁は、「孵化した赤ちゃんウナギが自然界で何を食べているか全く分からなかった」ことです。研究者たちは手探りでエサを探し、当初は「サメの卵」を与えていました。しかし、サメの卵は品質が安定しないという問題がありました。
研究を重ね、現在は「ニワトリの卵をベースに、牛乳のタンパク質などを加えた」特殊な液体状のエサが開発されました。田中特任教授は「飼育の安定性が飛躍的に向上した」といいます。
生産コストは大幅に削減
エサや飼育方法の改良は、生産コストの大幅な削減にも繋がりました。約20年前の段階では、1つの水槽で飼育できる赤ちゃんウナギはわずか250匹ほど。1日2時間おきに5回エサやりなどが必要で、シラスウナギに育てるまでのコストは、1匹あたり数十万~数百万円にも上りました。
それが現在では、1つの水槽で2万匹の飼育が可能となりました。またエサの改良や飼育水槽の開発により、1匹あたりの生産コストは約1800円にまで下がりました。
スーパーに並ぶ日は? 制度の壁と今後の可能性
今回はあくまで「試験販売」
多くの人々の努力の末に実現した完全養殖ウナギですが、今回はあくまで「試験販売」です。現状では、完全養殖ウナギを販売するための制度がまだ整備されておらず、自由に売ることができません。
田中特任教授は「制度が整って、低コスト化、大量生産が実現すれば、スーパーに並ぶかもしれない」と、今後の見通しを語りました。
近畿大学水産研究所・田中秀樹特任教授
多くの人が気になる味について、19日に試食した鈴木農水大臣は「めちゃくちゃおいしいです」と絶賛しました。
田中特任教授も「普通の養殖ウナギと、さほど味は変わらない印象」と評価しました。さらに、「今後、完全養殖技術が進み、品種改良のようなことができれば、完全養殖にしか出せない特徴ができるかもしれない」と、脂の乗りや皮の柔らかさなど、新たな可能性に期待を寄せました。
価格については、「どれだけ低コスト化が進んでも、一般的に出回っているものより価格が安くなることは期待できない」としながらも、「以前は近づくのも不可能と思っていたが、可能性は見えてきた」といいます。
完全養殖ウナギの最大の意義は?
完全養殖技術の最大の意義は、ウナギの供給量を将来的に安定化させることにあります。天然のシラスウナギの採捕量は年々減少し、変動も激しいのが現状です。
田中特任教授は「生態系を守ることに加え、養鰻業という産業を守る上でも、稚魚を安定化させるっていうのは非常に重要」と語ります。
天然資源への依存を減らし、持続可能な食文化を守るため、完全養殖技術のさらなる発展が期待されます。
(「newsおかえり」2026年5月29日放送分より)
最終更新:06/03 17:18


