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相次ぐ高齢ドライバーの事故 でもむやみに免許を取り上げるのは・・・「返納」以外の新たな選択肢とは 事故増加の背景には日本のインフラ構造 専門家解説

06/06 12:00 配信

高齢者の運転と安全両立のために

 高齢ドライバーによる事故が相次いでいます。免許の自主返納の必要性が指摘される一方で、生活の足を失うことへの不安も根強い問題です。

 ドライバー個人の能力だけでなく、日本の「交通インフラ」そのものに潜む課題。そして「最新技術」がもたらす可能性とは。

 事故の背景にある構造的な問題と、社会全体で取り組むべき対策について深掘りします。山梨大学大学院の伊藤安海教授の解説です。

【動画】相次ぐ事故、でもドライバーは不足・・・ 高齢者の運転、安全との両立は?

相次ぐ高齢ドライバー事故、背景に「人手不足」と「高齢化」

送迎バスのドライバーは85歳だった

 高齢ドライバーによる事故が相次いでいます。
 先月29日、名古屋市で85歳の酒井照也容疑者が運転するスイミングスクールの送迎バスが男女2人をはね、死亡させました。酒井容疑者はひざの状態や体力を理由に一度は退職していましたが、「暇なら手伝ってほしい」と誘われ復帰していました。
 
 先月6日には、福島県郡山市の磐越自動車道で68歳の男が運転するマイクロバスが横転し、男子高校生1人が死亡、20人が重軽傷を負いました。若山哲夫容疑者は事故前に2回、警察から免許返納を促されていました。1回目は「70歳まではなんとか」と返答していたものの、その後には返納の意思を示していたということです。

高齢ドライバーの割合と事故の関係

 交通死亡事故全体のうち、75歳以上の運転者によるものの割合は増加傾向にあります。伊藤教授は、事故が増えているのは「高齢ドライバーの数が増えているから」であり、個々の事故率が上がっているわけではないと指摘しました。

伊藤教授
「社会の高齢化にともない、高齢ドライバーによる事故も増えています。また、高齢者は軽い事故でも比較的亡くなりやすく、死亡事故に占める割合は自然と多くなります」

他の産業に比べバス運転手の高齢化はより深刻

 バス運転手の高齢化は、より進んでいます。
 バス運転手の総数は2020年以降急減しています。2025年のデータではバス運転手の平均年齢が56.0歳と、全産業平均の44.4歳を大きく上回っています。有効求人倍率も全産業平均の1.14倍に対し、バス運転手は2.07倍と突出しており、人手不足から高齢ドライバーに頼らざるを得ない構造がわかります。

伊藤教授
「バス運転手はもともと高齢化が進んでいたところに、コロナ禍でバスの需要が減った。そのタイミングで引退する人が増え、その後の補充ができていません」

免許に年齢制限設けるべき? 専門家は「安易に設けるべきでない」と指摘

運転免許に年齢制限は必要か

 高齢ドライバーの問題に対し、一律の「年齢制限」を設けるべきだという意見もありますが、伊藤教授は「安易に年齢制限を設けるべきではない」と指摘します。
  第一の理由は「年齢と運転能力は必ずしも一致しない」という点です。伊藤教授は「年齢ではなく、個々の運転能力や健康状態に基づいて評価すべき」と主張します。

伊藤教授
「私自身、たくさんの方の運転能力を研究してきましたが、60代半ばぐらいから80代前半ぐらいというのは、いろんな能力の方が混在しています。かなり能力が落ちている人もいれば、ほとんど落ちていない人もいる。年齢ではなく、いかに能力を見極めるかが重要だと思います」

山梨大学大学院の伊藤安海教授

  第二の理由は「技術の発展」です。
 最新のドライブレコーダーは、急ブレーキや急発進、速度超過といった運転データを記録できます。伊藤教授は「データに基いてドライバーの運転の特徴やその日の状態をはかることができるようになっている」と説明しました。
 さらに、AIを活用することで脇見運転や一時不停止なども自動で判別できるようになってきており、こうした技術を使えばより客観的できめ細かい評価が可能になるとの考えを示しました。

ドライバーだけが問題ではない 日本の「交通インフラ」の課題

交通インフラそのものにも注目を

 伊藤教授は、「ドライバーだけでなく交通インフラにも目を向けるべき」と問題の視野を広げる必要性を訴えます。
 日本の道路は、時速50kmや60kmで車が走行するような幹線道路でも、ガードレールがない場所が多く存在します。こうした環境では、運転手が年齢に関わらず急病などで意識を失った場合、歩行者や自転車が事故に巻き込まれるリスクが高いといえます。

伊藤教授
「欧米と比べると(日本のガードレール設置率は)かなり低い。結果として日本は歩行者や二輪車の死亡事故が多い。交通事故による日本の社会的損失は年間約1兆円に上るというデータがあります。もっとインフラにお金をかけて安全にしていくことが重要です。また、歩行者と車が分離されていない道路は自動運転に不向きで、普及を妨げる一因にもなっています」

「返納」か「継続」か?判断を助ける新たな選択肢

秋田県警の取り組み

 免許を返納するかどうかの判断は、本人や家族にとって難しい問題です。

 判断を助ける取り組みとして、秋田県警は2017年から、希望者にドライブレコーダーを貸し出す取り組みをおこなっています。1週間ほど運転状況を記録した後、警察官と大画面で映像を確認し、安全運転指導を受けるというものです。受講者からは「自分の運転の癖・特徴が分かった」「普段運転している道路の危ないところが分かった」などといった声があがりました。客観的な視点から自身の運転を見つめ直し、免許返納の判断材料として活用されているようです。

新たな選択肢「サポートカー限定免許」

 また、免許返納以外の新たな選択肢として「サポートカー限定免許」制度もあります。
 これは、高齢運転者などを中心に、本人の申請によって運転できる自動車を「サポートカー」に限定する免許です。「サポートカー」は、衝突被害軽減ブレーキやペダル踏み間違い時の加速抑制装置などが搭載された車両です。免許の申請はいつでも可能です。

伊藤教授
「高齢ドライバーが起こしやすい事故の形態は、むしろ車で守りやすい。ただ、高齢になると新しい車に慣れるのも難しい。60代くらいの段階で早めにサポートカーに乗り換えることも事故を防ぐための大事な選択肢になります。これから高齢者になる方が早めに乗り換えれば、5年後10年後の高齢者の事故を減らせるかと思います」

 むやみに高齢者から運転免許を取り上げるのではなく、これから増える高齢ドライバーを社会の仕組みづくりの段階から支えていくという発想が重要になってきそうです。

(2026年 6月4日 newsおかえり)

最終更新:06/06 12:00

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