関西ニュースKANSAI
大阪教育大学付属池田小の生徒死傷事件から25年 学校の安全対策どこまで進んだ? 今なお「人の努力」に頼らざるを得ない現状も・・・
06/08 21:41 配信
大阪教育大学付属池田小学校で23人が死傷する事件から8日で25年となり、学校では追悼行事が開かれました。
事件後、教育現場の安全対策はどう変わっていったのか。
事件後、付属池田小の校長にも就任した、大教大で教育現場の安全を研究する藤田大輔教授を大阪府警担当記者が取材してきました。
8人犠牲の事件から25年 校長「風化は学校安全の取り組みの後退を意味する」
宣誓する児童
付属池田小学校では事件が起きた時刻と同じ、8日午前10時すぎ、犠牲となった児童の名前が刻まれた「祈りと誓いの塔」の鐘が鳴らされ、在校生や遺族らが冥福を祈りました。
児童を代表し6年生の3人が学校の安全に対する決意を述べました。
児童代表
「25年前のきょうという日からたくさんの人たちが紡いできた大切な思いの数々を自分たちがしっかりと受け継ぎ、附属池田小学校だけではなく安全・安心に包まれた社会を担う存在になっていくことをここに誓います」
2001年6月8日、男が刃物を持って校舎に侵入。児童らが次々と襲われ1年生と2年生の児童8人が死亡し、教員を含む15人が重軽傷を負いました。
男は宅間守元死刑囚で、2003年に死刑判決が言い渡され同年に確定し、翌年、刑が執行されました。
荒川真一校長
この事件をきっかけに各地の学校で安全対策が見直されてきました。
一方で校長は当時を知らない教員が多くなっていることに触れ、事件の記憶の風化防止を呼びかけました。
荒川真一校長
「本校で起きた悲惨な事件が風化していくことは、子どもたちを守る学校安全の取り組みが後退していくことを意味します。この6月8日をすべての教育に関わる人々が本校で起きた悲惨な事件を自分ごととして捉える機会としていただき、それぞれの学校安全の体制について改めて見つめ直していただきたい」
中本達也記者
事件から25年、学校の安全対策の今は。
藤田教授を取材した大阪府警担当・中本達也記者と共に事件当時の状況と比較します。
要因① 校門の施錠:「施錠されていれば侵入しなかった」と元死刑囚語る
要因① 校門の施錠
事件で、被害が拡大することになったとされる、第一の要因は「校門の施錠」でした。事件当時、学校の正門は施錠されていましたが、自動車用の通用門は開いたままでした。
宅間元死刑囚はこの通用門から校内に侵入したといい、裁判でも「施錠されていたら門を越えてまで侵入しなかった」という趣旨の供述を残しています。
現在は登下校時以外は門を施錠し、インターホンで来校者を確認する体制が取られています。
中本記者
「この事件をきっかけに校門の施錠の重要性が認められるようになりました。国からも呼びかけられて、教育現場の防犯体制が変わったといって過言ではない事件だったと思います」
要因② 教員の声かけ すれ違っても「不審者と思えず」…見過ごされた危険信号
要因② 教員の声かけ
第二の要因は「教員の声かけ」。
事件直前、校内で教職員が侵入した宅間元死刑囚とすれ違い、会釈をしました。
しかし宅間元死刑囚は無視。
それでも教職員は、その人物を「不審者とまでは思わなかった」といいます。
現在では、来校者には入校証を配布して教職員が引率し、「“部外者”には必ず声かけ」をするルールが徹底されています。
中本記者
「事件当日は、午後に算数の研究発表会が予定されていました。そのため自動車の出入りが多いことも予想され、開けていた門からたまたま宅間元死刑囚が入ってきてしまったというのが事件の背景といえます。」
要因③ 初期対応の遅れ:救える命はあったか?マニュアルなき現場の混乱
要因③ 初期対応の遅れ
第三の要因は「初期対応の遅れ」です。
当時、病院への搬送開始に約20分かかった児童もいて、亡くなった児童8人の死因は失血死でした。
迅速な避難誘導や救命活動が行われていれば、助かった子どもがいた可能性もあったといわれています。
中本記者
「当時、不審者が学校に入ってきて児童を殺傷するということに対してのマニュアルがなかった。対応できる体制が全く取れていませんでした。不審者の対応に終始して、怪我人が後回しになってしまった」
この教訓から、現在では全国の学校で「危機管理マニュアル」が作成され、付属池田小学校では不審者対応訓練が年に5回実施されています。
テクノロジーを活かした防犯の時代に 防犯カメラの設置
防犯カメラを活用する箕面市
では子どもたちを守る今はどうなっているのでしょうか。
子どもの安全に力を入れている自治体を取材すると、テクノロジーを活用して防犯対策をしていました。
大阪府箕面市では、児童が行き交う通学路に数多くの防犯カメラが設置されていました。
市によると、大阪府内でもトップクラスの多さだといいます。
箕面市市民安全対策課 西本賢治さん
「市内の通学路には829台の防犯カメラがついています。公園にも311台設置しています」
市内には、自治会が設置したものを加えると2000台を超える防犯カメラが設置されていて、1校あたり50台以上のカメラで子どもたちを見守っています。
カメラは事件が起きた際に犯人の検挙に繋がるよう、取り付ける場所や角度について警察からアドバイスを受け設置しているといいます。
西本さんによると、街頭犯罪の認知件数は、設置当時の2014年と比べて約3分の1にまで減ったということです。
スマートフォンで子どもを見守る取り組みも進んでいます。
「ミマモルメ」というサービスで、子どもが学校に着いた際や学校から出たときに保護者へ通知します。子どもに500円玉ほどの大きさの「タグ」という小さなデバイスを持たせると、校門の近くにある受信機と反応して、保護者に通知が届きます。
兵庫県伊丹市では、校門だけでなく、通学路でも定点的に見守りができるサービスを導入しています。子どもたちが通学路の交差点などをいつ通ったかという履歴が残るというもの。ミマモルメは各家庭が、任意で加入するもので、月額440円からです。
市の担当者は、学校の外での犯罪から子どもをいかに守るかが重要だと言います。
伊丹市都市安全企画課 落久保宏朗さん
「学校の中の見守り、子供さん安全というのはどうしても閉鎖的なところがあると思う。一歩学校を出てしまって町中に出てしまうと、学校の中にないような子供の安全を脅かすものがありますので、ミマモルメや防犯カメラで犯罪を抑止できていると考えています」
「人の努力」に頼らざるを得ない安全対策 「ハード」の整備には資金面が壁
学校の安全対策の課題
学校の安全対策は全ての学校で十分に進んでいるわけではありません。
文部科学省の2023年度の調査によると、全国の小中高校などにおける安全対策の実施率は、「カメラの設置」などハード面での遅れが目立ちました。
ハード面である「防犯カメラ設置」が64.6%、「警備員配置」はわずか8.0%に留まっています。
一方、「ソフト面」では「児童生徒への安全指導」が92.6%、集団登下校が65.4%、地域の人の見守りが34.5%と、一定程度実施されていることがうかがえました。
中本記者
「『ハード』はお金がかかってしまうところが一つ難しい点だと思います。あとは、教室内のどこにどれぐらいカメラを設置していくのかという議論もあります。教室を更衣室として使うケースもあるので、プライバシーの問題もあります」
(「newsおかえり」2026年6月8日放送より)
最終更新:06/08 21:41


