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「子どもがほしい」精子提供で出産した我が子は2歳に 夫婦が歩んだ5年間と迷う“告知”の方法
06/16 12:00 配信
精子提供で子どもを授かった夫婦
子どもがほしい、「元女性のパパ」が妻と選んだのは、SNSでの“精子提供”でした。妊娠への期待、出産の喜び。そして、子どもに“出自”をどう伝えるのかという葛藤。夫婦の5年間に密着しました。
SNS通じた精子提供での赤ちゃん誕生 父親は元女性
ともやさんとあかりさん夫婦
2023年に生まれた、一人の男の子。父親は元女性で、血のつながりはありません。我が子を授かるために夫婦が選んだのは、精子提供でした。
兵庫県に住む、ともやさんとあかりさん夫婦。2人を初めて取材したのは、5年前の2021年でした。当時は、顔を出さない条件で撮影に応じてくれました。
ともやさん
「僕自身が子どもが大好きだから。やることやって、それでも無理だったら諦めようかという感じで。やることやらずに何もせずに子どもを作らないという選択肢はなかった」
ともやさんは女性として生まれ、23歳の時に性転換し、戸籍上は男性になりました。職場で出会ったあかりさんと結婚後、諦めきれなかったのが“パパ”になる、という願いでした。
妊娠・出産のために最初に考えたのは国内で認められている病院での精子提供でしたが、病院は応じませんでした。
あかりさん
「(ここの)病院ではそれはできないというのを、けっこうきつく言われてしまって。頼れるところは病院じゃないんだなと思った時に、自分たちで探すしかないよねっていうので、SNSで」
SNSで精子提供者探し 突然連絡がつかなくなる提供者も・・・
SNSで精子提供者探し
2人はSNSを通じて精子提供者を探すことにしました。
「提供してもいい」という男性と何度もメッセージのやり取りをした後、実際に会うことになりました。
ともやさん
「どんな人やろうな・・・。明石やから近くて嬉しいんですよ。だからこれでよかったらすごくいいなって思うんですけど」
あかりさん
「しっくりきた人を見つけたいところではありますよね」
ともやさん
「頼む~って思っています」
相手の男性は、兵庫県に住む20代でした。
ともやさん
「駐車場・・・ロータリーか」
男性の電話番号も知らないため、メッセージを送りました。
あかりさん
「ちゃんとした待ち合わせ場所決めてないってこと?」
ともやさん
「そう。明石駅周辺でって・・・ちょっと待って。これやられたかもしれん」
ともやさん
「メッセージが送信できませんってどういうことですかね」
やりとりしていた男性と突然連絡が途絶える
突然、男性と連絡が取れなくなりました。その後、やりとりしていたアカウントも消えてしまいました。
ともやさん
「『僕一人で行きます』(と送信すると)返って来なくなった」
SNSを通じた精子提供では、提供を申し出た男性が性行為を目的としている恐れがあるといいます。
2人もこの方法には一抹の不安を抱いていました。
あかりさん
「同じような悩みを持った人が、これから絶対出てくると思うんですよ。その時に自分たちのやり方が、その人たちの選択肢の一つになったらすごく救われるので、そういう意味でも頑張りたいかなと思います」
ついに見つかった精子提供者 そして・・・
緊張の精子受け取り
精子提供者を探し始めてから約1年が経った2022年。ついに提供してくれる男性が見つかりました。
初めての取材から半年がたち、ともやさんとあかりさんは、この日から顔を出して撮影に応じてくれることになりました。
駅前で待ち合わせしているのは、兵庫県に住む30代の男性。リモートで話した中で一番印象が良かったといいます。
駅に到着して15分ほどで、ともやさんは戻ってきました。
ともやさん
「容器だけ渡すと、(男性はすぐに)戻ってきはりました」
あかりさんは、その後も何度か精子提供を受けました。そして半年後、妊娠がわかりました。
あかりさん
「たぶん男の子って言われた」
あかりさんの出産 新型コロナでともやさんは立ち会えず
これまでを振り返りながら子どもの誕生を喜ぶともやさん
2023年、子どもを迎える準備を進める中、予定日より1週間早くともやさんから連絡がありました。
(Q.今どういう状況ですか)
ともやさん
「連絡こなかったので、自分から電話したら『もう分娩室入ってます』って」
当時は新型コロナウイルス禍の最中。ともやさんが出産に立ち会うことは叶いませんでした。
取材中、ともやさんに着信がありました。あかりさんが出産したという連絡です。
ともやさん
「いろいろ感じますね。女として生まれて、いろいろありましたけど、パパになれるのはうれしいですね。ひさしぶりに泣きました。(赤ちゃん)見たらどうなるんやろう」
ともやさんと赤ちゃんは、テレビ電話で初対面を果たしました。
2人の赤ちゃんは2歳に 迷う“告知”のあり方
夫婦と太鼓で遊ぶあおくん
2025年10月、赤ちゃんが生まれて2年が経ちました。子どもの名前はあおくん。2歳になっていました。
精子提供で子どもを授かる選択をした時から、夫婦で決めていたことがあります。それは、どうやって生まれてきたのかを、あおくんにきちんと伝えて“告知”をするということです。
子どもにいつ告知するのか
精子提供で生まれる子どもは毎年100人ほどいて、子どもが遺伝上の親を知る権利が世界的に主張され始めています。
今年2月までの調査では、精子や卵子の提供を受けて子どもができた家庭のうち、2歳までに13%、6歳までに57%、10歳までに85%が子どもへ告知をしています。
ともやさんとあかりさんも、告知の準備を進めていました。
絵本で伝えることを試みる
ともやさん
「今ちょっとずつ絵本を集めています」
あかりさん
「見て。ママが2人の家族もいるし、パパが2人の家族もいるんだよ」
あおくん
「うん」
絵本を通して伝えていたのは、精子提供に限らずいろんな家族の形があるということ。ですが、あおくんは長い時間を集中して絵本を読むのは、まだ難しい年齢です。
あおくん
「おしまい!」
ともやさん
「今はこんな感じ。自分たちの練習みたいな感じなので、いろんな家族がいるんだよっていうのを伝えながら、それが変じゃないってことを伝えています。」
(Q.あおくんの反応は?)
あかりさん
「まだ響いてはない。でもそれはそれでいいなと思っていて。相手の反応がどうとかより、自分たちが伝え続けることの方が今は大事なんじゃないかと思うので。」
ともやさん
「(あおくんが)大きくなるにつれて、根拠のない不安はありますね。4~5歳になった時に、どんな反応をするのか全く想像つかない。毎回お風呂に入るたびに『いつか言ってくるんかな、この子は』と思うこともあります」
2人は改まって告知するのではなく、日々の暮らしの中で、あおくんに家族の形について繰り返し伝えています。
風呂場であおくんが答えたのは…?
ともやさん
「あおくんは何色が好き?」
あおくん
「あおくんは~紫が好き」
ともやさん
「ママは女の子?男の子?」
あおくん
「女の子」
ともやさん
「あおくんは?」
あおくん
「男の子」
ともやさん
「パパは?」
あおくん
「・・・わからん」
ともやさん
「ハハハ!そうやな。パパは元々、前は女の子で今は?」
あおくん
「わからん」
ともやさん
「あおくんのパパ」
あおくん
「パパ」
ともやさん
「そう、男の子だよ。たくさんの人に助けてもらってあおくんが生まれたんだよ」
あおくんの反応の変化を語るともやさん
ともやさんは2歳になったあおくんの反応に、変化があったといいます。
ともやさん
「昨日は『パパは?』って聞いたら『男の子』って言ったんですよ。今日は初めて『わからん』って言ったので、おもしろかったです。笑っちゃいました。わからんくなってきたんや、逆にと思って」
あかりさん
「(パパは)前は女の子、今は男の子って言う時がくるかもしれんな」
ともやさん
「そう。成長過程の中で言葉が変わってくるのはおもしろいですよね」
その時々によって変わるあおくんの言葉や気持ちを、そのままの形で受け止める。それが2人の向き合い方です。
あかりさん
「パパは女の子だったんだけど、男の子になりたくて頑張って男の子になったんだよ」
あおくん
「うん」
あかりさん
「それであおくんに会いたいって思ったから、優しい人に協力してもらってあおくんが出てきてくれたんだよ」
あおくん
「うん」
試行錯誤しながら告知の方法を考える夫婦
あかりさん
「まだ『え!そうなんや!』みたいな感じではもちろんなくて、スンってしてるんですよ。わかってはいないかもしれないですけど、(普段のいろいろな話が)彼の中でリンクしてきたらいいなって思って」
2人で決めた、精子提供で子どもを授かるという選択。悩み迷いながらも、ずっと変わらない思いがあります。
ともやさん
「愛情は常に伝えているつもりなので。何よりも、僕らが(あおくんに)会いたくてその選択をしたことは、間違いなく伝えたい」
最終更新:06/19 10:02


