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【徹底取材】「ながら運転」は法改正でも危険運転の対象外 厳罰化を望む遺族の障壁とは

07/09 19:00 配信

誕生日を迎えたばかりの1歳児も犠牲に・・・増加する「ながら運転」(神農煌瑛(かみの・こうえい)ちゃん・両親提供)

 全国で相次いでいる、スマホなどを操作しながら車を運転する「ながら運転」による重大事故。
 去年の死亡・重傷事故件数は過去10年で最多の148件に上りました。
 
 ところが、現行法では、量刑がより重い「危険運転致死傷罪」の対象には含まれず、
量刑の “軽い” 「過失運転致死傷罪」でしか裁けないのが現状です。

 厳罰化を求める遺族の声は・・・。

遺族の1人の声
「法治国家なのに危険運転致死傷罪で裁かないとなるなら、どうしようもないじゃない」

 ながら運転による事故で幼い我が子を亡くした遺族を取材し、思いに迫りました。

【危険運転の壁】時速65キロで運転中に助手席のサンダルを取ったか・・・“自動運転”の「ながら」運転で奪われた1歳息子の命 厳罰化求める両親の闘い

三重・新名神高速で6人死亡の事故 「TikTokで料理動画を見ていてスクリーンショットを撮影しようと・・・」初公判で判明した驚きの状況

6人が死亡した三重県・新名神高速の事故 3月20日

 3月、三重県亀山市の新名神(しんめいしん)高速で、渋滞の車列に大型トラックが突っ込み、車2台に乗っていた、子ども3人を含む6人が亡くなりました。

 事故の原因とされているのは「ながら運転」です。

 トラックを運転していたのは、水谷水都代(みずたに・みつよ)被告(54)。
 過失運転致死の罪に問われ、初公判で、事故当時の「ながら運転」の実態が明らかになりました。

(検察の冒頭陳述によると)
「(水谷被告は)事故の直前はTikTokで料理動画を見ていて、スクリーンショットを撮影しようと、およそ13秒間脇見をしながら、時速82キロで運転していた」

 水谷被告は、日常的にスマホで動画を見ながら運転していたとみられています。

「危険運転致死傷罪」法改正で飲酒と速度の「数値基準」導入 “ながら運転”の追加は見送り

法改正も危険運転への「ながら運転」追加は見送り

 6月、改正自動車運転処罰法が可決・成立し、「危険運転致死傷罪」の要件に飲酒と速度の「数値基準」が新たに導入されました。

一方、見直し内容に盛り込まれなかったのが「ながら運転」です。

 「ながら運転」による死亡・重傷事故は、年々増加し、去年は148件と、過去10年で最多に。
 しかし「ながら運転」については、悪質性が高いものを限定するのが難しい・立証するハードルが高いなどの理由から、危険運転致死傷罪の対象に加える議論は深まりませんでした。

ながら運転は「自動車を使った殺人」 法改正や厳罰化を望む遺族の声

同様の事故を起こさないために・・・遺族のメッセージ

 カメラに向かってほほえむ家族。
 新名神の事故で亡くなった6人のうちの、5人家族です。
 遺族は、二度と同じような事故が起きてほしくないという思いから、報道機関に写真を提供しました。

(松本さん一家の遺族のコメント)
「この事故をきっかけとして、運転中の携帯使用に関する厳罰化等の法改正も含めた検討をしていただきたいと考えております。
 社会が何も変わらなければ、6人の命が無駄になりかねません」

遺族は「自動車を使った殺人」とコメントも

 そして、被害者の1人、高峰啓三さんの遺族は、こうコメントを寄せています。

(高峰啓三さんの遺族のコメント)
「このような無責任な運転によって大切な夫、父を亡くしたことは本当に悔しく、また被告人に対しては怒り、憤りしか感じません。
 これは単なる『事故』という言葉で済まされるものではなく、自動車を使った『殺人』であると強く感じています。啓三をはじめ6人もの命を奪った『殺人』です」

1歳の誕生日迎えたばかりの息子を事故で・・・ 原因は「ながら運転」

三重県の事故にも心を痛める・・・「ながら運転」事故遺族の思い

 ながら運転による事故で、わが子の命を奪われ、苦しみ続ける遺族が大阪にもいました。

(新名神事故の記事を見たときは、やはり「ながら運転か」と感じましたか?)
神農彩乃さん
「やっぱりかというか、それ以外ないよねと思いました」

 大阪市に住む神農彩乃(かみの・あやの)さん。息子の煌瑛(こうえい)ちゃんを「ながら運転」による事故で亡くしました。

事故で亡くなった煌瑛ちゃん(1)(両親提供)

彩乃さん
「故意に殺そうと思ってやってないから、殺人じゃないって話なんでしょうけど、でも(運転中に)故意に運転以外のことをしないと事故が起きないのに、どうしてそれが殺人じゃないんだろうと」

 事故は2024年9月、高知県の自動車専用道路で起きました。

 竹﨑寿洋(たけざき・としひろ)被告(62)の運転する車が対向車線に飛び出し、神農さん家族が乗った車に衝突。

 彩乃さんと夫の諭哉(ゆうさい)さんは重傷を負い、後部座席のチャイルドシートにいた煌瑛ちゃんが全身に強い衝撃を受けて亡くなりました。

諭哉さん
「自分自身もすごく痛かったけども、なんとか車から降りて息子の元に駆け寄った。
 すぐ人工呼吸だったり『戻って来い、戻って来い』と、叫びながらしていたのは、未だに鮮明に覚えています」

 1歳の誕生日を迎えたばかりだった煌瑛ちゃん。

彩乃さん
「(煌瑛ちゃんの姉が)1歳になってからも踊っているのを見ると・・・ 今度は一緒に踊っていたので、これからもっと踊ったり歌ったりするから、楽しみだと思っていたんですけど」

運転中にサンダルに履き替え? 運転支援システムが解除され対向車線に突っ込んだか

事故の瞬間をとらえた 神農さんの車のドライブレコーダー

 事故は、どのようにして起きたのでしょうか?

 竹﨑被告は運転支援システムを使って、自動車専用道路を走行していました。
 そして、運転中にシートベルトを外します。

運転中にサンダルに履き替えようと・・・

 助手席の足元にはサンダルがありました。被告はサンダルに履き替えようと、走行中にもかかわらず、左手を大きく助手席の下に伸ばします。

 この時、体のバランスを崩し、右手で掴んだままだったハンドルが大きく右へ回転。
 被告による事故直前のこのハンドル操作で、運転支援システムが解除され、車は対向車線に飛び出したとされています。

起訴された竹﨑被告

 去年8月、検察は竹﨑被告を過失運転致死傷罪で在宅起訴。
 「過失」という扱いに、神農さん夫妻は到底納得できませんでした。

被告の運転は危険運転致死傷罪の対象外 神農さん「法治国家なのに・・・」

厳罰化求め署名活動も・・・

彩乃さん
「こんなに『ながら』が増えたのに、危険運転(致死傷罪)に入れないとなったら、法治国家なのにそれで裁かないとなるなら、もうどうしようもないじゃない」

危険運転致死傷罪と過失運転致死傷罪の違い

 過失運転致死傷罪の刑の上限は拘禁刑7年。一方、危険運転致死傷罪の上限は拘禁刑20年と、大きな差があります。

署名活動の際の諭哉さん

 現在、危険運転致死傷罪の対象となるのは、飲酒運転・制御困難な高速度・赤信号の無視など。「ながら運転」は対象に含まれていません。

 こうした現状をうけ、神農さん夫妻は「この事故を決して『過失』ですませてはいけない」という思いで、悪質な「ながら運転」の厳罰化を求める署名活動を始めました。

 活動の結果、集まった署名は約17万筆に上りました。

裁判が始まり、明らかになった事故当日の状況 被告は「事故の少し前からその日の夕方まで記憶がありません」

事故当時の状況が明らかに(初公判の竹﨑被告の様子 イラスト:岩﨑絵里)

 「本当のことを話してほしい」という思いを胸に、初公判に臨んだ神農さん。

 罪状認否で、竹﨑被告は起訴内容を認めた上で、こう話しました。
 「事故の少し前からその日の夕方まで記憶がありません」

 しかし、関係者への取材で、被告は当時、ドレスコードのあるゴルフ場からラーメン屋に向かう途中だったことがわかりました。
 さらに、裁判で検察官が被告の供述調書を読み上げ、こんな事実が明らかになりました。

被告は日常的に運転しながら上着や靴を履き替えていたとされる

(被告の供述調書・検察の証拠調べから)
「上着を脱いだり、靴を履き替えたりするのは、ゴルフ場から出た後、車を運転しながらしています。タンクトップと革靴だと、見た目のバランスが悪いので」

 被告は運転支援システムを使うことで、運転しながら上着やズボンまでを日常的に着替えていたというのです。

 裁判で明らかになった事故当時の状況に、彩乃さんは・・・

悪質な「ながら運転」は過失ではないと訴える彩乃さん

彩乃さん
「そもそも誰がどう聞いたって、今回の着替えはもちろんですけど、スマホで動画のスクリーンショットを撮ろうとしていたとか、危険だという認識なく運転をしていて、何の罪もない人に突っ込んで命を奪ったのであれば、それは過失ではないと思うので」

 その思いとは裏腹に「ながら運転」は「過失」としてしか裁けないのが現状です。
 煌瑛ちゃんが亡くなった事故の裁判の判決は、7月15日、高知地裁で言い渡されます。

取材に応じる彩乃さん

彩乃さん
「絶対に重い判決を勝ち取らないと、こうちゃん(煌瑛ちゃん)に何と声をかけていいのか分からない状況はずっと変わらないですし、未来に向けて重い判決を勝ち取らなきゃいけないのは、最初から現時点でも変わらないです」

有識者は「危険運転致死傷罪への追加は可能」 「ながら運転」による事故を減らすためには?

元最高検検事 昭和医科大学医学部・城祐一郎教授

 相次ぐ「ながら運転」による事故。
 元最高検検事で昭和医科大学の城祐一郎(たち・ゆういちろう)教授はこう話します。

昭和医科大学・城祐一郎教授
「これだけ『ながら運転』による大きな事故がある以上、国民を悲惨な事故から守るという意味で、国家として危険運転の類型に組み入れる。
 そして、ながら運転は重い処罰の対象になると警告を与える。ひいては悲惨な事故を減らしていく方向に動くだろうと思います」

(「newsおかえり」2026年7月7日放送 特集「ウラドリ」より)

最終更新:07/09 19:00

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