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水難事故から子どもを守るために…川の危険性を見極める2つのポイント

07/14 20:00 配信

水の事故から身を守るには

 本格的な夏を迎え、厳しい暑さが続く中で増えているのが痛ましい水難事故です。

 とりわけ流れが速い川での水難事故は、人の命に直結しやすく、警戒が必要です。専門家は、川特有の危険性を認識する必要があると指摘します。

 日本水難救済会の理事長で、元海上保安庁職員の遠山純司さんが解説します。

男子高校生2人が川で溺れて死亡 水遊びで流され助けようと続いたか

子ども特有の行動パターンが水難事故を招く

子どもの川遊びの特徴

 今年も水難事故のニュースが後を絶ちません。7月9日、福岡県大野城市と滋賀県湖南市でそれぞれ高校生や中学生が関係する事故がありました。
 
 遠山さんは、子どもだけの川遊びには、事故につながる特有の行動パターンや心理が働いているといいます。

 子ども同士で川に行く際、最初は「泳ぎに行く」ことが目的でないことが多くあります。「ちょっと寄り道しよう」「ちょっと涼もう」といった軽い気持ちで川に近づき、最初は「足首だけ浸かろう」と思っていたのが、「どうせ濡れてしまったから泳いでしまおう」というように、段階的に行動がエスカレートしていきます。

 ライフジャケットや浮き輪などを身につけないまま泳ぎ始めてしまうため、不意に急な深みにはまると溺れてしまうおそれがあるのです。

 集団心理で無理な行動が生じることもあります。泳ぎに自信がなかったとしても、「周りの友達がみんな泳いでいるから」という同調圧力によって水に入ってしまうことがあります。

「川は生き物」前回は大丈夫でも今回は危ないかも

川の危険性とは

 遠山さんが指摘する川の危険性とはーー。

①上流の天候による急な増水
自分がいる場所が晴れていても、上流で雨が降っていれば川は増水します。一般的に、雨が止んでから3日間程度は増水した状態が続くため、天気が回復した後も警戒が必要です。

②深さは一定ではない
川は手前が浅くても、急に深くなったり、流れが速くなったりします。去年浅かったところが今年は「急な深み」に変わっていることもあります。

③足元の不安定さと滑りやすさ
川の石は不安定で、藻が生えていることも多いです。非常に滑りやすいため、バランスを崩してそのまま深い流れの中に転落するおそれがあります。

遠山さん
「川は生き物です。1週間前に行って大丈夫だったからきょうも大丈夫だとは思わないことです。完全に安全な川はないという意識をもっておくことが重要です」

川の危険性を見極めるための2つのポイント

川の危険性を見極めるポイント

 水辺に近づく際、肉眼で危険を察知するために重要なポイントが2つあります。

① 水面を流れるものの速さ
川の流れの速さを測る際は、水面を流れる木の枝や葉っぱに注目してください。もし水面の葉っぱが「ゆっくりとしたジョギング」くらいの速度で流れていれば、水中の流れは「オリンピックの水泳選手級」です。見た目よりも川の流れはかなり速いと意識してください。

② 水面のグラデーション
岸の近くの水が澄んでいても、少し離れた場所が「エメラルドグリーン」に変化している場合、そこは急激に水深が深くなっているサインです。色の境目から先は一気に足がつかなくなる深さになっている可能性が高いため、安易に足を踏み入れてはいけません。

子どもを守るため、大人が気を付けるべきこと

川や海に行くときの装備は

 子どもの水難事故を防ぐためにも、大人はより注意すべき点があります。

 遠山さんは、水辺へ行く前に波浪注意報や強風注意報が出ていれば、川や海でのレジャーは断念すべきだといいます。

 水難事故を未然に防ぎ、発生時に命を救うためには正しい装備も不可欠です。

 海や川に入る際は、ライフジャケットとマリンシューズの着用が必須です。サンダルは流されてしまうことが多く、追いかけると溺れる危険性があるので履いて水中に入らないでください。

 遠山さんは、いざという時に命を救う「スローロープ(袋ごと投げるロープ)」を持って行くことも推奨します。

ママパパポジションとは

 遠山さんは、子どもから「目を離さない」ではなく「離れない」ことが大事だといいます。

 溺れたときに声を出すことは困難です。子どもから離れてしまうと、知らないうちに流されてしまうこともあります。そのため、「物理的に離れない」ことが重要になります。

 子どもと一緒に水に入ったときに保護者が立つべき位置は「ママパパポジション」などと呼ばれます。 川の場合は下流側、海の場合は沖側に立つことで、何かあればすぐに子どもに手を伸ばして引き留めやすくなります。

泳げる子どもが減少 背景にコロナ禍

泳げる子どもの減少

 ここ数年、泳げる子どもが減っています。

 小学6年の児童が「クロールで25メートル以上泳げる割合」は、2020年ごろを境に男女ともに大きく減少。コロナ禍の影響でプールの授業が中止または激減したことが影響しているとみられます。

水泳授業の意義

 国の学習指導要領では、水泳授業の意義の一つとして水難事故防止を挙げていますが、遠山さんは「事故防止のために授業をする余裕がいまの学校には無い」と指摘します。

学校の水泳授業は縮小傾向

 現在、多くの学校ではプールの授業が縮小傾向です。プールの老朽化や教員の負担、酷暑や豪雨で授業の実施や安全確保が困難になったことが主な理由として挙げられます。

 自治体によっては学校のプールを廃止し、民間のスポーツクラブ等へ授業を委託するケースが増えています。実技をやめて「座学」へ切り替える動きもあり、静岡県沼津市では、2025年度から市内17の中学校でプールの実技授業を廃止しました。

識者「先生も十分な知識を持っていない」

遠山さん
「水泳の授業で最も大事なことは、クロールや平泳ぎができるようになることではないと考えます。『泳げること』と『溺れないこと』は違います。水の危険から身を守るための『予防法・事故防止の知識』を教えることが最も大切ですが、先生方も水難を防ぐための専門的な知識や技能を十分に持っていないのが実情です」

 指導者不足を解消するため、日本水難救済会では新たなプロジェクトとして「水難予防指導者 講習・検定」をスタートさせました。

 正しい知識と技能をもつ指導者を養成するため、オンラインでの座学講習(水の危険性や備えの知識)と実技講習(流されたときの対応、泳ぎ方・浮き方などの指導)を組み合わせて指導者を育成する取り組みです。

日本水難救済会理事長の遠山純司さん

遠山さん
「交通事故はここ20〜30年で3分の1くらいに減っているのに、水難事故は減っていません。学校での水難教育は必須だと考えています。知識や技能をもった人が学校で先生に代わって指導することも見据えています」

(2026年7月13日 newsおかえり)

最終更新:07/14 20:00

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