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子育てはもはや高所得世帯の特権か 子どもがいる世帯の所得に変化 経済的事情が少子化に影響している現状とは “3高”から“3共”へ 結婚相手に求めるもの変化 専門家解説
07/20 17:00 配信
“結婚したいのにできない”、今の若者たちはどこに向かっているのでしょうか。日本では少子化に歯止めがかからず、2025年の出生数も過去最少を記録しました。結婚、出産、将来の人口問題にも影響を与えそうな若者たちの“本音”を、「人はなぜ結婚するのか」などの著者で、結婚や少子化の事情に詳しい立命館大学産業社会学部・筒井淳也教授に深堀りしてもらいました。
結婚で望むことが「経済的安定」なのは世界的傾向
結婚をめぐる若者の現実
国連人口基金(UNFPA)は7日、人口動態の未来に関する調査の結果を発表しました。この調査は日本を含む73の国・地域の18~39歳、約10万9000人を対象にしたものです。
この調査で、結婚したいと思っている人は約7割でした。決して若者が結婚に背を向けているわけではないことが明らかとなりました。一方で、結婚に踏み出すために重要なこととして、81%が「経済的安定」を挙げました。
この世界的な潮流について、筒井教授はこのように説明します。
筒井教授
「これは日本にも当てはまることですが、お金があれば結婚するというよりは、お金が越えなければならない1つのハードルになっているのです。それがクリアされたら次に相性などに進むという形になっています」
日本は“教育にお金がかかる” 欧米とは異なる東アジア特有の傾向
結婚したくてもできない背景に経済事情か
では、日本の子育て事情はどうなっているのでしょうか。筒井教授は、日本では「教育にお金がかかる」と指摘します。一定の所得がないと子どもに十分な教育を与えられず、子どもを幸せにできないという不安が強いというのです。幼稚園から大学まですべて国公立とした場合の学費の目安はおよそ820万円、すべて私立であれば約2200万円に上ります。
筒井教授
「日本独自というよりは、中国や韓国も含めた東アジアの傾向といえます。子どもは非常に大事な存在で、お金をかけてきちんと育てたいという思いが、欧米よりも強いといえます」
こうした状況にSNS上では、「1人でも生きていくのに精一杯」「大学まで育てるのに2000万なんて、お金があってこそだよね」「共働きすればどうにかなるんだけどな」「結婚後、経済的な責任を求められるのは男性。結婚を避けるのは当然」といった声が上がっています。
立命館大学産業社会学部 筒井淳也教授
筒井教授は日本の労働実態が依然として古い構造にとらわれていると指摘したうえで、女性が安心してキャリアを築ける環境が整うことで、こうした不安の一部は解消される可能性があると語りました。
筒井教授
「徐々にフルタイムでの共働きは増えてきていますが、まだ日本の場合は男性がメインで女性は補助的であるという古い考え方が根深い。体制もそれに近いところがあって、なかなか対等に稼いで世帯所得を増やしていこうという流れが進みきれていないところがあります」
結婚・出生の数はいずれも過去最少 筒井教授「上がるとは考えにくい」
結婚も子どもも減少傾向
経済事情への不安などから、婚姻数も減っていく傾向にあります。2025年の厚労省のデータでは、日本の婚姻件数は48万9119組、出生数は過去最少の67万1236人を記録しました。筒井教授は「2024年から2025年にかけて下がるスピードが少し鈍化した」としながらも、依然として低い水準のままだといいます。また、国の少子化対策の効果はみえにくいものだと説明しました。
筒井教授
「これから出産年齢にある女性の数がどんどん減っていくので、出生数が上がるということは考えにくい。また、少子化対策というのは国の政策の中でも効果が出にくいものです。じっくりと取り組むしかありません」
子どもは「所得の高い世帯」の特権に?
結婚・出産…数字で見る変化
実際に、子どもがいる世帯は所得の高い世帯にシフトしていることを示すデータがあります。
厚労省が15日に発表した国民生活基盤調査によると、子どものいる世帯の数は、2016年に約1166万世帯ありましたが、2024年には約907万世帯へと減少しました。
一方で、子どものいる世帯の平均所得金額は同期間に約739万円から約857万円へと上昇しました。筒井教授は、結婚・出産ができるのは、世帯収入が高い層に偏りつつあると指摘します。
筒井教授
「成長する余地がある国のほうが、これから社会は良くなるだろうという思いがある。日本に関しては、ここ30年ぐらいずっと止まっていた。給料も上がらず、実質賃金も上がらない。若い人は日本が成長していない時代をずっと生きてきたため、将来を楽観視するのは特に厳しい環境にあります」
ただ、日本でも、最近では賃金が少しずつ上昇する兆しも見られているほか、子育て支援も拡充されていて、筒井教授は「状況が改善する可能性もある」とみています。
筒井教授
「制度的には育児休業や児童手当は拡充されていきました。昔の子育て環境からすると、やりやすくなっているところもある。ただ、フルタイムの共働きに完全に対応できているのかというとまだできていないところがあるので、油断はできない。ただ、悲観的になるばかりでもないかなと思います」
大テーマ「普通」とは 結婚は“義務”から“選択”へ
「普通」の変化
若者の中で「普通のライフスタイル」への感覚の変化が起きていることも、結婚・出産の事情に影響を与えていると考えられます。
「恋愛→結婚→子どもを授かる」というライフコースは、かつて多くの人が当然のものとして歩んでいました。しかし現在は、そのモデルは変化しています。筒井教授は、かつて結婚は“義務”だったが、今は“選択”できるようになったと指摘します。
筒井教授
「以前は、結婚して子どもを持つというのが、人生を過ごす上での前提条件みたいな感じだったが、今は、幸せになれるのならする。その見込みがないのなら、わざわざすることはないという選択になってきた分、ある意味でハードルが上がっているところはあります」
かつての「3高」は「3共」に いや「3共」って何? 大人ができることとは?
「3高」から「3共」へ
結婚願望を持つZ世代の結婚観を見ると、かつての価値観からの変化がみられます。
まず、女性の男性への理想として「高収入よりも安定した収入」が挙げられました。筒井教授は「昔は高収入であれば他のことは妥協できたというのが、だんだんなくなってきた」ことが背景にあると分析しました。
次に、男女ともに求めるのは、かつての“3高”ならぬ“3共”だということです。“3共”とはいかの三要素のことです。
・ 共働き:2人ともフルタイムで働く
・ 共有:金銭感覚の一致、貯金額や借金の有無
・ 共同:一緒に資産形成に取り組む
筒井教授は一時的な経済的な好条件よりも安定性が重視されるようになり、資産の形成や関係性において、対等に育めることが重視されるようになったとみています。
以上のような若者の置かれた状況や傾向を踏まえ、筒井教授は「結婚・出産をしたい若者が実現できるように、職場の働きやすさなど条件をそろえることや環境を整えることが大人の役割だ」とまとめました。
最終更新:07/20 17:00


