CONCIERGE by ABC Announcers

第42回

着物とアンティークと私

桂 紗綾

桂 紗綾

温故知新
昔の物事を研究し吟味して、そこから新しい知識や見解を得ること。
故きを温ねて新しきを知る。(広辞苑より)

樟脳(しょうのう)の独特な香り。
畳紙(たとうし)の擦れる音。
絹の柔らかい手触り。

実家にあった大きな和箪笥や桐箪笥には、母が嫁入り道具として持たされた着物が収められていました。
祖母が着物好きで、母や叔母が小さな頃からたくさん誂えてくれたようです。
私も着付けてもらうのが好きだったし、母が着物のお手入れをしているのをそばで見るのも好きでした。
そんな私が、落語が趣味になり、自分でも高座に上がるように。
それと同時に、着物もとても大事なものになったのです。
今では叔母の和箪笥を引き取り、母と叔母二人分の着物を譲ってもらいました。
私サイズで誂えたものもありますから、合わせて三人分。
収納しきれないのが、今の嬉しい悩みです。

もっと古いアンティーク着物も好きです。
明治後期・大正・昭和初期の戦前のものは鮮やかで華美な着物が多く、今ではなかなか見られないような柄も魅力の一つですが、何よりも実際にその時代に誰かが袖を通していたという事実にノスタルジーを感じるのです。
こちらの二枚の写真で着用している羽織・着物・帯は全てアンティークです。
京都にあるお気に入りのアンティーク着物店で購入しました。

また、和洋ミックスのコーディネートを取り入れる方もいらっしゃいます。
私もたまに帽子やブーツと合わせてカジュアルに着ています。
着物のルールから外れてはいますが、楽しく好きに着ることが一番だと思いますし、昔の女性も西洋に憧れて色んな着方を楽しんでいたようですから。
この格好の時に、見知らぬおじ様に「坂本龍馬みたいやね!粋やねぇ!」と声をかけていただきました。

和服は日本人が一番美しく見える民族衣装です。
私にとって男性の黒紋付なんて、垂涎ものですよ(笑)
サイズが多少違っても年月を経ても着ることができる、究極のエコであり、温故知新を具現化したもの。
落語と着物のある日本に生まれてきて良かったです。

こんな風に毎年の夏を母から譲り受けた浴衣で過ごすのも粋じゃございませんか?

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