診察室
診察日:2005年8月9日
テーマ: 『本当は怖い子供の食欲〜蝕まれた心〜』
『本当は怖い子供の発熱〜手慣れた誤認〜』

『本当は怖い子供の食欲〜蝕まれた心〜』

母親 N・Yさん(女性)/38歳(当時)
息子 N・K君/11歳(当時)
会社員
大手電気メーカーの営業として、多忙な毎日を送っていた母親、N・Yさん。仕事で遅くなりがちな分、息子には好きなものを好きなだけ食べられるよう十分なお金を与え、また、たまに早く帰宅できた時には、子供が好きな手料理を作るよう心がけていました。そんなある日、朝2リットルは入れてあったジュースのビンが空になっていることを発見したN・Yさん。どうやら、のどが渇いたK君が一日で全部飲んでしまったようでした。なぜそんなに喉が渇くのか?そんな疑問すら抱かなかった彼女ですが、その夜、ちょっとした異変が起こります。
(1)のどの渇き
(2)頻尿
2型糖尿病
<なぜ、食欲から2型糖尿病に?>
「2型糖尿病」とは、自己免疫の異常によって起きることが多い1型とは違い、食生活の大きな乱れなどが主な原因で起きる糖尿病のこと。最近、10代の子供たちの間で爆発的に増え、その数は20年前のなんと3倍。そして一度発症してしまうと、20〜30代で合併症を引き起こし、失明や足の壊疽(えそ)、最悪の場合は死に至ることも珍しくないのです。K君の場合も、食物のとりすぎが発症の原因でした。その結果、現れたのが、あの喉の渇きや頻尿といった症状。あれは食べ過ぎることで異常に増えた血液中の糖分を体が外に出そうとしたため起きたもの。しかし、K君はなぜそこまで食べ過ぎてしまったのでしょうか?その原因は意外なところに潜んでいました。それはK君が日々感じていたさみしさ。これこそ子供の糖尿病の特徴。もっと一緒にいたい。そんなさみしさを食べることで紛らわそうとし、つい食べ過ぎてしまうのです。しかし母親のYさんは成長期だから食べるのは当然だと思い込み、K君が抱えるさみしさに気づいてあげられませんでした。K君はこの先、合併症が起きないよう病院に通い続けています。Yさんは仕事を辞め、K君につきっきりで食生活の改善に取り組んでいるのです。子供の2型糖尿病は、親の食生活の管理に主な原因があります。親が意識を変えることで予防することが出来るのです。
「子どもを糖尿病にさせないためには?」
(1)朝昼晩きちんとバランスの良い食事を摂らせる
(2)特に朝食は抜かない
(3)子どもと一緒に楽しく食事をしてあげる
(4)とにかく規則正しい食生活が大切です。
もしちょっとでも気になることがあれば、気軽に医師や栄養士に相談されることをおすすめします。
『本当は怖い子供の発熱〜手慣れた誤認〜』
母親 K・Nさん(女性)/ 34歳(当時)
3女 K・Aちゃん/4歳(当時)
専業主婦
3人の子育てに追われるK・Nさんは、自他ともに認めるベテランママ。子どもたちの扱いも手慣れたものでしたが、ある日、末っ子のAちゃんが突然38度の熱を出しました。また風邪を引いたと思い、いつものように常備している風邪薬を飲ませ、Aちゃんを寝かしつけたK・Nさん。翌日、小児科で薬をもらって一安心していましたが、その後、Aちゃんに異変が現れます。
(1)発熱
(2)目の充血
(3)発疹
(4)嘔吐
(5)心筋梗塞
川崎病
<なぜ、発熱から川崎病に?>
「川崎病」とは、原因はまだわかっていませんが、突然、全身の血管に炎症が起きることで、様々な症状を引き起こす病です。0歳から4歳までの子どもに多く、その数は年々増え続けています。通常、その症状は1週間ほどで治まります。しかし、この病気の恐ろしいところは、最悪の場合、心筋梗塞を起こし、死に至る危険性があるということ。では、そうなる前に早期発見するポイントはないのでしょうか?実は川崎病には、特徴的な6つの症状があります。「発熱」、「目の充血」、「発疹」、「唇」、「舌の赤み」、「リンパ節の腫れ」、「手足のむくみ」。このうち、発熱を含め、いくつかの症状があれば川崎病と診断されるのです。Aちゃんにも発熱、目の充血、発疹などの症状が出ていました。しかし、Nさんは3人の子育ての経験から勝手に風邪と判断。そのうち良くなると思い込んでしまったのです。そして発熱から1週間後、Aちゃんの熱が下がったことで、Nさんは安心してしまいました。これこそが川崎病の落とし穴。確かにこの時点で、川崎病の症状は治っています。しかし、病は一見元気に見えたAちゃんの小さな心臓にこっそり時限爆弾を仕掛けたのです。全身の血管と同じように心臓の血管でも起きていた炎症。その後遺症で、血管にコブが出来てしまったのです。そのコブのせいで血流が滞り、血栓が出来てしまいました。そして最後の瞬間、激しい運動がきっかけで、血圧が一気に上昇。その勢いではがれた血栓が血管に詰まり、心筋梗塞を起こしてしまったのです。幸いAちゃんは病院で適切な治療を受け、一命を取り留めました。川崎病は早期発見して投薬治療を受ければ、9割が血管にコブも出来ず、完治する病。親が熱以外の症状を見逃さないようにすることが予防につながるのです。
「子どもを川崎病から守るためには?」
(1) 子どもをよく観察する
(2) 「発熱」、「発疹」、「目の充血」、「舌・唇の赤み」、「リンパ節の腫れ」、「手足のむくみ」の6つの症状を見逃さないよう注意
(3) 子育てに慣れは禁物。もしちょっとでも気になることがあれば、迷わず小児科を受診されることをおすすめします。