診察室
診察日:2005年11月22日
テーマ: 『本当は怖い軽い腹痛〜陰に隠れた悪魔〜』
『本当は怖い肩こり〜わかってくれない地獄の苦しみ〜』

『本当は怖い軽い腹痛〜陰に隠れた悪魔〜』

N・Kさん(男性)/52歳(当時) 無職
横浜市内の料理学校に通うN・Kさん。大手家電メーカーに勤めていた彼は、2年前に会社を早期退職。
長年の夢だった料理の勉強に精を出してきました。その日もリサーチとばかり、人気レストランの試食に来ていましたが、フルコースを食べ終えた時、お腹にごく軽い痛みを覚えました。食べ過ぎて胃がもたれたのだろうと考え、放っておいたN・Kさんですが、その後も異変が続きました。
(1)軽い腹痛
(2)お腹のはり
(3)腰痛
(4)腹痛が消える。
(5)チョコレート色の尿が出る。
(6)顔が黄色くなる。
膵臓癌(すいぞうがん)
<なぜ、軽い腹痛から膵臓癌に?>
「膵臓癌」とは、胃の裏側にある厚さ2センチ、長さ20センチほどの細長い臓器、膵臓に発生した癌のこと。最も発見が難しい癌の一つとされています。しかしなぜN・Kさんは、膵臓癌になってしまったのでしょうか?残念ながら、発生のメカニズムはあまり明らかになっていません。ただN・Kさんのように、長期間喫煙と飲酒を続け、脂っこい食事を好む50代から70代の男性に多いことがわかっています。そもそも膵臓の主な働きは、消化液やホルモンを作り出し、分泌すること。膵臓癌の多くは、この消化液を送り出す管である膵管の中で発生します。最初にN・Kさんを襲った「軽い腹痛」や「お腹のはり」、さらに「腰の痛み」。これらは成長した癌によって膵管に消化液が詰まり、膵臓が腫れたために起きたものでした。こうした痛みはさほど強いものではなく、N・Kさんのように2週間ほどで治まってしまいます。実はこれこそ、膵臓癌の落とし穴。これは膵臓に溜まった消化液が管を強く押し広げ、再び流れを取り戻し腫れが引いただけのこと。決して癌がなくなった訳ではなかったのです。しかし、N・Kさんは人間ドックで検査を受けたにも関わらず、癌を発見できませんでした。実はこれも、膵臓癌の厄介なところ。膵臓は胃など様々な臓器に取り囲まれているため、通常の人間ドックでは異変を見つけることが難しいのです。こうしてN・Kさんの膵臓癌は気づかれぬまま悪化。ついに「チョコレート色の尿」、「顔が黄色くなる」という症状を招いてしまいます。これは成長した癌が膵臓の中を通る膵管を押しつぶし、胆汁が逆流したために起きたものでした。入院から半年後、N・Kさんは息を引き取りました。膵臓癌は、早い段階では目立った症状が現れません。そのため判った時には手遅れ、というケースが非常に多いのです。医療技術が進んだ現在でも、毎年2万人以上がこの膵臓癌で命を失っています。
「膵臓癌にならないためには?」
(1)バランスの取れた食事
(2)禁煙を心がける。
(3)アルコールの飲み過ぎは控え、休肝日を作る。
もしちょっとでも体に違和感を覚えたら、超音波やMRCPなどによる膵臓の検査をおすすめします。
『本当は怖い肩こり
〜わかってくれない地獄の苦しみ〜』
O・Kさん(女性)/34歳(当時) ブティックの支店長
つい先日、夫と離婚、十年間の夫婦生活にピリオドを打ち、実家に戻ってきたO・Kさん。離婚を機に、以前勤めていたブティックに復職。それも支店の店長を任されることになりましたが、店長一日目を終えた時、ずっしりと重い肩こりを感じました。気を張りすぎて疲れたのだろうと思っていた彼女ですが、その後も奇妙な異変が続きました。
(1)肩こり
(2)腰に激痛
(3)体のあちこちで激痛が発生
(4)不眠
(5)痛みがひどく外出できない。
(6)触れられただけで激痛がする。
(7)寝たきりになる。
線維筋痛症(せんいきんつうしょう)
<なぜ、肩こりから線維筋痛症に?>
「線維筋痛症」とは、関節や筋肉など全身のいたるところが激しく痛む病。その痛みは、患者自身の体験談によると、「肉をボロボロに切り裂かれたような感覚」、「ガラスの破片が流れるような痛み」などと表現。最悪の場合、この激痛のため通常の生活さえ不可能になってしまうのです。患者のおよそ80%は女性。日本だけで200万人もの潜在患者がいると考えられています。ひどい痛みが生じる原因の多くはまだ不明ですが、カギは神経にあると考えられています。そもそも痛みは、全身に張り巡らされた神経を通じて脳に伝わります。ところが線維筋痛症になると、この痛みを伝え抑える神経に異常が発生。わずかな刺激が増幅され爆発的な痛みに感じてしまう、と考えられるのです。O・Kさんの場合、最初の症状は肩こり。神経の異常によって起きた、この病特有の初期症状でした。その後、症状は次第に悪化。腰に生じた爆発的な痛みを初め、体のあちこちで激痛が発生します。こうなると、立つ、歩く、座る、といった何気ない動きがすべて痛みにつながり、日常生活すら困難に。そしてついには軽く触れられただけで、飛び上がるような激痛を感じるまでに。事実、線維筋痛症の患者の中には、あまりの激痛のため爪を切ることが出来ない人がいるのです。やがてO・Kさんも、ちょっと体を動かしただけで激痛を覚えるようになり、寝たきり状態に。しかしなぜO・Kさんは、線維筋痛症になってしまったのでしょうか?因果関係はまだ明らかではありませんが、最大の要因と言われるのが、強いストレス。O・Kさんの場合、離婚、再就職などの急激な環境の変化が、強いストレスとなって襲いかかり発症したと考えられるのです。線維筋痛症の最も恐ろしい点は、検査をしても痛みの原因が見つからない、ということ。なぜなら、この痛みは患者が脳の中だけで感じているものだからです。そのため病院に行っても病気の存在すら疑われ、患者のストレスはどんどん増大。何年もドクターショッピングを続けるうちに、ますます病状を悪化させるケースが少なくないのです。幸いO・Kさんの場合、専門医に巡り会い治療を開始。5年後には、ほぼ通常の生活を送れるまで回復しました。線維筋痛症は発病から3年以内に発見し、適切な治療を受ければ、回復する可能性が高い病気なのです。
「線維筋痛症にならないためには?」
(1)なるべくストレスを避ける。
(2)無理のない生活を送るよう心がけることが大切。
もしいくら調べてもわからない原因不明の痛みがあるのなら、線維筋痛症の専門医で検診されることを
   おすすめします。