診察室
診察日:2006年11月14日
テーマ: 『本当は怖い冷え性〜蒼白の偽り〜』
『本当は怖い膝の痛み〜錆び付いた定年〜』

『本当は怖い冷え性〜蒼白の偽り〜』

H・Iさん(女性)/38歳(発症当時) 仲居
老舗の温泉旅館で働く仲居、H・Iさんの悩みは冷え性。特に辛いのは水まわりで、洗い物をする度に身を切られる思いでした。でも毎年のことだから仕方ない…と半ば諦めていたH・Iさん。ところがある日、ふとした拍子に手を見てみると、かじかんだ指先がいつもより白くなっていました。お風呂で温めると指先は再び生気を取り戻したため、安心してしまったH・Iさんですが、さらなる異変が襲いかかります。
(1)両手の指先が白っぽくなる
(2)指先の白い範囲が広がる
(3)指先の色が白からうす紫に変わる
(4)指先の色が真っ赤に変わる
(5)外気に触れただけで指先が白くなる
(6)指先が黒く変色する
全身性エリテマトーデス
<なぜ、冷え性から全身性エリテマトーデスに?>
「全身性エリテマトーデス」とは、本来身体を守るはずの免疫が異常をきたし全身を攻撃。関節や腎臓に炎症を起こす膠原病の一種です。なぜこの病を発症するのか原因は定かではありませんが、患者の約9割が女性と言われています。そして実はこの病の初期に、患者のおよそ半数に現れる症状があると言います。その症状こそ、レイノー現象。レイノー現象とは、指先が冷えた時に色が白から紫に変わり、その後、温めると赤へと変化するのが特徴。冷え性の人に多く現れ、その数はおよそ300万人にも。しかし、色の変化だけで大事に至る事はありません。ところが、そのごく一部に全身性エリテマトーデスの初期症状として現れるレイノー現象もあるのです。まさに、H・Iさんの場合がそうでした。全身性エリテマトーデスによって交感神経が過敏になり、指先の血管が異常に収縮。血が通わなくなった結果、白から紫に、その後、温めたことで血流が復活し赤くなったのです。そうとも知らないH・Iさんに、偶然出来てしまったささくれ。あれこそが致命的でした。指先に血液が通わなくなった結果、免疫力が低下。ささくれから侵入した細菌すら退治できず、壊死が起きてしまったのです。その結果、指先の切断という悲劇に見舞われたのです。不運にも、指先を失くしてしまったH・Iさん。しかし、その身体を蝕む本当の病の正体を知ることが出来た彼女は現在、順調に治療を続けています。レイノー現象は一見しただけでは、安全なものか、全身性エリテマトーデスによるものか、見分けることは出来ません。だからこそ、レイノー現象を自覚したら、念のため膠原病の検査を受けることが大切なのです。
『本当は怖い膝の痛み〜錆び付いた定年〜』
S・Aさん(男性)/60歳(発症当時) 無職
40年間勤め上げた会社を無事、定年退職したS・Aさんと妻のTさん。これからは妻と第2の人生をのんびり暮らそうと思い描いていましたが、いざリタイアしてみると、もともと出不精のS・Aさんは、毎日家でゴロゴロ。身体を動かすのが好きで、水泳やウォーキングを楽しむ妻とは対照的な生活を送っていました。1年後、立ち上がった時に、左膝に鈍い痛みを感じたS・Aさん。膝を曲げたり伸ばしたりすると痛みは消えたものの、異変はその後もさらに続きました。
(1)膝がかすかに痛む
(2)膝の鈍痛
(3)頻繁に起こる膝の痛み
(4)膝が痛くて力が入らない
(5)膝の痛みで立っていられない
変形性膝関節症(へんけいせいひざかんせつしょう)
<なぜ、膝の痛みから変形性膝関節症に?>
「変形性膝関節症」とは、膝の関節でクッションの役目をしている軟骨がすり減ることで、膝に痛みが生じる病のこと。最悪の場合、歩けなくなってしまうこともあります。現在、患者数はおよそ1200万人。何と日本人の10人に1人という高い割合で発症。日本の国民病とも言える病なのです。では、なぜ多くの日本人がこの病を患ってしまうのでしょうか?そこには日本人に圧倒的に多い、ある体型に秘密が隠されていました。それはO脚。O脚とは、まっすぐ立ったときに両膝がくっつかない状態のこと。実は日本人の8割もの人々が、元々O脚だと言われています。そしてO脚だと、膝の関節が触れ合う面が不自然な角度となり、足がまっすぐの人よりも軟骨に負担がかかるため減りやすくなってしまうのです。さらに、『老化』もこの病を発症する要因の一つ。つまり、ある程度軟骨がすり減るのは、年齢と共に誰にでも起こることなのです。ではなぜ、S・Aさんと同じようにO脚だった妻のTさんには、この病が発症しなかったのでしょうか?それは…運動のおかげ。Tさんがよく行っていた水泳やウォーキング。これらの運動によって、膝にとても大切な筋肉が鍛えられていました。それは太ももの筋肉で、大腿四頭筋と呼ばれる膝関節を支える筋肉。この筋肉が発達していると、膝を動かした時、ぶれずに一定の動きをするため、軟骨がすり減るのを最小限にすることが出来ます。一方、出不精だったS・Aさんの太ももの筋肉はすっかり弱っていました。そのため膝関節がぐらつき、不規則な角度で軟骨が当たってしまい、すり減りが大きくなっていたのです。その結果、徐々に出始めたのが膝の鈍い痛み。しかし痛みは、膝を動かし始めた時のみ。少し動かすと、すぐに痛みは消えてしまいました。これこそ、この病の持つ最大の落とし穴。実は2歩目、3歩目と膝を動かす度に、膝の軟骨を保護する液体が関節に行き渡り、痛みを軽減させてしまうのです。そうとは知らず、放っておいてしまった結果、最悪の事態にまで悪化させてしまったS・Aさん。現在は、ぼろぼろになった関節を人工関節で補い、毎日リハビリで筋力を鍛えています。きちんと運動をして年相応な『筋肉』を保つ。それこそが、この病の発症を防ぐ方法なのです。
「簡単にできる!膝の筋力アップ法」
(1)仰向けになり、片方の膝を軽く曲げる
(2)もう片方の膝を伸ばしたまま10p程上げる
(3)この姿勢を5秒保ち、その後、足を下ろして5秒休む
(4)この運動を20回ずつ両足で行なって下さい
朝と晩2度行なえば、膝に負担をかけず充分な筋肉をつけることが出来ます
「O脚を直すストレッチ」
(1)足を閉じた状態からつま先をゆっくり開いて10秒静止
(2)その後、つま先を閉じて10秒休む
(3)これを10回繰り返して下さい

「膝の筋力アップ体操」「O脚を直すストレッチ」、この2つで膝を守りましょう!
筋力年齢判定テスト