診察室
診察日:2007年8月14日
テーマ: 「本当は怖い腰痛〜真夏の夜の悪夢〜」
「本当は怖い夏の疲れ〜悪魔の目覚め〜」

『本当は怖い腰痛〜真夏の夜の悪夢〜』

Y・Mさん(男性)/43歳 サラリーマン
サラリーマンのY・Mさんは、学生時代、名サーファーとしてならした夏男。しかし今ではその面影もなくお腹に肉がつき、なぜか最近じっとしていても腰に鈍い痛みが起きるようになっていました。そんな中、家族で3泊4日のキャンプに出かけることになったY・Mさん。この機会に子供たちと目一杯遊んでやろうと考えた彼は、一緒にボートに乗ったり、森をハイキングしたりと張り切っていましたが、腰にいつもより少し強い痛みを感じます。腰の異変はその後もどんどん悪化していきました。
(1)腰の鈍い痛み
(2)いつもより少し強い腰の痛み
(3)腰の激痛
(4)腰から腹部へ広がる痛み
尿路結石(にょうろけっせき)
<なぜ、腰痛から尿路結石に?>
「尿路結石」とは、腎臓、尿の通り道である尿管などに石が詰まり、激しい痛みをもたらす病です。発症者は年々増加し、今や日本人の10人に1人がかかるといわれる身近な病のひとつ。ではなぜ、尿路に石が出来てしまうのでしょうか?尿路結石の主な成分は、「シュウ酸」という酸性物質と、「カルシウム」が結合してできた「シュウ酸カルシウム」というもの。それらが集まり結晶化、大きくなったものが石になるのです。そもそも私たちの腎臓は、日々不要になったシュウ酸やカルシウムを尿に排出しています。そのため微量ですが、シュウ酸カルシウムは生み出されているのです。ですが、通常その量は少なく、結晶化する前に体の外へ排泄されてしまいます。しかし、何らかの原因でシュウ酸カルシウムが増えてしまうと、尿の中で結晶化し、石が出来てしまうのです。では、Y・Mさんの場合、なぜシュウ酸カルシウムが増えてしまったのでしょうか?最大の原因は、「偏った食生活」。とりわけ問題だったのは、彼が肉類ばかりを好んで食べていたことです。実は肉のような動物性タンパク質には、酸性物質が数多く含まれています。そのため、Y・Mさんのように食べ過ぎると、血液中に必要以上に酸性物質が増えてしまい、腎臓がそれを不要なものとして尿の中に排出。このとき、同じ酸性物質であるシュウ酸も、通常よりも多く尿の中に流れこんでしまうのです。その結果、より多くのシュウ酸とカルシウムが結合。さらに、増えすぎたシュウ酸カルシウムが結晶化して大きくなり、石になってしまいました。それが症状として現れたのが、あの腰の鈍い痛み。原因は石が腎臓を刺激したこと。あの痛みは腰ではなく、腎臓の異常だったのです。ではなぜ、Y・Mさんは、突如、激痛に襲われる状態にまでなってしまったのでしょうか?それは、あの夏休みのキャンプ旅行に原因がありました。日頃のツケを埋め合わせようと、大奮闘したY・Mさん。彼の額には、いつも大粒の汗がありました。汗をかくことで、体から水分が蒸発。すると腎臓は、これ以上体から水分が出て行かないよう、尿として排泄する水分を減らしてしまうのです。その結果、Y・Mさんの尿の中では、石がぶつかりやすくなり、さらに大きくなってしまったのです。この時、Y・Mさんの腎臓に出来た石は、直径6ミリにまで成長。この石が尿管の途中で詰まったことで、あの激痛が起きてしまったのです。尿路結石は、バランスの悪い食生活と、水分不足のために尿が濃くなることで起きる生活習慣病。日々の生活習慣を変えることで、発症や再発を防ぐことができるのです。
『本当は怖い夏の疲れ〜悪魔の目覚め〜』
K・Mさん(女性)/50歳 自営業
夫が早期退職したのを機に、3年前、夫婦で喫茶店を始めたK・Mさん。ようやく店も軌道に乗ったこの夏、憧れのヨーロッパ旅行に出かけましたが、帰国した翌日、額の奥がズキズキするような頭痛に襲われました。夏風邪かと思ったK・Mさんは、市販の頭痛薬を飲んで対処していましたが、その後も奇妙な異変が続きました。
(1)頭痛
(2)再び頭痛
(3)虫刺されのような赤みと発疹
(4)水疱
(5)額が水疱で覆われる
帯状疱疹(たいじょうほうしん)
<なぜ、夏の疲れから帯状疱疹に?>
「帯状疱疹」とは、皮膚に水疱が帯状にでき、強い痛みをもたらす病です。日本人の6人に1人が、生涯に一度はかかるという身近な病気でもあります。しかし帯状疱疹は、日本人の約9割がかかるといわれる、ある病になっていないと発症しません。それは、水疱瘡(みずぼうそう)です。実は、一度水疱瘡にかかると、症状が治まっても、ウイルスの一部が身体の神経の奥深くに逃げ込み、生き続けているのです。そしてそのウイルスが再び活動をはじめると、帯状疱疹となるのです。額に帯状疱疹ができたK・Mさんの場合、ウイルスは耳の近くの、三叉神経に潜んでいました。でもなぜ、静かに身を潜めていたウイルスが、突然暴れだしてしまったのでしょうか?その最大の原因は、極度の疲れとストレスによる免疫力の低下です。人は免疫力が低下すると、普段は抑えられるウイルスの活動を抑えきれなくなってしまうのです。すると、ウイルスが暴走。事実、夏の疲れが出やすいお盆の季節は、1年のうちで帯状疱疹がもっとも発症しやすい季節でもあるのです。では、そんな帯状疱疹から、K・Mさんが身を守る手立てはなかったのでしょうか?彼女の場合、最初のサインは、夏風邪と勘違いしたあの頭痛。これは、彼女の三叉神経に眠っていたウイルスが再び増殖、神経を攻撃し、炎症を起こし始めたことが原因。ところが、この時点で医師に診断を仰いでも、神経の異常は、CTやレントゲンには写らないため、単なる頭痛や神経痛と間違われるケースが多いのです。そのため、ウイルスは増え続け、彼女の神経をつたって、ついには皮膚をも攻撃。発疹となって現れたのです。この皮膚症状が現れたときこそが、病を食い止める最大のチャンスでした。しかし彼女は「蚊に刺された」と思い込み、放っておいてしまいました。そのため、症状は急速に進み、はっきりと水疱が出来てしまいました。帯状疱疹が何より恐ろしいのは、進行が極めて早いこと。そうとは知らない彼女は、そのまま放置し、病をさらに悪化させてしまったのです。最悪の症状となってから、病院に駆け込んだK・Mさん。彼女には、恐ろしい後遺症が待っていました。それが「帯状疱疹後神経痛」。皮膚症状が消えたあとも絶え間なく痛みが襲い、中には不眠症やうつ病になる人も少なくない、恐ろしい後遺症です。とりわけ、K・Mさんのように50歳以上の人は、傷ついた神経の回復に時間がかかるため、数年にわたって苦しみが続いてしまうことが多いのです。帯状疱疹は、何より、早期発見が第一。痛みが起きた場所と同じ所に、発疹や水疱が現れたら、一刻も早く病院へ行くことが大切です。早期発見すれば、薬でウイルスの活動を抑え、痛みの後遺症も起きにくくなるのです。