診察室
診察日:2009年2月10日
テーマ: 「本当は怖いおしっこの我慢〜悲しみの洪水警報〜」

『本当は怖いおしっこの我慢〜悲しみの洪水警報〜』

I・Tさん(女性)/55歳 自営業
夫と二人で定食屋さんを切り盛りするI・Tさんは、仕事柄トイレに行きたくても行けないこともしばしば。いつしかおしっこを我慢する癖がしみついていましたが、長年のことで慣れっこになっていたせいか、特に気にも留めていませんでした。そんなある日、重い袋を持ち上げようとした時、ほんの少し、おしっこを漏らしてしまいます。その日以来、笑った時やお腹に力を入れた拍子に、尿が漏れることが度重なるようになっていきました。
(1)尿もれ
(2)尿意をもよおすがあまり尿が出ない
(3)下腹部に異物感
(4)股間からピンポン玉のようなものが出る
膀胱瘤(ぼうこうりゅう)
<なぜ、おしっこの我慢から膀胱瘤に?>
 膀胱瘤とは、膀胱、子宮、直腸などを支えている「骨盤底筋」というハンモックのような筋肉が緩んだ結果、膀胱が膣の隙間から体外に飛び出してしまう病。膀胱だけでなく、子宮や直腸が体外に出てしまう場合もありますが、こういった病は、50歳以上に多く、約1割の女性が経験すると言われています。そもそも骨盤底筋は年を重ねることで、誰でも緩んでいくものですが、特に出産や肥満がそれを助長するとも言われています。しかし、習慣的におしっこを我慢し、それが長時間であった場合、必要以上に膨らんだ膀胱が「骨盤底筋」を圧迫、ダメージを与え続けているのです。
  膀胱の容量は、通常300〜400cc。私たちは尿がそれくらい溜まると、尿意を催し、排出する・・・ということを繰り返しています。しかし膀胱が一杯になっても、おしっこを我慢し続けてしまうと、膀胱は常に伸びきった状態になり、「尿が溜まった」と感じる神経が鈍ってしまうのです。だからこそ、I・Tさんは朝から昼の仕事終わりまで、実に10時間もおしっこを我慢できるようになっていたのです。この時、彼女の膀胱には600ccという通常の倍の尿が溜まっていました。重さで言えば600g、リンゴ2個分の重さが骨盤底筋を圧迫し続けていたのです。こうして骨盤底筋が緩んだことで、尿道を締め付ける力が弱くなり、ついに尿もれを起こしてしまいました。
  さらに、彼女を襲った「尿意を感じるが尿があまり出ない」という症状は、膀胱が正常な位置から徐々に下がってしまい、尿道が変形したために起きたのです。そして、尿が出にくくなったことで、彼女は大きな過ちを犯してしまいます。それがいきんでおしっこをするようになったこと。
  いきむと、腹圧がかかり、膀胱が膣の方に押し込まれてしまいます。そう、彼女は尿が出ない、出ないからいきむ、さらに膀胱が下がるという負のスパイラルに陥ってしまったのです。そして、ついに膀胱が膣から飛び出るまでになってしまいました。膀胱瘤は、初期であれば女性ホルモンの投与で治すことも可能な病。しかし、まずは膀胱に負担を与えないために、一定の間隔でトイレに行くことが大切なのです。
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