診察室
診察日:2009年7月14日
大流行目前!新型水虫菌 早期発見スペシャル!
テーマ:『新型水虫〜身近に潜む感染源〜』

『新型水虫〜身近に潜む感染源〜』

K・Yさん(女性)/42歳 専業主婦
主婦のK・Yさんは、サラリーマンの夫、中学生の長女、小学生の長男の4人家族。几帳面で綺麗好きな彼女は、毎日きちんと掃除をし、バスマットやシーツも頻繁に変えていましたが、ある日、右膝に虫刺されのような赤い点が出来ていました。痛みもかゆみもなかったため、虫刺され用の軟膏を塗って対処することにしたK・Yさん。しかし、その後も炎症は拡大していったのです。
(1)虫刺されのような赤い点
(2)炎症が拡大し、ジュクジュクする
(3)炎症がウズラの卵大になる
トリコフィトン・トンズランス症
<なぜ、専業主婦のK・Yさんがトリコフィトン・トンズランス症に?>
 「トリコフィトン・トンズランス」とは、世界中で患者数が急増している新型の水虫菌のこと。日本国内でもすでに3万人が、この水虫菌に感染していると考えられています。
感染ルートをまとめた研究結果によると、もともと南ヨーロッパにいた菌が中世になって南米へと伝来。20世紀、交通機関の発達と共に、北米、オーストラリア、アジアへと急激に感染域を拡大。日本では2001年に確認された新しい水虫菌なのです。
そもそも水虫は、白癬菌と呼ばれるカビの一種が、足の裏などで繁殖し、皮がむけるなどの症状に悩まされる病のこと。新型水虫菌も同じ白癬菌の仲間。しかし、従来の水虫菌と比べ、大きな違いが二つあります。
一つは、足以外の特に上半身に感染することが多いのです。そのため、水虫とは思わず、見逃してしまうケースも。中でも厄介なのは、頭部に感染した場合。かゆみもないため、気付きにくく、悪化の一途をたどることに。10代の若さで頭頂部が禿げ上がる悲劇を招くこともあるのです。二つ目の特徴は、非常に感染力が強いということ。事実、通常の水虫菌に比べ、角質への侵入速度が倍近く速いという研究結果が発表されています。
ではK・Yさんの場合、いったいどこで、感染したというのでしょうか?実は新型水虫菌は、接触によって感染するケースがほとんどで、レスリングや柔道など、強く身体が接触する格闘技の世界的な普及と深く関わっているのです。
数日後、柔道を習っていた息子さんを伴って皮膚科を訪ねたK・Yさん。診察で髪の生え際近くに赤い炎症が見つかり、頭皮にまで感染が拡がっていることが判明しました。彼女の場合、度重なる息子さんとの接触、とりわけ、あの膝枕で患部と足が接触したことで、新型水虫菌に感染したと考えられるのです。
さらに、その後行なわれた追跡調査によって、息子さんへの感染ルートもほぼ解明されました。息子さんは、少年柔道のコーチをしていた高校生の腕から感染したと考えられます。そして、その高校生は、遠征先の韓国で感染した可能性が大きいという結論が出たのです。
このように、海も国境も軽々と超え、着実に患者数を増やしている「トリコフィトン・トンズランス症」。事実いま欧米諸国では、この新型水虫菌が、子供を中心に流行中。このまま放置していると、日本でも数年後には、子供たちから全世代に感染を広げていくと考えられるのです。
その後、病院で塗り薬を処方されたK・Yさんは、3週間後には完治することが出来ました。新型水虫菌の感染力は強いものの、定期健診を受け、早期に治療すれば拡大を食い止める事が出来るのです。
知らないと水虫になってしまう間違った予防法チェック