関西ニュースKANSAI

少子化の原因は、子どもに惨めな思いをさせたくないから? 専門家が語る日本の“静かなる貧困化”「女性が十分な収入を得て働ける環境を」

06/12 17:00 配信

若者の6割超が「子どもが欲しくない」と回答

 未婚で子どもがいない18〜29歳の男女の6割以上が「将来子どもが欲しくない」と回答――。ある意識調査が示したこの結果は、日本の少子化が新たな局面に入ったことを示唆しています。その背景には「経済的な負担」や「キャリアへの支障」といった若者たちの切実な不安があります。

 家族社会学を専門とする中央大学の山田昌弘教授は、この問題は「30年前から始まっていた」と指摘。このままでは社会全体が「少しずつ貧しくなる」未来が訪れると警鐘を鳴らしています。山田教授の解説をもとに、日本の少子化の現状と未来を深掘りしました。

つらい生理痛を我慢すれば“がん”や不妊のリスクも…産婦人科医「子宮にとって有害でしかない」 ためらわずに早めの受診を呼びかけ 10代からのピル服用も「問題ない」

「子どもが欲しくない」若者が6割超―背景に“経済的不安”と“キャリアへの支障”

中央大学の山田昌弘教授

 18〜29歳の未婚で子どもがいない男女400人を対象とした意識調査では、「将来子どもが欲しくない」と答えた割合が男性で60.7%、女性で64.7%に上りました。

 出産や育児を不安視する理由として「経済的な負担」を挙げた人は男性で63.2%、女性では71.7%と特に高い数値を示し、「キャリアへの支障」も男女ともに半数以上が懸念していることが明らかになりました。

 この結果について、中央大学の山田昌弘教授は「経済的要因は大きい」と分析します。実際に大学で学生と話していても、「将来、家を買って子どもを育てるには一体いくら必要か」「正社員の共働きじゃないと家が買えない」といった声が聞かれるといい、若者世代の不安を代弁しました。

幻に終わった「第3次ベビーブーム」―専門家が指摘する“経済停滞”という転換点

なぜ第3次ベビーブームは来なかった?

 日本の出生数は10年連続で過去最少を更新しています。

 かつて日本には、戦後に生まれた「第1次ベビーブーム」(1947〜1949年)と、その子ども世代が親となった「第2次ベビーブーム」(1971〜1974年)という2つの大きな人口の波がありました。この流れから、1995年ごろには「第3次ベビーブーム」が来ると予測されていましたが、それは起こりませんでした。

 なぜ第3次ベビーブームは来なかったのか。

 山田教授は「経済が発展しているときは出生数が増える」と前置きした上で、「1990年以降は経済的な不安から未婚化・少子化が進み、その後コロナ禍で加速した」と解説します。

 山田教授が若者へのインタビューで最もよく聞いたという言葉が、「子どもに惨めな思いをさせたくない」というものでした。「自分も子どもも貧乏になりたくない」という思いが、結婚や出産をためらわせる大きな要因になっていると指摘したうえで、「この流れは、バブル崩壊後のいわゆるロスジェネ世代から始まった」と、問題の根深さを語りました。

30年遅れの少子化対策―なぜ日本は後手に回ったのか

”30年遅れ”の少子化対策

 日本で最初の少子化対策が策定されたのは1994年でした。しかし、山田教授によれば、当時は「高齢社会への対応にのみ目を奪われ、少子化対応は遅れていた」といいます。

 少子化が始まったばかりの時点で危機感が薄く、「甘く見ていた」と教授は分析します。

 その後、2003年に内閣府に特命担当大臣が設置され、現在では待機児童対策や教育の無償化、子ども・子育て支援金の徴収開始など、様々な施策が打ち出されています。

 しかし山田教授は、「現在の対策は1995年ごろにとっておくべきだった」と、約30年の遅れを厳しく指摘。30年という時を経て、少なくなった世代が親世代となり、さらに子どもが減るという状況になって、ようやく政府が本格的に慌てだしたのが現状だと解説します。

人口減少で日本はどうなる?―「社会全体が少しずつ貧しくなる」未来

人口減少による生活への影響は

 少子化は人口減少に直結します。日本の人口は2010年の約1億2806万人をピークに減少に転じ、2025年には約1億2305万人、2070年には8700万人まで落ち込むと予測されています。

 人口が減少すると、私たちの生活にも身近な影響が及びます。

 例えば、ごみ収集が週4日から週2日に減ったり、介護サービスが3日に1回から週に1回に減ったりするなど、公共サービスの水準が徐々に引き下げられる可能性があるのです。

 山田教授は、この状況を「社会全体が少しずつ貧しくなる」と表現。この貧困化は、若い女性が流出しやすい「大都市部」のない地方から顕著になると予測しています。

今後の展望―専門家が提言する「若者の経済的安定」と「女性が十分な収入を得て働ける環境」

長期的な少子化対策の鍵は

 少しでも人口減少を食い止めるために、今後どのような対策が必要なのでしょうか。山田教授は、日本が「少子化の最先端を走っている」現状をふまえ、その後に中国や韓国が続いていると指摘します。

 その上で、物価高対策として一時的にお金を配るだけでなく、より本質的な「若者の経済的安定」と、特に「女性が十分な収入を得て働ける環境の整備」に力を入れるべきだと提言しました。

 教授は、まずは「若い人たちが将来の見通しを持って生活できるような条件を整える」ことが重要だと強調します。

 特に地方では女性の雇用機会が少ないために都市部への流出が起きており、地方で女性が活躍できる環境を作ることが、長期的な少子化対策の鍵になるとの見解を示しました。ただし、これらの対策も「効果が出るには時間がかかる」とし、腰を据えた取り組みの必要性を訴えました。

(『newsおかえり』6月11日放送分より)

最終更新:06/12 17:00

関西ニュースヘッドラインKANSAI

もっとみる