関西ニュースKANSAI
【徹底取材】大阪・生野区の通学路に“危険”空き家 天井が抜け室内は丸出し&歩道にガレキの山で倒壊寸前!? 周辺の学校からは不安の声も行政がなかなか動けないワケとは…?
06/23 17:30 配信
大阪市生野区の幹線道路沿いに広がる住宅街に、問題となっている空き家があります。
報告:高橋大作記者
「これ、大変なことになっていますね・・・」
取材した記者も思わず言葉を詰まらせる空き家。
2階以上の一部は「壁」もなく、最上階はもはや「天井」が隙間だらけ。
今にも崩れそうな外見です。
徐々に崩れ出した“危険”な空き家 過去の画像から変遷をたどる
Googleに掲載された2022年の建物 まだ外壁が残っている(Googleより)
この建物はどう崩れていったのか・・・。過去の画像を調べると、その変遷が見えてきました。
建物を撮影した4年前の画像と比較すると、当時はまだ「外壁」が残っているものの、3階の窓の端から、大きなひび割れがのびていました。
2024年にはテントが破れ落書きが目立つように(Googleより)
それから約2年後には、1階のテントも破れ、シャッター部分には落書きが目立ち、区役所が設置した「頭上注意」を知らせる張り紙やカラーコーンが見られる状態に。
さらに2年が経過した、いま(6月17日)は。取材班が建物を訪れると・・・。
報告:高橋記者
「テントのようなものがそのまま落ちてきています。『頭上注意、頭上注意、頭上注意』と、『壁面が落ちてきそうです。通行に気をつけてください』と(張り紙に)書いてありますが、すでに壁が落ちてきているというのがわかります」
「屋根裏でしょうか3階部分でしょうか屋根が抜けてしまっています 完全に空がみえるような状態になっています」
6月17日に現地を取材すると外壁が一部崩れ天井は「空が見えるような状態」に
近くを通りかかった人は―
「(危険な状態になってから)だいぶなるね。あぶないね」
(記者Q:空き家側の道を通らないようにしようとかしている?)
「そうやね、危ないですからね やっぱりなるべくこっち(反対側)を通っています」
「なんとか早くなおしてほしい。更地にするか、建物全部壊して更地にするとか早いこと手を打たないと。順番に崩れていくと思いますよ」
「いろいろな空き家見てきた中でNo.1」住宅問題の専門家も驚きの状況 対応策は?
住宅問題の専門家・辻岡信也さん 「見てきた中でNo.1の状態」
露わになった2階部分には、家具が散乱。崩れ落ちた壁や建材などは、道幅の狭い歩道に積み上がっています。
住宅問題の専門家で、一級建築士の資格も持つ、弁護士の辻岡信也さんに現地で建物を見てもらうと・・・。
話:辻岡信也さん
「これはもう建物としての体をなしていない」
「私もね、空き家問題で、いろんな空き家の状況っていうのを知るに至りましたけど、これNo.1でしょ」
専門家も驚く状況。さらに建物を見てもらうと、より、状況の酷さが分かってきました。
辻岡さん
「あのあたり、白アリにくわれてボロボロじゃないですか。建物って屋根があるから水の浸入を防げてそれのおかげで木が腐らずにすむんですけども、あれほど雨を遮るものが、屋根がなくなっている状態だから、もう朽ちる一方ですよね」
「これは私の知る限り、緊急避難的対応を考えなきゃならんぐらい朽廃してるのを初めて見た気がします」
緊急車両や警察官も駆け付ける事態に・・・
5月には警察・消防が駆けつける事態に(写真=視聴者提供)
この空き家に先月、緊急車両や警察官が駆けつけました。
大阪・生野区役所職員の通報
「建物が崩落している」
大阪市消防局によると、先月1日午後4時半すぎ、区役所の職員から通報が入り、消防車が出動。
外壁や建材が広範囲に崩れて落下し、一部は垂れ下がった状態だったため、隊員らが放水するなどして、下に落とし、取り除いたといいます。
幸いにも、けが人はいませんでした。
空き家の前の道路は子どもたちも通学で使用する生活道路
空き家から約80mの位置にあるプール学院からも不安の声
さらに地域住民を不安にさせているのが、この空き家の前の道路が、多くの子どもたちが通行する生活道路にもなっているということです。
周辺には幼稚園や小学校など、半径500メートル圏内に少なくとも10カ所の教育施設が点在していて、その一つに、プール学院中学・高等学校があります。
学校と問題の空き家は、わずか80メートルしか離れていません。
プール学院・安福朗常務理事によりますと、学院には現在、800人あまりの生徒が通っています。
プール学院の安福常務理事 生徒の安全のため通学路の変更も余儀なくされたという
学校法人 プール学院 安福 朗 常務理事
「空き家が一番崩れかけたときは、緊急に 2ヶ月ほど 『あの前を通るな』ということで通学路を変更していました」
「桃谷駅に行くのに、空き家の前を通った方がずっと近いのに、(別の遠回りのルートから)駅に迂回するようにあの生徒に指導しております」
多くの来校者が予想される、学校行事も悩みの種。
プール学院では、学校の入試説明会やオープンスクールなど、外部の方をたくさん招くイベントの際は、教員を導入し、空き家の前で安全に誘導するという体制も組んでいるということです。
さらに、空き家の状況をこまめに記録し、行政や警察に共有してきましたが、根本的な解決には至っていません。
学校側から行政や警察に共有も根本的な解決に至らず・・・(写真=プール学院が作成した資料の一部)
プール学院・安福常務理事
「ほんとに、前にがっとくずれたのは一瞬でしたので。やっぱり生徒が通学している時にいつ崩れるかわからないというのが一番怖いと思います」
なぜ危険な空き家がそのままに? 行政代執行は? 「所有者がわからない」状況にカベも
区役所職員は「個人の財産と迷惑を天秤にかけてどうするか考えている」
この空き家をめぐり、関係者への取材で、元の所有者が『所有権を放棄した』と主張するなどしていて、持ち主が不明確な状態が続いていることがわかりました。
一般的に、放置すれば倒壊するなどの危険があり、周辺環境に悪影響を及ぼしていると自治体が判断した住人のいない家は「特定空き家」と呼ばれます。
特定空き家は自治体からの指導や勧告の対象となり、所有者がこの改善命令に従わなかった場合、過料が科されます。
さらに危険度が増した場合は行政代執行で空き家が取り壊され、費用は所有者に請求されます。
しかし、この生野区の空き家は、所有者が明確になっておらず、行政が手を出しにくい状況にあるといいます。
生野区役所のある職員はあくまでも一般論として、こう打ち明けました。
生野区役所職員
「守られるべき個人の財産と、地域に生じている迷惑・危険を天秤にかけて、どうすべきかを考えている」
「地域の安全を守るために、対応を進めたいという思いはあるが、法律上、個人の財産を侵してはいけないということが、優先されてしまう」
「行政代執行の決断の時にいたっている」専門家は警鐘を鳴らす
特定空き家をめぐるトラブルに数多く対応してきた、辻岡弁護士は、区役所側の考えに一定の理解を示しながらも、行政代執行に向けた手続きを進めるべきだと指摘します。
「問題に対応していないって言うのは、不作為の違法というのはなり得る。バランスを考えてどこかで行政が決断すべき所だと思うんです。私がこの状況を拝見するに(個人的な意見としては)決断の時にいたっているのではないかと思います」
生野区の空き家率は22%超(大阪市内で2位) 全国でも増加続ける空き家・・・中でも「危険な空き家」はなぜ発見しづらい?
大阪府市担当キャップ 高橋大作記者
生野区の空き家の外壁が崩れたのは、夕方の子どもたちの時間帯で、「一歩間違えれば危険な状況だった」と、府内の空き家問題の取材を続ける高橋大作記者は指摘します。
一方で、「行政代執行」については、「行政側のジレンマも存在」していると話しています。
高橋記者
「生野区は市内で空き家率22%を超える、特に多い地域ではある一方で、是正した数も多くなっています」
「行政の最終手段ともいわれている行政代執行には『所有者の特定』が必要で、空き家は特に所有者の特定が難しく、行政側にもなかなか執行に踏み出せないジレンマがあるといわれています」
放置される“危険な空き家” なぜ?
高橋記者によりますと、2023年の法整備で「緊急代執行」が可能になったケースもありますが、「災害の影響を受けた場合」などの制約が存在しているといいます。
生野区の空き家は、現状この対象ではないということです。
全国的に見ても、空き家が増加傾向にあり、生野区のこの空き家のような危険な空き家が見つかりにくい理由について、高橋記者は以下のように説明します。
高橋記者
「外から見ても、中が崩れているなど分かりづらいことが理由の一つにあると言われています。また、相続などで空き家の所有権を継いだ後に状況がわかることがあります。そのため、こうした危険性を把握するためには、地域住人の方の目がセンサーになります」
ノンフィクションライター 石戸諭さん
おかえり・火曜日レギュラーコメンテーターでノンフィクションライターの石戸諭さんは、「行政側の対応に一定の理解はできるが、周辺住人の住環境への影響が大きい状況になっているともみられる。行政代執行の幅を考え直す、崩れた場合のトレードオフをどう考えていくのかの側面も大事だと感じる」と課題について指摘しました。
(「newsおかえり」2026年6月23日放送 特集「緊急ウラドリ」より)
最終更新:06/23 21:17


