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ようやく動き出すリニア工事 東京・大阪「最速67分」はいつ実現? 識者解説

07/18 19:00 配信

“リニア工事”加速へ 関西はどうなる?

 東京と名古屋を最速40分、東京と大阪を最速67分で結ぶことになる“夢の超特急”リニア中央新幹線。

 7日、静岡県の鈴木知事がリニア中央新幹線の静岡県内の工事について着工容認の考えを示したことで、一気に夢の実現に向け、大きく動き出しました。

 東京から大阪への実現は一体いつになるのか?残る課題とは?鉄道に詳しい経済ジャーナリストの大坂直樹さんと“深掘り”します。

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品川-大阪間が最速67分! ようやく動き出したリニア工事

ようやく動き出すリニア工事

 工事が予定されている品川駅から名古屋駅までの経路を見てみると、東海道新幹線のルートが太平洋沿岸を走っているのに対して、リニアは山の中を走ります。

 品川-名古屋間の86%がトンネルとなり、真っ暗な景色が多くなりそうです。

 速さは品川-名古屋間で最速40分! 新幹線の場合は、同じ区間で約1時間30分かかります。さらに、品川から大阪までは最速67分とされていて、新幹線の2時間20分と比べると相当短縮されそうです。

 ただ、工事自体は2014年の着工から約9年間、停滞していました。そんななか、7日に静岡県の鈴木康友知事が、リニア中央新幹線にかかる「自然環境保全協定」を事業者のJR東海と締結しました。

 これによって、リニア中央新幹線の静岡工区での着工を容認した形になり、ようやく工事が動き出すことになるのです。

なぜ9年も停滞?

 工事はなぜ9年も停滞していたのでしょうか。

 ネックになっていたのは、約8.9キロの部分だけ静岡県にまたがっている「南アルプストンネル」です。

 2013年にJR東海が掘削した際、地下水が湧き出したことから、トンネル開通によって大井川の流量減少が懸念されました。

大坂さん
「南アルプスは地下水がすごく多い場所なので、トンネルを掘ると地下水がたくさん出てくる。それが静岡県ではなく、隣の山梨県や長野県にいってしまうかもしれない。これに対し、静岡県の川勝・前知事は『大井川の水は静岡県の水だから他の県には渡さない』と主張したわけです」

 大井川は静岡県の主要河川で、水力発電・工業・農業と、大井川の水を利用しているものが多くあります。川勝・前知事は「メリットのないリニアは静岡県にはいらない」という姿勢を貫きました。

経済ジャーナリスト・大坂直樹さん

 ところが、知事が代わったことで、議論の風向きも一変します。

 静岡県とJR東海は「大井川の流域で水や環境への影響が出た場合、JR東海が対策を講じて、因果関係の立証を県や流域の自治体に求めない」という話し合いを進めました。

 大坂さんによると、前知事の時は心配材料を払拭しないと工事自体が進められなかったのに対し、現知事は工事を進める上で問題があればJRの責任で調査・説明をするという考え方になりました。

 さらに、一番の懸念材料だった水問題も、周辺の自治体・住民から納得が得られた状態になっているといいます。

大坂さん
「静岡周辺の神奈川・山梨・長野・岐阜には、リニアの駅ができるんです。つまり利用する人がいるということで、多少工事で何かあったとしても、駅ができて県民にもメリットがあるのだから、いいじゃないかということだったんです。

 ただ静岡県だけは、南アルプスの山の中を少し走るだけです。山の中に駅を作っても利用者が少ないので駅ができなかった。静岡県には何もメリットがないのに、環境問題が起こるかも知れないというところが問題だったわけです」

最高時速500km!浮上走行ってどんな感じ? 試乗した感想は…

リニアの仕組み

 リニアは磁力を利用して、車体を10センチほど浮上させて走行します。最高時速は500キロで「自動運転システム」による無人運転となっています。

 去年10月に試乗した大坂さんによると、発車直後はスピードが出るまで新幹線と同様に車輪で走行し、約1分後に「浮上走行に移ります」というアナウンスとともに時速150キロに到達。車輪が格納され、走行音が消えて浮上走行に移ったということです。時速500キロに到達したのは発車約3分後だったということです。

“温めに温めて…”リニア構想のこれまで

リニア構想のこれまで

 そもそも、リニアの構想がスタートしたのは1962年。旧国鉄による研究が始まりでした。

 1970年に大阪万博の日本館で模型が展示。1972年には時速60キロで有人の浮上走行に成功し、リニア中央新幹線は2014年に着工に至りました。

 当初は2027年開業を目指していましたが延期に。今後の工事期間は10年間を想定していて、東京ー名古屋間の開業は10年後の2036年以降とみられています。

“失われた9年で”工事費が倍増 経済効果にも懸念が…

“失われた9年”で工事費が倍増

 この“失われた9年”で大きな影響があったのは「工事費」です。

 リニアの工事費は2018年時点では5兆5200億円という試算でしたが、2021年には7兆400億円に。物価高の影響もありますが、2025年10月時点では11兆円と7年で約2倍に膨らんでいます。

 リニアの工事費についてJR東海は、財政投融資を活用して政府から3兆円を借り入れています。

 JR東海は、費用の増加分について「鉄道収入を軸に収益拡大やコスト削減を進め、不足分は社債や借り入れで調達していく」とし、財政投融資の追加はしないということです。

“失われた9年”で経済効果も…

 ばく大な工事費がかかりますが、経済効果はどうでしょうか。

 三菱UFJリサーチ&コンサルティングの2013年の試算によると、東京ー名古屋間が開業した場合の経済効果は50年間で10兆7000億円以上とされています。

 つまり、現状の工事費の試算に基づくと経済効果が工事費の約11兆円を上回るのは、開業してから50年後以降ということになります。

 さらに“失われた9年”で、地方の人口減少が進んでいます。三菱UFJリサーチ&コンサルティングの宮下光宏・上席主任研究員は「開業時期が遅れるほど、中間駅の地域では経済活動の担い手も減る。リニア開業で想定していた経済効果が見込めない恐れもある」と指摘します。

大坂さん
「中間駅の長野や岐阜は経済の担い手が減っていますが、リニアができるとどんどん人が呼び込めますから、10年前以上に今どの県も街づくりに力を入れてます」

リニアの意義 大阪までの開通が前提

リニア開通の意義

 リニア建設の意義は、大きく2つあるとされています。

 1つが「交通大動脈の二重系化」です。

 東海道新幹線が走っている太平洋沿岸沿いのエリアは、南海トラフ巨大地震の想定震度も大きくなっています。

 リニアは東海道新幹線に限られない災害時の抜本的な備えになるほか、通常時でも東海道新幹線の輸送力に余力が生まれるとしています。

 もう1つは「3大都市が1つの巨大都市圏になること」です。首都圏・中京圏・近畿圏の移動時間短縮に伴い、総人口約6600万人の「巨大都市圏」が生まれ、経済の活性化や多様な生活が実現できるとされています。

関西までリニアが延びるのはいつ?

 ただ、これはあくまで関西までの開通が大前提となっています。

 いまは東京ー名古屋間の計画が先行していて、工事に時間がかかるのであれば、関西まで延ばす計画は前提としていないのでしょうか?

 7日には大阪・三重・奈良の3府県の知事がJR東海本社を訪問し、早期の全線開業を求める要望書を出しました。

 大坂さんは、関西まで早期着工しない最大の理由は「工事費」とみています。

「東京ー名古屋の工事費でも約11兆円とされていて、経営体力的にかなり厳しい。関西までの開業は、東京ー名古屋間の開業から早くても10年後の2046年前後になる可能性があります」

(「newsおかえり」2026年7月9日放送分より)

最終更新:07/18 19:00

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